クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

『「メジャー」を生み出す』読んだ

『「メジャー」を生み出す マーケティングを超えるクリエイターたち』 読んだ。

 

 バンド、コミック、アニメ、ライトノベル各界で、モノが売れないと言われる時代にモノを作ってるだけでなく、実際に売ってる(売れてる)クリエイターたちの声を集めた本。

 
 
音楽方面には明るくないので、ここで取り上げられていたミュージシャンはみな初めて見る名前ばかりだった。
 
 
コミック、アニメ、ライトノベル分野からは、浅野いにお宮城理子咲坂伊緒支倉凍砂谷口悟朗が登場。こちらは大体わかる。
 
 
モノが売れない時代に、何を考えて彼らがモノを作っているのか。売れている彼らから見て、どういうモノが求められているのかを、市場環境の変化とともに分析している。
 
 
キーワードは「メジャーを作る」。
 
 
これを読むと、今という時代がまったくもって創造、何かを創ることには向いてない時代だということが見えてくる。商業ベースにのせることが困難となっているだけでなく、SNSのノイズによっても創造意欲は削られるから。
 
 
創って欲しくない人の創造意欲は徹底して削ぎに行く。そうなった時のノイズのうねりはとても恐ろしい。多くの批判の目にさらされる人の消耗度は、きっと相当なものに違いない。
 
 
登場するクリエイターは総じて若い。アラフォーが一番年寄りなくらい。環境の変化に最もついていってないのは、業界の常識にとらわれた、古くからの人ではなかろうか。
 
 
環境の変化に適応した若きクリエイターたちは、従来のクリエイター像を塗り替えるようで、いい意味でとても品行方正だった。
 
 
表紙に、”オタク市場は終わった。「普通の人」に本気で売ろう!”という挑戦的なコピーつき。これ、非オタク(語弊があるけどあえて使用)な人が言ってたら炎上しそうだけど、言ってる人達がみなオタクサイドにいるところが肝心。
 
 
好きが高じてついには作り手にまわった。そんな人達が、若くてふつうの人達に届くことを願ってモノを作っている。
 
 
若くもなく、ふつうでもない。趣味嗜好や生活が極端な人にだけ支持されても、市場のパイは拡がらないから。趣味嗜好や生活が極端な人が支持するものが社会の本流となった時、「自分の頭で考える」訓練を積んでこなかった人は、損するばっかりだから。
 
 
恵まれてるとはいえない環境の中で、それでもユーザー目線で真摯にモノを作るのはなぜなのか。その答えは、ラストに置かれた秀吉の歌、『うたうことにしました』に見つけられる。
 
 
若くてふつうの人に届くよう、モノを作っている彼らの周りには、笑顔も見せずに泣いている。そんな人がたくさんいるからじゃないだろうか。
 
 
見たいものしか見ない人の世界には存在しないものが、彼らには見えている。笑顔も見せずに泣いている人を笑顔にさせる。社会の本流、メジャーにあるものや居る人には、そんな資質こそがきっと欠かせない。