クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

埃とケン・ローチとイエスマンと

車道の雪はすっかり融けて、一年でもっとも茶色くて見るべきものもないシーズンに突入。水溜り注意、泥はね注意で、油断ならねぇ。

 

“世界はゴミを送ってくるが、我々は音楽を送り返す”というフレーズが気に入ったので、メモメモ。ドキュメンタリー番組で使われていたフレーズさ。

 

雪が消えつつあるせいか、あちこち地面を掘り返してリニューアル工事中のせいか、埃っぽい。おかげで外出意欲も減退気味。思いがけないところに雪が残っているので、車を使うにはまだ早くて不便。

 

立派過ぎる二本の足で歩けばいいんだけど、それが億劫になる水溜りの季節なのさ。

 

2016年に、カンヌでパルムドールに輝いたケン・ローチ。この機会に旧作も動画入りしないかとポチポチ検索するも、お目当ての作品『大地と自由』にはなかなかお目にかかれない。

 

スペイン内戦を舞台にしたもの。ということくらいしか知らない。スペイン内戦といえば、ヘミングウェイジョージ・オーウェルも参戦したという、ある種の人のヒロイズムを刺激した戦い。その経験が『誰がために鐘は鳴る』や『武器よさらば』、あるいは『カタロニア賛歌』に結実したっぽい。

 

ヒロイズムが爆発した奴はもういいから、もっと違った視点のフィクションが見たいと思ったからのケン・ローチで『大地と自由』だけど、今は見ることが叶わないので、かわりに『麦の穂をゆらす風』を見る。原題も『The Wind That Shakes the Barley』と美しいタイトルに美しく牧歌的な景色には似合わない、アイルランド内戦がテーマだった。。重い。

 

そういやもうすぐ聖パトリックディだけど、アイルランドといえば、アメリカを筆頭に世界中に移民を輩出してる、移民国家。祖国を後にする人が多いということは、祖国が相当に住みにくい場所であったことの証明でもあって、飢饉による食糧難に加え、イギリスからの独立闘争で内戦状態を経験したら、そりゃ住みにくかろ。

 

住みにくかろ、という軽い感想が許されないぐらい、重いシリアスな映画で、不真面目に鑑賞するには不向きだった。ごめん。面白きこともなき闘争の日々をフィクションにしたところで、面白くはならんわな。辛いだけで。後世に伝えたいという、情熱で出来てるような作品だった。監督はきっと真面目。

 

安定は平和への第一歩で、豊かさへの近道。争ってばかりだと国が荒れるだけ。荒廃にも争いにも嫌気が差した人から、故国を後にしたんじゃなかろうか。

 

先に出国した人が居るから、安心して後も追えるってもので。移民大国は、国にとってはいいことではないけれど、それが生き残る道ならしょうがない。

 

重苦しい気分を『イエスマン“YES”は人生のパスワード』で口直し。

 

ジム・キャリーの顔芸がいい。ズーイー・デシャネルの相手役と考えたらイヤだけど。もったない、もったいない、もったいない。

 

すべてにYESで応えていたら、いいようにカモにされて、最後は丸裸にむしられるよ!との警句も込めたコメディでいい。

 

NOと言えば、NOマン!NOマン!と詰め寄られるシーンが怖かった。集団での同調圧力は、コワ過ぎでイヤ過ぎさ。

 

なにごとにもYES、ポジティブな態度で臨んだ方が、いい結果も出やすいけれど、嫌なものはイヤときっぱり断るNOの力、使いどころが大事やね。

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顔芸が、いい息抜きになった。

 

お休みなさーい。

ミモザケーキとFesta della Donnaと花より団子

3月といえば卒業シーズンで送別会シーズンのせいか、どこの花屋さんも見たこともないほどの花でいっぱい。夕方になるときっちり空になっている花入れ多数で、フル稼働で花束制作中なんだろう、きっと。

 

春を感じる花と言えば、ミモザ。チューリップもスイートピーも春の花っちゃそうだけど、今どきだと花屋では年中手に入る。ところがミモザはそうもいかなくて、春先にしか手に入らないから春の花。

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というわけで、ミモザケーキを作ってみた。

 

3月8日は、ミモザの日。Festa della Donnaとイタリアでは呼ぶらしい。女性に敬意を表し、ミモザの花束とミモザケーキを贈るとかなんとか言われてる日。ミモザは花屋で手に入るけど、ミモザケーキは周辺では見かけない。というわけで、作ってみた。自分で。

