クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

愛情いっぱい『レッド・ワン』

クリスマスはケーキにプレゼント。大晦日は除夜の鐘で、新年は初詣。すべてはイベントで、宗教よりも単なる習慣。だから、クリスマスはただただ嬉しい楽しいもの。

 

トナカイに乗ったサンタさんが、子供たちにプレゼントを配る。アメリカ大衆消費文化の影響を多分に受けて育った。だから、商業的過ぎるクリスマスはちょっと。。と、アメリカよりも古い国から肯定的とはいえない扱いを受けようと、クリスマスにはやっぱりサンタさんがいる方がいい。

 

そのクリスマスの”顔”であるサンタクロースが誘拐された!という事件発生からお話がスタートする映画、『レッド・ワン』を観てきた。

 

サンタクロース救出というミッションのため、本来なら生まれるはずのないバディが誕生し、息が合ってるとはとてもいえない二人、ドウェイン・ジョンソンクリス・エヴァンスという見た目も中身も正反対のバディが活躍する。

 

あるミッションのため、生まれるはずのないバディが誕生して活躍するといえば、『インディジョーンズ』だけでなくアメリカの大衆娯楽映画ではきっと定番でお家芸。魔法あるいは不思議と科学が融合した世界観は日本のライトノベルお家芸で、科学で説明がつきそうなエピソードとつかないエピソードが同居する。

 

そこに疑問さえ抱かないのは、魔法あるいは不思議と科学が融合した世界観に慣れ親しんできたから。

 

二足歩行だけど、人間ではない生き物も多数登場。スターウォーズのチューバッカと違い、人語を解して話す動物も登場し、人間と一緒に活動して活躍するサンタクロースの世界はどう考えてもスターウォーズで、アナと雪の女王のアレンデール王国がテクニカルに進化したようなビジュアル。

 

サンタクロースの世界がスターウォーズなら、人ではない生き物がやっぱり多数登場するちょっとダークな”サンタの弟”の世界は、北欧神話ロードオブザリングか。大型のトナカイが引くソリ(←サンタさんのマイカー)は、バックトゥザフューチャーのデロリアンのよう。

 

スターウォーズにインディジョーンズ、バックトゥザフューチャーにロードオブザリングファイトクラブトイストーリーにアナ雪と、洋画に詳しい人ならもっとたくさん挙げられそうなオマージュを総動員して作り上げた世界は、キラッキラで星が煌めくよう。楽しさにあふれている。

 

大切な誰かや何か。目的のある消費は、本来善なんだ。

 

と、大衆消費文化を全面肯定している。クリスマスシーズンのデパートやショッピングモールは、一年でもっとも華やかなはず。

 

買い物をする場所は、主にインターネット。あるいは、デパートやショッピングモールなど都市中心部の好立地はすでに他国のもっと景気のいい国の資本のもの。という状況だとここで買い物、お金を使っても何だかな。。と複雑な心境になるものだから、映画に描かれたウキウキするようなクリスマスの風景が、今もどれほど残って見られるのかは知らね。

 

日本でいえばお正月、伝統的な迎春準備といったって、ひと昔やふた昔前とは違ってきた。という状況は、国や文化が違っても伝統を持つ国ならきっと変わらない。

 

『レッド・ワン』で描かれるサンタクロースは痩身で、トレーニングも欠かさず鍛えている。そして、サンタクロースを頂点とした彼の世界での最重要人物として尊敬を集め、彼に対する信頼は揺るぎない。その意味では、サンタのおじいさんというより聖ニコラウスのイメージにより近く超人的で、人と人ではないものが同居する世界らしく人知を超える。

 

時に殴り合いがあり、戦いさえあるけれど、リアリティなし。

 

今も苛烈な競争の渦中にいるものにとっては、生々しさやリアリティが評価ポイントで必要かもしれないけれど、すでに競争を終えた、あるいは競争とは距離を置いているものにとって、生々しさやリアリティはマイナスポイント。

 

子供たちの欲しいものも、ひと昔前やふた昔前とはちがってモノよりコト、例えばスポーツや音楽の大規模イベントのチケットや観戦、配信でもいいからとなったとき。サンタさんのお仕事は、環境に作用するという方向に行くのかもしれない。

 

みんなが嬉しい楽しい気分でいる時に、悲しい気持ちでいる子供を増やさない。

 

サンタクロースに対する揺るぎない信頼と尊敬は、どう考えてもその目的からぶれず揺るがず努力を続けているからで、だから彼らの世界も揺るがず今でもキラッキラ。

 

トナカイが引く空飛ぶソリに乗り、ひと晩で世界中の子供たちにプレゼントを配る。そのビジュアルイメージは一見未来とは逆行しているように見える。だけど人海戦術、人力に頼らず一瞬でタスクを達成するようなお仕事は、本来高度な技術が得意とする分野のはず。

 

ソリッドかつ人工的な高層ビルが林立する無機質な未来のビジュアルイメージと違って、不思議と最先端科学が融合したサンタクロースの世界は自然豊かで緑いっぱい。科学が浸透するほどに自然は復活し、緑豊かになるんだと教えてくれるよう。

 

楽しくてキラッキラ。細部までじっくり観察したいから、映画館の大きなスクリーンで見るのもいいけれど、何度も繰り返し動画で見たくなる。

 

帽子に赤と白のサンタコスに騙されるけれど、痩身でひげのおじいさんが帽子をとると、どう見ても亀仙人アメリカ大衆消費文化と日本の大衆消費文化は、ジャングル大帝かライオンキングかで争った昔とちがって、はるかに融合が進んだんだ。とも思った。

 

札幌ではホワイトイルミネーションが始まり(昨日は試験点灯)、クリスマスマーケットも始まった。弘法さんに天神さん。夏祭りや秋祭りに年末年始。折々の行事に合わせ、神社でもお寺でも市(いち)、マーケットが立つ。

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大切な誰かや何か。目的のある消費は善で、折々の行事に合わせて立つ市は、もともとは大事なものを守るためのはず。だから、今も昔も市が立つ。