今週のお題特別編「素敵な絵本」
懐かしい絵本がたくさん紹介されているので、つい見入ってしまう。
『ぐりとぐら』のカステラ、『ちびくろサンボ』のホットケーキ、『クマのプーさん』のはちみつ。出てくるお菓子が美味しそうだったものだけでなく、『おおきなかぶ』のかぶとか、おまけに『ピーターラビット』のにんじんまで美味しそうに見えた。
お菓子好きだけじゃなく、野菜好きのルーツはそこにあるのかもしれない。
卵から孵ったヒナが、最初に目にしたものの後ろをピョコピョコついてくみたいに、はじめましての印象が大変好ましいものだったから、今も変わらずに懐かしー、かわいいーと見入ってる。
童心に還れるんだよね。そういう楽しい、かわいいがいっぱい詰まってるものは。
それとは逆に、決して童心には還れない、それでも忘れ難い絵本もあって、それが『アンジュール‐ある犬の物語』。
ひと言の説明もない、まさに「絵」だけで語る絵本だった。しかもカラーじゃなくてモノトーン、黒いデッサン風の大人っぽい絵だけ。
当時の子ども部屋の、ひと塊になった絵本の中でも異彩を放ってた。お話しも異色だったし。飼い主に捨てられた犬の話しなのよね、これ。走る車の窓から犬が捨てられる。そこからお話し始まるんだから、子ども心にもうびっくりだった。
台 詞(そもそも犬だから話せないんだけど)一切無いんだけど、犬の表情から、「哀しい」「寂しい」そんな気持ちがあふれ出してた。小学校入学前の幼児に、 「孤独」とか「哀惜」なんて語彙は存在しないんだけど、絵を見ながら、「二度と会えなくて淋しい」ってこういうことなんだ。そんな気持ちを一緒になって感 じてた。
例えていうなら短調、全編マイナーコードで進行してるようなお話しだったんだけど、最後に転調するから救われる。
いつまでもみんな一緒にうれしい楽しいが続く。お子様の世界は基本そんな楽しさにあふれてるんだよね。最後に食べようと思って取っておいたショートケーキのいちご、それを誰かに取られただけでギャン泣きできる、そんな世界。
それが当たり前だと思ってたから、いつまでも一緒にいられない。別れたくなくても別れは来る、別々の道を歩かされる。そういう世界をお子様向けに描いたこの絵本のことが、強く印象に残ってる。
「いつかは別れがくる」、「別れの季節」。春先はそんな言葉があふれていて、そうね、そんな言葉があるよねと頭で理解する前に、「別れ」につきものの感情がどんなものなのかわかってた。すでに体感してた。
理屈抜きにまずは感情で覚えたから、いざそういう場面に遭遇した時も、あぁこれがそうなのねと、うろたえずに済んでいる。お子様だった頃に出逢えて良かった、洗礼浴びといたから、大人になっても助かった、そんな絵本で忘れがたい。今見たらDVDも出てるみたいで、今は音楽付きで楽しめるのかも。どんな音楽なのか、ちょっと気になる。
お休みなさーい。