 

「Torta Miosa」で画像検索すると、本場のミモザケーキが大量に発掘される。ついでにレシピも眺め、ミモザケーキの全体像を把握する。

 

スポンジケーキ+カスタードクリーム+生クリーム+スポンジケーキを細かく砕いたものでデコレーション。が、正解っぽい。ミモザの花そのものをデコレーションとしてあしらったり、いちごだったり、他の花だったりというアレンジに、その店の個性があるらしい。

 

まずは、スポンジケーキを作る。

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クリームでデコレーションすることを見越して、小さめの型で焼く。スポンジケーキの焼き方にもいろいろあれど、卵白のメレンゲとクリーム状の卵黄を混ぜ合わせる「別立て」で作ってみる。

 【材料】

  • 小麦粉 80g 
  • 卵 4個 
  • ラニュー糖 120g 
  • 溶かしバター 30g

まずはメレンゲから作る。

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ラニュー糖の半分を入れて、角が立つくらいまで固く泡立てる。

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卵黄に残りのグラニュー糖を入れ、湯煎にかけながらもったりとクリーム状になるまでよく混ぜる。

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 クリーム状となった卵黄に、メレンゲの半分を加える。

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小麦粉を加える。

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残りのメレンゲを加え、さっくりと切るように混ぜる。溶かしバターを加える。

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180℃に予熱したオーブンで30分ほど焼く。

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よく膨らみました。直径15センチの型を使用。スポンジが冷めるのを待つ間に、カスタードクリームを作る。

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焼きっぱなしのケーキを作る時は、ここで作業終了でラクチン♪なのに。。デコレーションが必要なケーキを作らないのは面倒くさいから。このあとカスタードクリームも作って、さらにデコレーションまでするんだぜ?めんどくさ。

www.meg-snow.com

カスタードクリームは、栗原はるみのレシピを参考に。残る卵白をどうするか???問題をのぞけば、わかりやすい分量で作りやすい。

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【材料】

  • 卵黄 2個分 
  • ラニュー糖 60g 
  • 薄力粉 大さじ2 
  • 牛乳 1カップ 
  • バニラエッセンス、レモンエッセンス

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卵黄にグラニュー糖を加え、よく混ぜる。薄力粉も加える。

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電子レンジでひと肌程度に温めた牛乳(ホットミルク程度)を少しづつ加える。

 

ここから火にかけ、もったりとしたクリーム状になるまで、よくかき混ぜる。

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仕上げにバニラエッセンスとレモンエッセンスを加えて、カスタードクリームの完成。

 

スポンジケーキは焼き色のついた上部をカットし、半分の厚さにカット。コンビニケーキの、きめ細かいしっとりとしたスポンジケーキとは似ても似つかない仕上がりに。カステラの端っこ詰め合わせみたいなビジュアルながら、焼き立てはたいへんふんわりしていて美味。

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ほんとはシロップを塗った方がいいとわかりつつ面倒なのでカット。いきなり生地にカスタードクリームを塗る。片方のスポンジには、食べやすい大きさにカットしたいちごを散らす。使用したいちごは多分6個ほど。

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重ねたスポンジケーキを生クリームでコーティング。生クリームは、接着剤がわりなので、雑に塗ってる。

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小さな型で焼いておいたスポンジその他をおろし、細かく砕く。チーズ用のグラインダーでもよかった。そっちの方が「絵面」がいい。

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ここで誤算に気付く。

 

21㎝の型用の分量で、小さ目の型に入れて焼き、余った分をデコレーション用にという目論見が、見事に崩れる。スポンジが足りねぇ。しかも全然。もう一個スポンジケーキを焼く気力もなく、しょうがないのでてっぺん、表面部分にだけ細かく砕いたスポンジケーキを飾る、無念。

 

やってみないとわかんないもんだね。。

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表面にも食べやすくカットしたいちごを飾り、ミモザも飾って完成。デコレーションが足りなかった見苦しいサイドは隠す作戦。

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切ったところはこんな感じ。とろけるチーズのように、カスタードクリームがとろけてくる。うまうま。お店で食べるケーキとは明らかに違う、たいそう素朴な味わいが新鮮。自分で作ったもの、そら素朴な出来上がりにしかならんわな。。

 

