クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

『アメリカンドリーマー 理想の代償』見てきた

見終わった後のキ・モ・チ。

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高潔であることを自らに課した主人公が、理想の代償に支払ったものは何だったのか。そこにフォーカスしながら『アメリカンドリーマー 理想の代償』を鑑賞した。

「正しい道を行くこと」が信条の男に迫られる苦渋の選択。成功か破滅か、白か黒か、緊迫の駆け引きとリアルな葛藤が、観る者に「本当の成功とは何か?」を突きつける社会派ヒューマンドラマの傑作が生まれた。(公式サイトより引用)

上映時間125分と2時間を超す大作ながら、時間の長さを感じさせない映画だった。地下鉄は落書きだらけで、もっとも危険だと言われた1980年代のNYを舞台にした映画。

 

主人公アベルは移民からのしあがり、大いなる成功を目前にしている。ビジネスチャンスが一気に広がり、商売を大きく飛躍させるチャンスをつかんだアベル。新興企業が、上場ゴールを目前にしているような状況と考えればわかりやすい。

 

ギャングの娘を妻にしながらも、アベルがめざしたのはクリーンなやり方で成功すること。従業員にもクリーンであることを求めてる。恐らくは敏腕で有能で、商売仇や各方面からも一目置かれてるアベル、大成功を目前にした途端、ビジネスに邪魔が入りまくる。

 

多分今も昔も国が違っても状況はいっしょで、大成功しそうな人がいれば、次から次へと足を引っ張る人が現れる。アベル、ピーンチ。

 

そのへんもあらかじめ見越してか、クリーンなビジネスを貫いてきたアベルは、少々の邪魔くらいではへこたれない。そうなると見えない敵もますます妨害行為をエスカレートさせ、身辺にも危険が迫り、ビジネス的にも大ピンチに陥ってしまう。起業家あるある、ビジネスやってる人ならあるあるじゃないかな、このへんは。

 

危機が迫るのは従業員もいっしょで、直接的暴力に晒されるのはむしろ彼らの方。クリーンを信条にするだけあって、アベル、決してイヤな奴じゃない。むしろ経営者としては良心的ともいえる。厳しいけど。自分と同じ移民を雇用し、英語で話すよう教育し、彼らにも成功の果実を分け与えようとし、従業員の良き庇護者であろうともする。厳しいけど。

 

なぜアベルの成功が阻まれるかというと、アベルがクリーンだから。アベルが扱っているのは石油。黒いダイヤだけあって、ビジネス慣習には非合理なものも含み、新参者には冷たい業界。ねんごろになろうとしないアベルはきっと扱いにくい人で、度し難いけど有能だから、相応の敬意は払われている。

 

どう考えても、業界の重鎮よりアベルの方がいい奴。アベルの成功は業界の健全化や民主化にもつながるから、長期的視点に立てばアベルが成功した方が、社会への恩恵も大きい。

 

なのにすんなり成功させてもらえないんだな、これが。THE理不尽。

 

理不尽な状況から、いかにしてアベルが抜け出すのかが見どころ。クリーンな成功者が増えて欲しいと思う人には心地よく、そうでない人には面白くない可能性も大。

 

クリーンを貫こうとしたアベルが、理想の代償として支払ったもの。それは、成功による恩恵を受け取るはずだった、受け取って欲しかったに違いない存在そのもの。

 

クリーンを掲げてビジネスを引っ張ってきたのは、クリーンなビジネスなら、家族や家族にも等しい少数の従業員以外の、その他大勢も救えるから。なのに、理想を手に入れる過程で、理想を支えてきた根っこの部分をひとつ失ってしまう。

 

望んだわけではないけれど、理想を叶えるために、理想に反することも享受しなければならなかったアベル。やり方を変えていれば、スローダウンしていれば、あるいは違う結末があったかもしれない。

 

とにかくアベルの人生は、次のステージへと進む。アベルの理想を叶えるために消えていった、あるいは汚れ役を引き受けた人の存在を意識するのかしないのか。アベルに用意されたその後の人生が、とっても気になるので続編が見たくなる。そんな映画だった。

 

今年見た24本目の映画。1ヶ月に2本以上、年間24本映画館で自腹で見ることを目標に掲げてたけど、無事達成。あとは、そこにどれだけ上乗せできるか。年末になるにつれて、公開される映画の本数がドカッと増えてるような気がするのは、気のせいか。予算消化工事みたい。

 お休みなさーい。