クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

現代では決して蘇らないもの

騎士も武士も、現代では決して蘇らない階級だから、安心して美化できる。

 
騎士道や武士道を美しく、あるいは心地よく謳い上げて心地よくなれるのも、現代においては完全無欠のフィクションだから。主君や愛を捧げた相手のために殉じる。あるいは騎士道を体現した人物に対し、理想として憧れたあなたにどうして剣を向けることができましょうと、主君の命に背いて剣をおさめる。
 
そんなことは現代ではありえないから、絵に描いた餅として現実以上に美しく描かれる。
 
現代で言えば、例えば警察に医師に弁護士。武力や武力に等しい専門知識を有している彼らは、現代における騎士階級で武士階級にも等しい存在。武力や武力に等しい専門知識プラス、高い倫理性も期待されるから、騎士道や武士道を重ねやすい存在。
 
高い倫理性を期待されるけれど、警察に医師に弁護士を主人公としたドラマやフィクション作品のように、誰もがヒーロー・ヒロインのようであるわけがない。単なる職業なんだから。単なる職業なんだから、ピンキリ。どうしようもない人もいれば、素晴らしい人もいる。
 
警察に医師に弁護士は、現代でも決して誰もがなれる職業ではないけれど、なれる程度に優秀な人が、必ずめざす職業でもなくなっている。
 
武力や武力に等しい専門知識を持ちながら、時には窮屈な高い倫理性を期待されることもなく、それでいて給与水準は見劣りしない他の職業があれば、そっちの方が魅力的に映ることもある。
 
例えば身近な人間が、つねに高い倫理性を求められて窮屈かつ損な役回りを押し付けられる姿を、目の当たりにするばかりだったらそうなってもしょうがない。
 
自分にはできないことを、他人に求めて気持ちよくなる姿は、現代では決して蘇らない騎士道や武士道に酔いしれる姿とよく似てる。現実から目を背けるかのように、ことさら美化されたフィクションに酔いしれる姿とよく似てる。
 
騎士道を体現した人物に対し、理想として憧れたあなたにどうして剣を向けることができましょうと、主君の命に背いて剣をおさめるような人が次々に現われたら組織は崩壊する。
 
これも年金支給までの辛抱さと、騎士道や武士道を捧げようのない、魅力に欠ける主君を戴きながら長い長い道のりを歩いていく人には、騎士道や武士道を体現した理想像なんて毒でしかない。
 
毒でしかないから、理想を体現した人物は徹底的に貶めるのが、騎士道とも武士道とも別の道を行く人の生きる道。
 
求めているのは、騎士道や武士道を捧げるに値する人物だけ。という人たちは、理想あるいは実現したい未来像がより強固で明確で、自分たちの理想に合わなくなれば、主君の首だってすげ替える。
 
理想の主君像が明確で、教師役になれる。この先どうなるか、あるいはどうしたいのかの先の見通しも確固としていて、計画を実行に移す力も影響力も持っている。
 
そんな人たちは、見方を変えれば危険人物で危険な集団で、青年将校による憂国から生まれたクーデターって、だいたいそんなもんよな。ピュアで世間知らずなだけに、憂国という美しいキラーフレーズに弱いんだ。
 
同情するなら金持って来いで、ピュアな気持ちで何かを憂いていたはずが、いつの間にかよくわからない胡散臭い集団の金集めに利用されるととっても現代的で、流行の先端っぽい。特殊詐欺、流行りだもんねー。