ところで本場のミモザの日は、ミモザミモザケーキも女性にプレゼントされるもの。自分でミモザ買ってきて、ケーキも手作りは、多分換骨奪胎では済まされないぐらい、本来の趣旨を冒涜してる。

 

でもさ、ミモザ買ってきてと頼んだところで、ミモザを置いてそうな花屋のレクチャーから始めなくちゃいけない。仏壇に供える花がメインの花屋には、ミモザはない。その辺から教えていくのは、とっても面倒。

 

ついでにミモザケーキも、この辺ではそもそも売ってないし、見掛けない。

 

彼女やパートナーのために、ケーキや料理が作れる男性を微笑ましいと思う反面、別に相手にケーキや料理の才能なんて求めちゃいない。その他に秀でてる部分があるから、得意じゃないことに手を出さなくてもいい。代わりに好きなもの買えば?で全然いい。

 

きっと食べきれないだろうと思って小さ目の型で焼いたのに、デコレーションすると、もとのサイズの1.5倍くらいに膨張した。

 

次回作る時は、もっと小さめに作って、スポンジ生地も半分ではなく1/3サイズにカットして、デコレーション用のスポンジケーキを増やそう、そうしよう。

 

何ごとも、作ってみなくちゃわからない。

 

ミモザの花からふんわりと漂う芳香は、春の香り。あんまり長持ちしない花だけど、黄色い小花がたいへん可愛らしくてキュート。街中が、ミモザの花に囲まれる本場のミモザの日、花より団子の国と違って、いいな。花もなしで団子だけ追求するのは、欲しがりません、勝つまではの延長っぽくて、すごーく無粋。

 

お休みなさーい。

肩凝りと『箱舟の航海日誌』と

青空が広がり、足元の雪は消えつつあるとはいえ、気温はまだまだ低いので、油断ならねぇ。とはいえバンクーバーよりは暖かいようで、「勝った」と謎の優越感にひたる。

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つい最近オープンした新しい商業施設、シタッテサッポロ。通りかかったついでに、気分は内部視察でジロジロ見てきた。

 

駅前通りの富国生命ビルをリニューアルしたもので、場所は赤レンガテラスの目と鼻の先。飲食店のほかに、旅行代理店とドコモショップGショック専門店が入ってた。

 

丸美珈琲が入る一方で東京のお店も入る、ローカルなお店とそれ以外とのバランスもいい感じ。お茶するよりは、近隣のオフィスで働く人のためのランチや飲み需要に応えられそうなお店多し。そのうちどこかに入ってみよう。

 

丸美珈琲は、座席なしでスタンド売りの店舗。あら座席ないのね。。とガッカリしそうなところ、お店のすぐそばには階段を利用した寛ぎスペースが設けられていた。おっしゃれ―。きっとインスタ映えする。

 

京都駅の大階段、あるいはヨーロッパあたりにありそうな、噴水のまわりに広がる階段状となった広場がほのかに思い出される空間。

 

街中にまた、ダラダラと過ごせるスペースが出来て、よかったね。ダラダラと過ごせるスペースは、貴重だから。

 

ここしばらく悩まされていた肩凝り、マッサージのおかげで血流がよくなったせいか、久々に軽くなった。自然に治るかと思っていたら、ちっとも治らなくて、包丁持つのさえダルかった。軽くなってウキウキ。

 

冬季はどうしても運動不足になるから、血流も滞りがち。自然にまかせていてもどないもこないもならんので、自然まかせはもう止めにしよう。そうしよう。

 

ずっと積読だったウォーカーの『箱舟の航海日誌』もようやく読了。日本人にとっては馴染みがないけれど、イギリスでは知名度のある児童文学作品だとか。文章も平易な寓話っぽくて、イラストも多目。

 

とっても読みやすい短いお話なのに、それでも長らく積読だった。。“ノアの箱舟”をベースにした、多数の動物が登場するお話。トラや象といったお馴染みの動物のほか、フワコロ=ドンやナナジュナナ、スカブといった想像上の動物も登場。

 

「最終バスに乗り遅れるな」とばかりに、洪水前にノアの箱舟に乗り込んだ動物たちが、陸地を見つけて船を降りるまでの出来事をつづっただけのもの。

 

元は児童文学だから、難解かつ高尚な言い回しなしで、仲良く平和に暮らしていた動物たちの暮らしが変わりゆくさまを描いてる。

 

