カッテージチーズ(裏ごしタイプ)に砂糖を混ぜて牛乳を混ぜて。溶き卵にサラダ油(溶かしバターだとなおよし)と香りづけにバニラエッセンスを加え、これで本当にケーキができるの?と思うようなシャバシャバと水っぽい生地も、小麦粉を加えるとしっかりした生地ができあがる。
できるだけ長方形めざして生地をのばし、のばした生地にフィリング、りんごの甘煮にクルミにシナモンと、カステラを作る時くらいしか活躍しないザラメ糖にカットバターをトッピングして太巻きのようにクルクル巻く。
巻いたロール生地を等分にカットして、ケーキ型の中で固めて焼けばできあがり。焼き上がったケーキにグラサージュめざして砂糖のシロップを塗れば、完成。
生地にもフィリングにもシロップにも、砂糖を使っているからとにかく甘い。食べる時にはシロップで手がベタベタする。
こういうお菓子のようなパンが、昔売られていたなぁと思い出しながら、思い浮かべたのは異国のお菓子。ケーキ生地ではなくもっとサクサクとしたパイ生地だったけど、バクラヴァというお菓子も確かこんな風だった。
バクラヴァなんてきっと、見たことも聞いたこともない人がほとんどだった昔々に、歴史あるお菓子にヒントを得てお菓子のようなパンが生まれたのかもと思うとちょっと楽しい。
カッテージチーズをフェタというチーズに変えてもできそうで、フィリングのトッピングに使うカットバターもチーズに変えればますます異国生まれのお菓子っぽい。
お菓子を作りたかったからフィリングは甘くした。フィリングを甘くないものに変えればケークサレのようなスナックケーキにもなりそうで、とはいえ残ったカッテージチーズを使い切る際には冷蔵庫やその他のストックと相談で、ナッツ入りはちみつにさつまいもで作ってもいいかも。
そもそものレシピではフィリングはアーモンドにレーズンで、ナッツ類にレーズンそれにカッテージチーズも常備している家庭なら、思い立つだけですぐにできそうだった。
思い立ったらすぐにできるものだから、きっとフィリングはなんでもいい。
ふつうの人。たまにしか出現しないような人ではなくいつでもその辺で見つかるふつうの人が、たまにではなくしょっちゅう食べているものが一番美味しい。
というのが持論で、どこかの国のどこかの家庭でしょっちゅう作られているものは、別の国の別の家庭でも作りやすい、あるいは口にしやすいよう形を変えれば美味しいと喜んでもらえるはず。
クルクルと巻いて作るケーキを作りながら、思い出したのは昔よく見かけて食べた、甘くて美味しいケーキのような菓子パン。ケーキ屋さんのケーキがリッチになって洗練されていくとともに、パン屋さんが作るケーキのような甘い菓子パンは、ひとつまたひとつと消えていったのはきっと気のせいじゃない。
甘いお菓子をしょっちゅう食べても無問題なのは、朝から晩まで走り回る運動量の多いライフスタイルだからで、ひとところに留まる時間が増えて運動量が落ちると、欲しいものも変わっていく。
バタークリームで作った花飾りに、粒々とした銀色のアラザンに着色したドレンチェリー。ひと切れ食べ終える頃には甘さで目がチカチカ、頭がクラクラする。
欲しいもの、あるいは必要なものにぴったりフィットしてるとはとても言えないこのバターケーキも、つい買ってしまうし食べてしまうのは買っているのも食べているのも食べ物じゃないから。
ケーキは別腹で、お腹いっぱいでも入ることはあるけれど。
そもそも買っているのも食べているのも食べ物ではなく思い出とか懐かしさとかそういうものだったら、受け入れられる量には限りがある。