クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

人生ゲーム攻略本として、歴史を読む

半熟卵、あるいは目玉焼きがのったピザはビスマルク

 

ドイツ帝国初代宰相となった、ドイツにとっての偉人ビスマルクの名前がなぜピザ、イタリアの食べ物についてるんだ???と不思議だった。ビスマルクがイタリアに友好的感情をもたれる由来は何さと考えれば、敵の敵は味方で、イタリアと領土で揉めていたオーストリアを弱体化させた人だから。

 

ハプスブルク家とホーエンツォレルン家。どっちが名家かといえば、圧倒的にハプスブルク家の方。世界史に名を残す有名人を多数輩出している、中欧どころかヨーロッパにおける名家ちゅうの名家。

 

そのハプスブルク家出身の皇帝を擁するオーストリアとの同権をめざし、同じく中欧プロイセン出身のホーエンツォレルン家の王を初代ドイツ皇帝にまで押し上げたのはビスマルク。しかもドイツ帝国成立が宣言されたのは、フランスのヴェルサイユ宮殿にて。

 

地方出身の小国の王を、大国の干渉を退け同じ皇帝の地位まで引っ張り上げ、戴冠式超大国フランスで行ってフランスの恨みを買い、ドイツ帝国を国際政治の主役にしたのもすべてビスマルクのおかげ。

 

登場前と後では、世界の様子がすっかり変わってるんだから、世界を変えた彼はやっぱり偉人。

 

彼が偉人となれたのは、プロイセンオーストリアを同権の地位にまで引っ張り上げるという、人生ゲームのゴール設定が確固としてたから。ゴールしたあとは、出自に戻るかのように田舎ユンカー、大地主貴族として地方に隠棲した。隠棲しながら精力的に、彼を引退させた新皇帝を攻撃してたみたいだけどさ。

 

圧倒的な強者に侵略されるかもしれないという恐怖は、ナショナリズムに火を付ける。例えばナポレオン。ナポレオンという明らかな敵の出現は、国という意識希薄なドイツにも、国民意識を芽生えさせた。

 

ビスマルクはナポレオンのように、自身が皇帝になることは考えず宰相の地位にとどまった、出自に忠実かつ保守的な人。国際政治を動かす中心人物で圧倒的な強者が保守だったら、次に火がつくのは、反保守で反ユンカー的な価値観。

 

攻略好きな人がもっとも夢中になれてかつ適性もあるのは、きっと政治。

 

内なる敵に外なる敵。どの道が正解なのか、常に分岐するルートからゴールへの最短経路を割り出す作業が苦にならない人は政治家向きで、エゴイズムと相性よしでロマン主義とは相容れない。ゴールがぶれる人は、いつまでたってもゴールできない。

 

どの道が正解なのか。常に分岐するルートからゴールへの最短経路を行った人や、その人の選択の背景を知りたかったら、偉人の足跡をたどるに限る。

 

だけど百年あるいは千年単位で記述される歴史のなかでは、ビスマルクほどの偉人であっても彼の業績は「巧みな外交手腕と軍備拡張によりドイツを統一に導き、ドイツ帝国初代宰相に就任。ビスマルク時代を築いた」と、たった数行に要約される。

 

たった数行の要約が、次々に生まれる新しい歴史に埋もれてしまわないのは、数行に要約される業績の背後にある、要約しようもなく膨大かつめまぐるしい出来事を知ってるから。バックグラウンドに対する理解とフックになるワードの組合せさえあれば、省略された出来事を思い起こすのもたやすい。

 

こんなエピソード、どうやって掘り起こした。。と思うようなプライベートまで洗い出されるのは政治家だから。家族にあてた私信でさえ、死後には暴露される。

 

秘密だったものも、やがては秘密でなくなる。かつては手紙、今ならフェイスブックを筆頭としたSNS。政治の道を選び、公人の道を選んだ人のプライベートはプライベートでなくなり、いつか必ずあからさまになる。

 

すべてのプライベートがあからさまになっても政治家であれば、政治家としてどうだったのかという視点で判断される。

 

政治家としてもお粗末、プライベートもお粗末だったら、擁護のしようもなし。

 

ナショナリズム自由主義社会主義に軍拡主義に。道具として何らかの主義を使うことはあっても、道具に使われることはないという道を選べばより無理ゲーっぽい。攻略できないゲームほど燃えるような人には、ちょうどいいかもね。