仲良く平和な暮らしを脅かすのは、いつだってどこだって“流言飛語”。

 

招かれざる客スカブがこっそり船に忍び込み、相互不信の種を植えつけていく。スカブがなぜ招かれざる客なのかというと、スカブのみがタブーとされていた肉食を覚えた動物だから。

 

洪水以前の社会では、果物や草が動物や鳥たちの主たる食べ物だった。最初は仲良しの小型動物と大型動物の関係に亀裂が入って行くさまは、『ズートピア』も思い出させる。

 

ズートピア』では副市長のメリーさん、草食動物が黒幕だったけれど、『箱舟の航海日誌』の黒幕は、スカブ。かつてタブーを犯した、得体の知れない、流言飛語が大好きで不和や諍いが好きで、小動物に対して尊大な、イヤーな感じの獣。

 

人間社会でも、世間に不和をまき散らすタイプの造形と、さほど違いはなかろうと思わせる。寓話っぽい単純なお話ながら、最後には後味の悪さが残る趣向で、それが教訓にもなっている。

 

得体の知れない生き物による、“流言飛語”に耳を貸すな。世間の人の目に触れる場所に“流言飛語”をデカデカと掲げるな。

 

多分、それだけで相互不信はかなり防げるはず。現代では人ならぬもの、BOTやAIまで流言飛語市場に参入してきてるうえに”市場”になってるから、さらに油断ならねぇ。

 

イラストも可愛らしいけど、可愛らしい小動物から流言飛語の餌食になって消えていくんだな。第一次世界大戦が終わって間もなくの頃、戦禍がまた繰り返されるかもという時代に書かれたもの。不和や諍いが好物で、再戦を望む戦いたがりは、こんな時にこそ生まれやすい。くわばらくわばら。

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人間には種を持ち実をつけるものが、動物には草が食べ物として与えられたんだってさ、創世記によると。いまさら創世記でもなし。肉食をタブーとするのは、世界が作られた昔に帰りたい、原理主義のなせるわざなのかも。かもかも。

お休みなさーい。

ティア・レオーニがとってもカワイイ『天使のくれた時間』見た

原題は『The Family Man』なのに、どうして邦題はこうなった???ロマンチックコメディ、あるいはロマンス映画らしいっちゃらしいんだけど。

ティア・レオーニがかわいい

ニコラス・ケイジティア・レオーニが、破局したカップルかつ仲睦まじい夫婦役を演じてる。ティア・レオーニが、とにかくかわいい!かわいい!とびっきりキュート!!!

 

2000年公開の映画だから、ファッションその他に時代が出てる。古っと思うところも時々あれど、ティア・レオーニのかわいさで許してしまう。

 

「もう一度人生をやり直す」チャンスを与えられたら、一体どんな未来を選ぶのか。

 破局したはずの二人が仲睦まじい夫婦となってしまうのは、ちょっとした運命のイタズラで、イタズラに他人の人生を翻弄するのは黒人かつブルカラーっぽい青年。

 

ウォール街の高級ペントハウスに住むジャックは、成功した金融マン。バークレー銀行勤務の時に、ロンドン赴任というチャンスを得て、ついには経営者にまでなった人。

 

ジャックの人生の転機はロンドン赴任で、その際に「お互いの未来のため」と、ロースクールに進学するケイトと涙・涙のお別れをした。

 

それから13年。成功を手に入れたジャックは、やり手の経営者となってクリスマスも仕事漬け。いまだ独身のセフレ持ち。家族持ちの社員たちから、クリスマスまで仕事なんて……と文句言われながらも、ハードワークにまい進中。

 

とはいえやっぱり独り身には寂しいクリスマスイブの夜。ジャックは、コンビニで銃を振り回して強盗まがいの騒ぎを起こす黒人青年と知り合い、この青年から奇妙な贈り物をもらう。

 

するとあら不思議。翌朝、クリスマスの朝に見知らぬ家で目が覚めたジャックの隣には、大昔に別れたはずのケイトの姿があって、ジャック大パニック。一夜にして娘と息子、二児の父親となったジャックは、自身のゴージャスペントハウスとは似ても似つかぬ生活臭あふれる、郊外の一軒家で暮らし始める。

 

転生するジャック

やり手の金融マンとしてNYでゴージャスに暮らしてるはずのジャックが、ケイトと夫婦となった“こっち“の世界では、タイヤ会社で働くどこにでもいるフツーのオジサンに転生。

