クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

『カフェと日本人』読んだ。

「もう一度、訪れてみたいカフェは、どこの何という店ですか?」

そう聞かれたら、
イノダコーヒー札幌紀伊國屋支店
タナカコーヒー先斗町店
珈琲店 北地蔵
 
 
3つのお店が浮かんだけど、残念ながらどのお店も今はもうない。
もう一度訪れてみたい、特別な場所が今も健在なのは、とってもラッキー。
 

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『カフェと日本人』読んだ。
日本初の喫茶店から、欲望に応えてきた特殊喫茶、スタバ、いま話題の「サードウェーブ」までの変遷をたどった、日本のカフェ文化論
日本人にとってカフェ(喫茶店)とはどんな存在なのかを追った本。歴史や薀蓄も楽しいけど、なぜ名古屋人は喫茶店好きなのか、にも章を割いているところが面白い。カフェや喫茶店好きなら、自分とカフェとの思い出を、思わずたぐりよせたくなる。そんな本だった。
 
 
スタバの登場は、日本のカフェシーンを大きく変えたけど、最近話題のサードウェーブ・ブルーボトルコーヒーは、日本の喫茶店の影響を強く受けている。
 
 
ブルーボトルコーヒーの創業者は、銀座のカフェ・ド・ランブル、渋谷の茶亭羽當、表参道の大坊珈琲店といった名店がお気に入り。昭和の喫茶店好き、あるいはコーヒー好きな人なら誰でもあげそうなお店が並んでいて、そこに国境や国籍の違いは感じない。
 
 
今住んでる札幌は、個人喫茶の生き残り率がそれなりに高い。それなりに高いけど、きっと今のオーナー一代限りなんだろうと思わせる店も多い。なので、ブルーボトルコーヒーによって日本の個人喫茶店文化が継承されるかと期待してる。
 
 

日本国内にあるカフェの店舗数は、減り続けているとはいえ、コンビニの1.4倍はあるらしい。

 
売上高は、1位スタバ、2位ドトール、3位にベックスコーヒーショップを営むJR東日本フードサービス、4位にタリーズ。以下サンマルクカフェや上島珈琲店、アフタヌーンティーなどが続く。
 
 
現在の日本のカフェ文化を支えているのは巨大チェーンには間違いない。かつて「街の喫茶店」を駆逐することで成長してきた巨大チェーンが、今度はコメダ珈琲のように、「街の喫茶店」路線で成長してるところが、この業界の面白いところ。
 
 
金額的な面で巨大チェーン店は大きな存在だけど、果たして文化的貢献度はどうだったのか。コーヒーを飲む、あるいはひと休みする習慣を提供してきたことも、もちろん文化的貢献なんだけど。
 
 
巨大チェーンの大きな傘の下で、居心地を追求したり、美味しさを追求したりする個性的な個人店、あるいは地方店が生き残っている。
 

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第4章では、カフェ好きが集まる各地の聖地として、著者よりすぐりのお店がピックアップされている。

個人的には『サザコーヒー』が取り上げられていて嬉しかった。豆は通販でも買えるけど、お店で飲んだ時の鮮烈な味わいは再現できなかった。素材も大事だけど、淹れる人の技術にも相当左右されることを実感したお店。
 
 
『サザコーヒー』もそうだけど、ファミリービジネスとして喫茶店を生業とされてきたお店が、いくつか紹介されていた。今後はこうした地域に根付いて”ホーム”に支えらえたお店に、地域外から観光客がやってくる。地域、ローカルから全国的な知名度を獲得したお店が、巨大チェーンに負けない存在感を示すようになるんだろうと思ってる。
 
 
金額的には大きな市場にならなくても、文化、誰かの記憶に残るような、居心地の良さを提供することで。
 

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カフェや喫茶店の使い方は、人によってかなり違うし、出せるお金も違う。
 
 
コンビニコーヒーや、あるいはウチカフェ向きのチルドコーヒー商品まで、コーヒーをめぐる市場はなんともたくさんあって、使われ方の違いを示している。
 
 
先日旅行した浅草では、モーニングを食べに純喫茶に行ってきた。そこでは、コーヒーを飲んでから出勤するのが習慣となってそうな紳士から、一人あるいは夫婦で朝食を取りにきた年配の人などで、開店と同時にほぼ満席となっていた。
 
 
子どもを育てながらの共働きが主流になれば、休日に家族そろってゆっくり朝食を取る、そんな家庭も増えそう。
 
 
自分にとっての「もう一度訪れたいお店」は、一人で本を読むためだったり、友人とおしゃべりするための場所だった。
 
 
カフェや喫茶店に、家族と過ごした時間を思い出にもてるのもステキ。
カフェと日本人 (講談社現代新書)

カフェと日本人 (講談社現代新書)