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クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

異人種間結婚をコメディーにした『最高の花婿』見てきた

映画 レビュー

異人種間結婚が20%にもおよぶフランスが舞台。人種も宗教も異なる、「期待はずれの婿」を迎える羽目になったファミリーを描いた映画『最高の花婿』見てきた。上映時間97分のうち、8割くらい笑いっぱなし(*^-^*)で超絶楽しかった。

 

難しいことばで言えば、多文化共生がテーマ。ひらたく言えば、人種も宗教も異なる人と同じテーブルに着いた時、どうすれば気まずくならずに居心地の良さをキープできるかを追求してた。居心地をよくするためには笑いが不可欠だから、全編笑いっぱなしでユーモアたっぷり。とってもチャーミングだった。

 フランスのロワール地方に暮らすヴェルヌイユ夫妻には、他人には相談できない悩みがあった。3人の娘たちが次々とアラブ人、ユダヤ人、中国人と結婚、様々な宗教儀式から食事のルールまで、異文化への驚きと気遣いに疲れ果てていた。そんな時、最後の希望だった末娘が、カトリック教徒の男性と婚約!しかし、大喜びの夫妻の前に現れたのはコートジボアール出身の黒人青年だった。しかも、フランス人嫌いの彼の父親が大反対。果たして、色とりどりの家族に愛と平和は訪れるのか?

(映画フライヤーより引用)

 
監督は貴族出身。社会の変化は上層から始まる

予告編を見ればわかるけど、ロワール地方のたいへん立派な“お屋敷“に住む、ブルジョワ一家が舞台。監督自身も貴族出身だそうで、ブルジョワジーな生活やインテリアを垣間見れるところも魅力のひとつ。


映画『最高の花婿』予告編

長女の夫:アルジェリア出身のアラブ人弁護士 長女:弁護士

次女の夫:イスラエル出身のユダヤ人実業家(というより起業家?) 次女:歯科医

三女の夫:中国出身の中国人銀行家 三女:アーティスト

四女の未来の夫:コートジボワール出身の喜劇俳優 四女:テレビ局の法務部勤務

 

ヴェルヌイユ家のお父さんは、大きな事務所を経営する公証人。地方在住インテリブルジョワジーなお宅に育った娘たちは、旧弊からは自由でパートナーを選ぶ際にも人種や宗教にとらわれてない。“同じクラスタ“であれば相手の出自は問わない、インテリブルジョワジーなヴェルヌイユ家の一家団欒は、政治談議抜きのぷち国連会議ちっく。

 

ユダヤとアラブと中国が同じテーブルに座るのなら、一家団欒をぶち壊す政治的話題はふさわしくない。そしたらナニ話せばいいのさ?で、バックボーンは大いに異なるけれど、今は同じクラスタに所属する男どもが、共通の話題を見つけるまでのお話でもあった。

 

それなりに社会的地位のある男性は、かたい話題がお好きだから、政治や社会的テーマなら饒舌になる。ところが同質性の高い集団なら盛り上がるテーマも、異質な寄せ集め集団ではいまいち盛り上がりに欠ける。相手のタブーに触れることはご法度だから。政治・宗教・スポーツの話題は、相手を選ぶ。

 

とはいえそこは家族で一家団欒の場でもあるから、何とか盛り上がれるテーマを探そうとする過程がかなーり楽しい。

 

スポーツの話題は危険水域なんだけど、三人の婿とヴェルヌイユ家のお父さんが、ラ・マルセイエーズを歌うシーンがお気に入り。フランスへの帰属意識をくすぐるのは、サッカーのナショナルチームってとこがいかにもな感じで面白い。

 

女性陣はみんなパリジェンヌだから、意思疎通に問題なし。新しく親戚関係となる四女の義母(花婿の母親)とヴェルヌイユ家のお母さんも、宗教は同じカトリックだから意気投合してる。

 

バックボーンが異なりいがみ合う男性陣が、文句なしにひとつになれるシーンのことごとくが、小学生男子並みにしょうもなくて大いに笑えた。大阪の薬屋さんの広告、「アホにつける薬はあらへん」を、なぜか思い出してしまう。笑えるけど、ナショナルチーム・共通の敵・ビジネス・悪ふざけに、彼らがひとつになれるヒントも隠されている。


結婚でぶつかる旧世代と新世代の価値観

この映画、市役所での結婚式シーンが3回出てくる。(長女・次女・三女は異教徒と結婚してるから、教会で挙式できないのさ)そのたびに憂鬱になっていくヴェルヌイユ家の両親がまずは見もので、“教会で式を挙げられない”という両親、特に母親の焦燥がすごい。

 

自分やその両親も式を挙げたカトリック教会で、娘にも式を挙げて欲しかったという母親の切ない願望。親の気持ちはわかるけれど、もはや親の期待に応えるために生きているわけではない娘たちとのすれ違いに、ジェネレーションギャップも大いに表れていた。

 

親が婿として気に入る男性を、四女は喜ばない。伴侶の選び方が、親世代と娘世代ではすでに異なっている。

 

ヴェルヌイユ家の両親がふだん住む地方では、異人種間結婚はまだ少数派。政治的には市民権を得ていても、実体験としてはいまだに遠い出来事。特に急進派というわけでもないのに、期せずして時代の最先端となってしまった戸惑いを、上手に盛り込んでた。

 

参考にすべきお手本、ロールモデルが居ない状態だから、すべてが手探り。戸惑ったり間違ったりしながら、“新しいヴェルヌイユ家”が出来上がっていくのを一緒に楽しんだ。

 

これが例えばアメリカだったら、十年二十年前に通り過ぎてきた地点。難民より移民の多いフランスで、パリ以外の地方都市でも本格的に人種混合が進む先触れかもと受け止めた。

 

難民に押し出される形で移民が増える、どの国にとっても起こり得る未来。移民を送り出す国と受け入れる国と。どちらにとっても他人事ではない、近未来に起こり得る出来事を描いてる。


“違いがあるから人生は楽しい”を、リアルにするためのヒント

政治や宗教、スポーツの話題は相手を選ぶ。楽しく話すためなら許される悪態、例えばカダフィシャイロック、あるいはジャッキー・チェンとニックネームをつける行為にも、許される場と許されない場が出てくる。冗談が通じなくなるから。

 

家庭内という内輪であっても、内輪を構成するメンバーが変われば、好まれる話題も変わってゆく。家族としての絆が強固でなければ、センシティブな話題は家族を壊す。

 

人種も宗教も異なるバックグラウンドを持つ相手と、まずは打ち解けるためにじゃあナニ話せばいいのさ?な時は、「生活の話」をすればいい。

 

食べもの、着るもの、インテリア。子供は大きくなるし、親は老いる。儲かってまっか、ボチボチでんなと、自身の仕事の話でもいい。政治的緊張や社会的緊張が身近、すぐ隣に座る人との間で勃発しそうになればなるほど、政治や宗教の話題は遠くなる。

 

世界平和への第一歩はまずは家庭から。説教臭さがみじんも感じられないのは、ユーモアという知性の衣で分厚く包まれてるから。うっかり知性を見落としそうになるほど、細部までシャレが効いていて、とってもいい。こういう映画大好き。

 

realsound.jp

『ビッグ・ファット・ウェディング』に『レイチェルの結婚』もそうだけど、結婚というイベントは、個人の家族観と社会の変化を鮮明に描き出す。全編笑いにのせてお届けするあたり、今の国際社会の緊張が逆に鮮明になってるかも。笑いにのせた方が、たくさんの人に届く。

 

 

 

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お休みなさーい。