 

どうしてこうなった???と納得いかないながらも、母となったケイトは相変わらずキュートでかわいい。

 

どこにでもいるフツーのおじさんに転生したジャックだけど、中身は最近まで金融の最前線にいた、やり手。当然だけど、アットホームな職場もアットホームで地に足ついた生活にも違和感ありまくり。

 

かわいい妻と子ども、友人に恵まれたアットホームな地域社会に生きるのか、それとも転生前の成功したビジネスマンとして生きるのか。

 

仕事漬け人間が、家族愛や隣人愛に突如目覚めて生まれ変われるものなのか。転生前の記憶も濃厚なまま、異世界あるいは別世界に飛ばされたところで、生き方は早々変わりゃしない。

 

ケイト目線では突然目覚めちゃったジャックは、転生前の生活をケイトとともに歩もうとする勝手な夫。でもさ、ケイトにだって言い分はあるのよ。。というところでまた舞台は反転。

 

あんたは絶対に天使なんかじゃねぇという黒人青年が、気まぐれに時空を歪ませる。

 

『素晴らしき哉、人生』のオマージュ作品

転生後の世界でもそうありたいと願った、元の成功者としての生活に戻ったジャックだけど、そこにはケイトも子どもたちもいない。

 

元々アメリカでは毎年年末にテレビ放送されたという、古典的名作『素晴らしき哉、人生』をオマージュになっているのが『天使のくれた時間』。ついでにウィル・スミスバージョンのリメイク作『素晴らしきかな、人生』も公開中だったね、札幌では。

 

選ばなかったもうひとつの世界の素晴らしさを知った後でも、なお「その生活イラネ」と言えるものか。

 

元の世界ではケイトにはケイトの生活があり、今度はジャックがケイトを「行かないで」と引き留める番。ケイトがジャックを引き留めるところは涙・涙でロマンチックなんだけど、ジャックがケイトを引き留めるシーンは、かなりこっぱずかしい。直視できない。なぜだ???

 

一度は身勝手に恋人を捨てた男、転生という、ケイトが知るはずもない個人的経験を、だから俺たち一緒に居るべきだと押し付けてくるからきまり悪いのか。

 

事情を知らないケイトを、熱情で押して押して押しまくるからきまり悪い。もっとスマートなやり方があるやろう。。というのは傍観者の声で、生々しい記憶につき動かされてるジャックには、自身のカッコ悪さを自覚する余裕もない。

 

あの人が、こんなカッコ悪いことするの???というギャップは、事情を知らないケイトを動かすのにじゅうぶんで、最後はたいへんロマンチックなところに落ち着いてくれる。

 

ロマンチックだけど、ロマンスが生まれるのはこれから。いきなり子持ちになることも、生活に追われることもなし。すべてはこれから。

 

ジャックとケイトと二人にとってのベストを、これから話し合って決めていくんだねという、転生後の世界に縛られないラストを用意してるところが、いい。

 

あんたは絶対に天使じゃないからな!という、他人の人生に勝手に介入して翻弄する、あの青年が用意した未来予想図通りじゃなくてもいいのさ、きっと。

 

他人の人生に勝手に介入して翻弄する、あんたは絶対に天使なんかじゃないから、そこは何度でも強調しておきたい。『素晴らしき哉、人生』のクラレンスは天使っぽいけど、あんたは絶対に違う。

 

家族愛や隣人愛とともに、地域社会で生きろと示唆する青年が、どう考えても家族や隣人とも地域社会とも没交渉っぽいってどうゆうことさ?産めよ増やせよという示唆を、マルチの勧誘っぽく受け止めてしまうのは、マルチやカルトっぽい人たちとの邂逅で迷惑こうむったゆえに歪んだ、あるいはうがった見方をするようになったから。

 

なぜ他人の人生に勝手に介入して翻弄するのが、黒人ブルカラー青年という設定なのか。介入されたジャックは成功した金融マンで、ケイトはロースクール出身の弁護士なんですけど?その辺の寓意あるいは含意まで勝手に想像の翼が大きく広がる作品だった。

 

ティア・レオーニがとにかくかわいくて、それだけで見る価値あり。かわいいかどうかは各自で確かめればいいから、画像はなし。

 

