電子レンジと電気ケトルがあれば、お湯を注げば食べられる系の食べ物やレンジで温めればすぐ食べられるインスタント食品やチルド食品が食べられる。
(オーブンレンジにしておくと、パンまで焼けた)
炊飯器があればご飯を炊くことができて、”温かい食事”のバリエーションはさらに広がる。
(鍋、フライパンなし。電子レンジと調理用ボウルのみで作った食事)
趣味ではなくコストや栄養面に配慮して自炊を始めようとした時に気になるのは、何をどれくらい揃えればいいのかというところ。
使う調理器具が増えれば洗い物が増える。
趣味なら時間がかかっても気にしないし気にならないけれど、趣味ではなかったら効率を考える。
たくさんある料理本のなかから、趣味に走ったものかそれとも効率を考えたものか。瞬時に見分けられる人はそもそも上級者で、必要に迫られて自炊をすることになった時、ビギナー向けの本を選ぶのは意外と難しい。
コンビニで売ってるようなインスタント食品やチルド食品のことはよく知っているけれど、そもそも調味料や食材についてはよく知らない。みたいな人に、とりあえずここにあるレシピはひと通りできるようになってから著名人のレシピ本を手に取るといいよと思ったのが、はらぺこグリズリーの『世界一美味しい手抜きごはん』。
自分でも作ってみたいと思うレシピもあれば、最低限これくらい作れるようになってくれたらとりあえず安心する。そう思うレシピ豊富。
買った時のコピーはたしか、日本でいちばん売れているレシピ本というものだった。
積極的に自炊する気がない人向けのレシピ本というものは今までもこれからも多分あんまりない。だから、積極的に料理する気がない人にとって自炊(=料理)のハードルが下がるという手つかずのジャンルを開拓したからよく売れたんだろう。
料理、それも手の込んだお菓子やご馳走に専念できるのはツールも揃っていれば揃った(揃えた)ツールをしまっておく場所や並べるだけのスペースがあるということ。だから著名人のレシピ本は大体ステキライフスタイルとセットになっていく。
(ツールがまったく揃ってなかったら、食べられるものはこんなもの)
食器がステキならツールもステキ。調味料もありきたりではなく手作りになって趣味へと昇華してゆき実用と離れがち。
実用に徹すると調味料はナショナルブランドで、ナショナルブランドからはフレッシュな生鮮品ではなく色々なものが手軽に使えるように製品化されていることもよくわかる。つまり一種のカタログ。
毎日のように料理するなら生鮮品で構わないけど、週末や時々にしか料理しなかったら生鮮品は持て余す。
調理ツールも例えばフードプロセッサーや電気圧力鍋のように便利なものがなくてもそれなりのものが出来上がる。まずはそれなりのものが作れるようになってから、段階を踏んで上級者向けのツールを揃えていけばよく、いちばん最初に一年後は使うかどうかわからないものから買い揃えなくてもいい。
その種の今さら言わなくてもいいすごーく当たり前のことを大きな声で発信すると、教科書的に広く流布するんだと思った。
しょうゆのトップメーカーやマヨネーズのトップメーカー、あるいはケチャップの日本におけるトップメーカーなんて知らない人が、必要に迫られて自炊を始める。そういう世界との接点がないと、超ビギナー向けの指南書なんて生まれてこない。
ツールにスペース。料理上手は結局のところ環境由来で生まれてくるもの。だから、地産地消でローカルベースの生鮮品の消費を増やしたかったら最終的にはスペースの拡張へと向かい、”住まい”の改善に向かうんだと考えた時。ビギナーに親切にすることなんて何でもないんだろう。
そのままでは売れないし売りにくい。その種のものを売りやすくするための環境を整える一環だと思えば初心者には優しくなって、脱初心者には優しくなくなっていくのはごく自然で当たり前。