クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

ふざけんなクソジジイにクソババァ!!!と感じる人間性

図書館になら置いてあるような、見るからに大きくて分厚い大型本は、知識や知見をより多く伝えようとしたからあのサイズであの容れ物になっている。

 

視覚に訴えるよう中身には図表~ビジュアル資料~も含まれていて、頁数たっぷりだから何しろ重い。重くて嵩張るのは、知識や知見を深めるためだから。

 

知識や知見を深めるために重くて嵩張るものでも、誰かをぶっ叩けばケガをする。そして、知識や知見を深めるために大型化したものでわざわざ誰かを傷つける。傷つけるためだったら容れ物だけが必要で、中身は不必要だからと知識や知見を詰めるための容れ物にガラクタを詰めるようになったら、そいつは変だ。

 

『ツール・アンド・ウェポン』というタイトルを見た時に、まず思い浮かべたのはそんなこと。本書の中では“箒(ほうき)”に例えられていたけれど、ほうきは掃除するためのツールであっても、人を殴れば凶器にもなる。

 

だけど、お掃除するためのツールで人を殴ってばかりなのは使い方がおかしい。

 

新しい何か、使い方しだいでは凶器にもなる特にテクノロジーを使いこなすに際しては、そう感じる感受性の持ち合わせがないとよい使い手にはなれないんだろう。

 

新しいテクノロジーの使い手になるための、技術的な面ではなく心得や心構えにも踏み込んだ、いってみれば教典のような本だったのが『ツール・アンド・ウェポン』。

 

全16章で、プライバシーやセキュリティあるいはAIについて章が割かれているけれど、章を追っていけば統一した見解にたどり着けるものでもない。前章では肯定されていた事柄も次章では否定され、あるいはどう扱うのかという立場表明にも時には一貫性がない。

 

考えてみれば巨大組織のことだもの。部署が違えば解が、あるいは解釈が異なるのは当たり前で、新しい分野における現時点での当部署での解釈はこうですよと開陳しているようでもあった。

 

ちなみに本が届くまで、ビル・ゲイツが序文を寄せマイクロソフトのプレジデントとシニアディレクターが書いた本だとまったく知らなかった。

 

テクノロジーの暴走を止めるのは誰か?という副題にもある通り、同じ社内でも統一された見解があるわけではない、新しい技術の暴走に対してストッパーとなるのは、百家争鳴。いいねで前のめりもあれば、よくないよで後ろ向きもある。呉越同舟でポジとネガの双方向からの働きかけがあれば、とりあえず暴走は免れる。

 

新技術の暴走を激化させるのは、ストッパーが外れたとき。

 

新技術の暴走による副産物として生まれたネガティブな負の遺産について、何らかの補償が自動付帯するようになるとポジティブに新技術を追求することにためらいがなくなる。

 

プラスとマイナスの相殺という単純な構図は、単純だから万人に分かりやすくて、分かりやすいとポジでもネガでもあっという間にヒートアップしていく。

 

プライバシーにセキュリティ。センシティブな問題に、ヒートアップは似合わない。あるいは、ヒートアップしたプライバシーもセキュリティもより取り扱いが難しくなるだけ。

 

プライバシーやセキュリティに限らず取り扱いが難しくなった案件について。細かなルールに基づいて判断を積み重ねていけるのならより高度知的職業人っぽくて、新技術を取り扱っていても安心感がある。

 

教典あるいは聖書やコーランのように、ホニャララ伝によればうんたらかんたらみたいな読み方ができるから、必要に迫られないと思い出せないし思い出せないようになっているなかで、心に残る章もある。

 

聖人でもなければ偉人でもない。人だから、人間らしさがにじみ出ている。そういう人間性が感じられる章は心に残りやすい。

 

ならず者だった。

 

真・善・美では食っていけないならず者が、新しい技術を想定外の方法で悪用して荒稼ぎした。新技術でのし上がった。その後に、政府高官や聖権力あるいは芸術方面に接近し、権威になった。

 

ならず者が新しい技術を想定外に悪用しながら、どのように荒稼ぎするのか熟知しているから“新たなならず者の誕生”を阻むように倫理面のハードルは高くなり、荒稼ぎできないよう時には元ならず者から規制というカードをちらつかせられながら、正しいことしかできないから薄謝や薄給でがんばるしかない。

 

という状態に置かれたとき、“ふざけんなクソジジイにクソババァ!!!”と感じるのが人間性で、人が使うものから人間性は奪えず、機械が使うなら人間性はいらない。

 

時には立ち止まって考えるための教典を必要としなくなるのは、マニュアルが出来上がったとき。つまり、完全な制御が可能になったときってことなんだろう。