お休みなさーい。

『グランド・イリュージョン』と豆のポタージュと

花粉飛び交う関東の陽気か、3月とはいえ小雪が舞う北の国か。羨むべきはいったいどちらか、花粉も雪もカンケーない南国にでも高飛びしたい。

 

舞い散る小雪のせいで、外出意欲はすみやかに減退。99%捨てるものしかないクローゼット整理は遅々として進まず、引っ越し以来封印されていた段ボールをひとつ開けたところでうっちゃり。

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(これは気分転換で作った、豆のポタージュ)

こういう気分の時はB級映画さ、と『グランド・イルージョン』を見る。

 世紀のマジシャン4人組が主人公の、劇場型犯罪おバカ系。ショー要素が満載で、頭使わずに楽しめる。劇場型犯罪とはいえ、根底にあるのはマジックへの「愛」だから、爽快とか、痛快とかスカッとするという単語がよく似合う。

 

マジックショーの最中に、遠くパリの金庫から消えた札束の行方を筆頭に、衆人環視の中で繰り返される劇場型犯罪。翻弄される警察と、警察をあざ笑うかのように犯行を重ねるマジシャン集団フォースメンの対決が、ルパン三世スペシャル版っぽいストーリー。

 

実はフォースメンも姿の見えない黒幕の指示で動いていて、彼らを陰で操る人物は一体誰???というのも重要なポイントで、観客を飽きさせない盛りだくさんの趣向がかえって目まぐるしすぎて、途中で飽きてしまった。これは個人の感想です。

 

アトラクションいっぱいのテーマパークに行ったところで疲れしか感じない。池でボートくらいのアドベンチャーでいいやと思う人間にとって、頭使わないアドベンチャーは、やっぱり退屈の方が勝ってしまう。

 

マジックショーは、映画で見るよりラスベガスかどこかのショーで実際に見た方が面白そう。

 

マジシャンの人、かつてはテレビでもよく見かけたものだけど、近頃さっぱり見掛けないのは、ショーに出た方が稼げるからか。ファンでもない人に難癖つけられる可能性のあるテレビよりも、イルージョンに素直に感心してくれるファンがいるショーの方が、そりゃいいやね。

 

マジックの種明かし、手の内もところどころ明かしつつ、映画は進むよフィナーレに向けて。難癖つけて、愛のあるマジック、イルージョンの世界をぶち壊す無粋な者への抗議と制裁もしっかり織り込みながら。

 

娯楽大作は、映画館の大きなスクリーンで見た方が、魅了されやすくイルージョンの世界にも浸りやすい。もひとつノレないという感想になったのは、手のひら視聴という環境も大いに関係あり。

 

原題の『Now You See Me』というタイトルがカッコいい。

 

ハデハデ~なマジックショーは、ライブでこそ見たくなる。例年2~3月は、もっとも映画館から足が遠のく季節。春よ来い。

 

お休みなさーい。

 

ケイシー・アフレックがオスカーを獲ったので『セインツ-約束の果て-』見た

ケイシー・アフレックが、アカデミー主演男優賞受賞\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/

 

お兄さんのベン・アフレックに比べると、日本人的には地味な印象のケイシー・アフレック。派手派手な作品よりも、じっくりと腰を落ち着けて鑑賞するような人間ドラマの方が、彼の持ち味が出るのかも。かもかも。

 

『セインツ-約束の果て-』も、地味な人間ドラマ。銃をぶっ放すシーン多目で出血多量ではあっても地味。

セインツ ―約束の果て―  Blu-ray

セインツ ―約束の果て― Blu-ray

 

 (Amazonビデオ入りしてた)

映画公式サイトによると「もうひとつのボニー&クライド」とのキャッチコピーで紹介されているこの作品では、ケイシーが『キャロル』のルーニー・マーラと、離れ離れになっても求め合う夫婦役を演じてる。

キャロル(字幕版)
 

 ボニー&クライドは、映画史に残るラストシーンで有名な『俺たちに明日はない』のならず者カップルで、クライドを演じたのは、ウォーレン・ビューティ(あるいはベイティ)。

 アカデミー作品賞を『ラ・ラ・ランド』と間違って発表し、ぬか喜びをさせるという世紀の珍事を演じたプレゼンターその人。耄碌したとみせかけて、実は確信犯だったとしても驚かない。どこまで本気かわからない、悪ふざけが似合う人。迷惑だけど。

