スカーレット・ヨハンソン演じる少佐、意外と違和感なし。アニメそのままというには、グラママス過ぎるところが玉に瑕?でもいいの、美しいから。
見てきたのは、2D吹替版。
スカーレット・ヨハンソンの義体に接続された、少佐こと田中敦子の声と思えば、楽しさもいや増す。ビートたけし演じる荒巻は、英語の台詞を話すのかと思ったら日本語のまま。なぜか英語の字幕付きで、視覚的効果にもなっていた。
・スカーレット・ヨハンソン、なんて凛々しくて美しいんでしょう💕
・義眼を装着する前のバトー、かっこいい!!!
・エレクトリカルかつアジアの混沌がミックスされた、街の景色ステキ―💕
・随所に原作となる『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』へのリスペクトあり
・とはいえ誰やねん、こいつ???と思うキャラも登場
企業のネットが星を被い 電子や光が駆け巡っても 国家や民族が消えてなくなるほど情報化されていない近未来―
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』より引用
そのままの街の景色がまずかっこよくて、さすがハリウッドのテクノロジーは素晴らしい!!!と感心した。街の景色に関しては、二次元より三次元の方が断然魅力的。
エレクトリカルな高層ビル群が立ち並び、巨大化したキャラクターのホログラムがたゆたゆーんと浮かび上がる景色は、アジアンな近未来都市のステレオタイプそのまま。上を見ればキラキラ、足元はゴミゴミで、ドブネズミが走り回ってそうで緑少なし。
ビルの緑地化、あるいは高層木造建築など、緑と一体化した都市計画を志向する、欧米の未来都市とは大いに違うんだな、これが。
スカーレット・ヨハンソン演じる少佐を筆頭に、原作の雰囲気や世界観がしっかり踏襲されていて、原作ファンへの配慮も大いに感じられる。
とはいうものの。
ストーリーはハリウッドオリジナルバージョンで、そこはちょっとガッカリ。
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』をベースに、人形使いが少佐や9課を翻弄するストーリ―になるのかと予想してたら、「あんた誰やねん?」というキャラが登場して混乱した。原作も映画しか見てないので、原作映画に登場しないキャラは知らないのよ。。
初見の人でも楽しめるよう、わかりやすさに舵を切らないといけないのはわかるんだけど、それでもチープなお話にするのやめてーという気持ちが抑えられない。わかりやすくないところが、原作の魅力だったから。
少佐を演じたスカーレット・ヨハンソンも、原作を見ても何が何だかわからなかったと、インタビューで答えてたくらいだからな。わからないものを演じることになった、女優さんも大変。だから、わかりやすいストーリーになったのもしょうがない。
しょうがないんだけどさ、もったいない。
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』は、あらゆるネットワークに繋がった電脳を持つ、サイボーグ化されたそれ自体が兵器ともなる強力な義体というボディを得た、「人類とは別種の知性体」が主人公のお話。
人類とは別種の知性体となったモノが、人間らしく振る舞いながら、時には「人間とは何か」、「人を人たらしめているものは何か」という深遠なテーマを考える。電脳に支配されるモノそのものが、どのような価値判断や価値基準を搭載すべきかと考えている。自己流で解釈すれば、そんな感じ。
IoT、Internet of Thingsで、グーグル製の人工知能とか、IBM Watsonとか、AmazonのAlexaが搭載された、自動運転車やガジェットやホームセキュリティその他サービスが、かつてないほど身近に想像可能な今。
「人工知能はどうあるべきか」と、AIに搭載される価値判断を問うのに絶好の機会なのにさ。しかもハリウッドによる問題提起だったら、世間に対するインパクトも抜群なのに、なのに、なんでチープなテーマになっちゃうんだか。もったいなくてしょうがない。
ハリウッドバージョンも、ストーリ-そのものはミステリアスに進行する。
謎解きの趣向は味わえるけど、スカーレット・ヨハンソンが解こうとするのは、「人間とは何か」、「人を人たらしめているものは何か」という深遠なテーマじゃないんだな。もっとちっさい謎。
スカーレット・ヨハンソンに、ビートたけしに桃井かおりにジュリエット・ビノシュと、世界的なスターが勢ぞろいして、ちっちぇテーマを追うなんて、もったいない。
ハリウッドバージョンから受け取るメッセージが、「悪い子は、無理やり義体に繋がれて、一生電脳の奴隷にされちゃうよ★(※これは勝手な自己解釈です)」とか、手垢つき過ぎ。
しかも心が強すぎるものは、義体との接続には向かないんだってさ。
心が強すぎる=自我が強すぎるものは、そもそも反逆精神やファイティングスピリットも旺盛で、実験体にはもってこいだからな。
君が今の君自身であろうとする執着は、君を制約し続ける
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』より引用
ハリウッドバージョンでは物足りないから、つい原作を見直してしまう副作用つき。
スカーレット・ヨハンソンに、ビートたけしに桃井かおりにジュリエット・ビノシュと、世界的なスターは、電脳に頼らずとも人的リソースを通じて、世界のあらゆるネットワークへの接続をすでに手に入れている。
あらゆるネットワークに繋がった頭脳を電脳に移転した時、入れ物となる義体、あるいはボディで車体は、どれがいいんですかね。
何を演じてもたけしにしかならないたけしは、自我が強すぎるから、やっぱり義体との接続は無理そうとか、勝手に考えて遊んでおりました。
少佐の硬派なイメージを演じ切ったスカーレット・ヨハンソンもいいけれど、少佐の義体をメンテナンスする技術者役のジュリエット・ビノシュが見せた、母性にも通じる深い愛情もよかった。
人類とは違う別種のモノに対し、最も深い愛情を見せたのはメンテナンスする人だった。というエピソードは、人とモノとの関係を考える時にも、ヒントになりそう。
童の時は 語ることも童のごとく 思うことも童のごとく 論ずることも童のごとくなりしが、人となりては童のごとく捨てたり
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』より引用
こういう意味深な台詞が、随所に散りばめられているところが原作の魅力。
原作の続編となる『イノセンス』では、意味深な台詞もさらにパワーアップで、原典を突きとめようとした人がたくさん出てきましたねぇ、と昔を思い出したさ。
原作を知らない人に対する、心理的障壁や忌避感を取っ払うには、じゅうぶんいい仕事してたんじゃないでしょうか、ハリウッドバージョン。わりと好き。
お休みなさーい。