北海道の北の出っ張り、日本最北端でもある宗谷岬にはもう行ってきたので、次は太平洋側の出っ張り、襟裳岬に行ってみたくなった。なので、行って来た。
宗谷岬にいたる道のりは、北海道の僻地あるいは自然豊かな場所ってこんなもんだよねという貧困な発想通りの景色で、イメージ通りだったから大変満足だった。そんな景色を期待して襟裳岬まで、太平洋側の道を車で走ってみたけど、予想とは違ってた。。
襟裳岬にはカモメがいたけど、道中では野生動物らしい野生動物にはまったく出会わなかった。走ったのは、メジャーな国道ばかりだったせいもきっとある。でもそれ以上に、北に至る日本海側よりも、資本主義あるいは商業主義の香りがしっかり漂っていたせいもあるに違いない。
襟裳岬なんて知名度だけは抜群にあるせいか、襟裳岬を擁するえりも町は、想像以上にちゃんとした町だった。札幌からは、道央自動車道と日高自動車道を経由して海沿いを走った。海沿いだからフォトジェニックな景色を期待したけれど、荒天のせいもあって写真が撮りたくなるような景色にはあんまり出会えず。
海沿いの際っ際を走る鉄道の車窓からだと、素晴らしい景色が望めたような気もするけれど、そもそもその鉄道もいつかの台風のせいで寸断し、一部区間はバスに代替されている。自然の恩恵が豊かな間はいいけれど、牙をむかれると高くつく。今では海岸からちょっと引っ込んで、高台からどこまでも続く太平洋の雄大な景色を堪能するように、ステキ観光地が整備されていってるような気がした。
北の宗谷岬へと至る道のりではしょっちゅう目にした道の駅も、襟裳岬やその先の黄金鉄道やもっとその先の海沿いでは滅多に見掛けず、早くから鉄道が発達していたことが知れる。道の駅は、四輪車や二輪車といった車のものだから。
台風には弱かったけど太平洋側は積雪量が少ないから、日本海側ほど冬季に脅えることも備えることもなく済んできたのかも。
気候が変わって台風や温帯低気圧の襲来が頻繁になると、長所が短所に変わりそうな気がして、鉄道の今後も含めて以前と同じままどうかは未知数かも。一年のうち、1/3は濃い霧にも覆われるんだとか。幻想的と無邪気に濃霧を喜ぶのは観光客で、土地に根付いて生活している人目線だと、きっとまた別の意見がある。濃霧が頻繁だったら、危ないじゃん。それはともかく。
早くから鉄道が通っていて、理論的には大量輸送が可能だったから、資本主義や商業主義の香りもしっかり漂ってるわけだな。
日高地方は競走馬の産地としても有名だから、そもそも競わせることに前のめり。と、勝手に解釈するのも旅の楽しみのひとつ。
襟裳岬は、風が強くて肌寒かった。真夏でも半袖だと寒すぎる。
丈夫そうな岩盤に穴掘って建てた、お金かかってそうな観光施設。気候風土の厳しい土地で、道路を筆頭に社会インフラが整っていると、はるばる果てにやって来たという気はあんまりしない。
こんな果てまで道路が整備され、現在も特に問題なく使えていると、地理的には果てであっても最初期に中央に征服された土地という気さえしてくる。
征服されざる地が、ほんとの果て。
人間に例えれば頑固頭や石頭で、頑固だから変えてはいけないものを託すのにも隠すのにも都合がいい。柳に風で流されるソフトな頭みたいにすでに征服された地は、コロコロと転変するものを託すのにちょうどいいのかも。
襟裳岬の次は、大枚はたいて作ったという黄金道路を通り、海沿いの国道をひたすら走って池田町にあるワイン場にちょっとだけ寄り道し、帯広に入る。古代の竪穴住居跡地もあるという、大樹町や中札内を経由して帯広に入るルートもあるけれど、今回はとにかく海沿いを走破したかった。
海沿いといっても内陸に寄った道路だから、特にめぼしいものがあったわけでもないんだけど。観光地になれるほど際立った、大自然からの贈り物が三つも四つも早々転がってるわけなんかないやね。
ナショナルトラストのように、広域が何かの保護下にある自然だったら、東京その他の大都市との価格差を生かしたゴージャス施設も抵抗なく利用できる。でも、そこかしこに生活の匂いが濃厚だとナショナルトラストの出番もなく、ゴージャス施設も心理的に利用しにくくなる。
通年を通じての観光にはあんまり期待できない土地では、オートキャンプ場を整備して、豪華なものも快適なものも何でも自前で持ってきてもらうというスタイルが、実はいっちゃん贅沢なのかも。
昔の王侯貴顕の旅スタイルと、ほとんど一緒。
短角牛でも海産物でも。豪華な食材は現地調達し、遊びつくしたら荷物まとめて撤収というスタイルなら、土地の人の生活ともバッティングしない。季節労働者の流入を過度に警戒する必要もないから、観光公害と呼ばれて観光客ひとまとめに警戒されることもなく、平和かも。かもかも。
リラックスするために訪れる地で、修行みたいに色んなことを我慢させられるなら、何のために旅に出るのかわかりゃしない。
太平洋に突き出した出っ張り以外にも行って来たけど、それはまた今度。