 

さて『セインツ-約束の果て-』は、ケイシー・アフレック演じるボブとルーニー・マーラ演じるルースの、痴話げんかシーンから始まる。

 

互いの他には何も持たないならず者同志、強盗などのイリーガルな仕事で生計を立ててきた二人だから、その結びつきはめっちゃ強い。

 

ルースの妊娠をきっかけに、「これで最後」と足を洗うつもりで挑んだ仕事でヘマをして、ボブは仲間を失い、牢獄へと送られる。一方のルースは女の子を出産し、ならず者から“よき母親”へとジョブチェンジに成功してる。

 

ルースの環境には変化が訪れたけど、牢獄のボブは、ルースと一緒だった時の“互いの他には何も持たない者同士”のテンションそのまま。ルースとまだ見ぬ娘への愛情を生きるよすがに、検閲を受けながら手紙を書き続けてる。

 

牢獄という閉鎖環境で自分を見失わないよう手紙を書き続ける静かな姿も、強盗上等のならず者という姿のどちらも板についているのが、ボブ。粗暴さと紳士な面をあわせ持つ二面性ある人物をつなぐのは、ルースへの深い愛情で、そこには違和感もなし。

 

誰かを深く愛している人は、その人のためなら冷酷非道にだってなれるから。

 

家族恋しさに脱獄したボブは、ルースと娘の元へと戻ろうとするけれど、その前に立ち塞がる男性がふたり。

 

ボブとルースの育ての親とも言えるスケリットと、保安官のパトリック。パトリックは、ボブが牢獄へ入ることとなった事件で、ボブに撃たれた人物。事件関係者であるルースを見守るうちに、ルースに好意を抱くようになった人。

 

ボブは家族を取り戻そうとするけれど、家族を失った男スケリットは、ルースとその娘を疑似家族として大切にしていて、ボブがルースの元に戻ることを許さない。ついでにボブがスケリットたちから、悪事で稼いだ金をかすめ取っていたことも許さない。

 

何としてでもルースの元に戻り、新天地でやり直そうとするボブを、徹底的に妨害する。

 

ボブはルースに会えるのか。パトリックの好意を承知しているルースは、ボブを待ち続けることができるのかが、見どころ。とはいえ正直メリハリに乏しくて、ハラハラドキドキ感には欠ける。

 

1970年代のテキサスという荒涼とした土地には、手に汗に握る展開よりも、地を這うように暗-い描写の方がよく似合ってる。

 

再び会える日まで、届くかどうかもわからないまま、ボブは手紙を書き続ける。手紙が来なくなる日が、二人の再会の時となるのか。

 

“互いの他には何も持たない者同士”のテンションそのままで突っ走るボブには、「生きてこそ」という視点が欠けている。「生きてこそ」という視点が欠けているから、無茶ばっかりする。

 

一方母となったルースには、娘という未来につながるものがあるから、刹那や破滅に向かって無茶することはない。

 

互いに求め合う気持ちに変わりはなくとも、歳月は特にルースを大きく変えた。

 

刹那や破滅に向かってともに手を取り突っ走れるのは、人生の中でほんの一瞬。ほんの一瞬訪れた、“互いの他には何も持たない者同士”のテンションそのままで突っ走ったボブは、ある意味幸福なままだったのかも。

 

ケイシー・アフレック、シリアスな顔になるとベン・アフレックの面影が強くにじみ出てくる。彼の方が優し気ではあるんだけど。

 

ゴーン・ベイビー・ゴーン』もそうだけど、シリアスな役柄を演じることが多い気がするケイシー。地味な役をきっちり演じ切ってきた成果が、オスカーなのかも。

 とにかくめでたい\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/

 

お休みなさーい。

デジタルといえど儚し

ジェニー・ガースと検索したら、シャナン・ドハーティとサジェッションされた。グーグルさん、いい仕事し過ぎ。

 

ついでにサンタナ・ロペスことナヤ・リヴェラと検索したら、ブリトニーことヘザー・モリスがサジェッションされるのかと思いきや、グーグルさんのおすすめは、リア・ミシェル。確執がある(と言われている)取り合わせをサジェッションしてくるなんて、グーグル、やっぱり邪悪やん。

 

ついでに日本語だと、シャナンは悪口言われまくりのゴシップが目立ち、ジェニーの方はそうでもなく優等生扱い。英語だと、両者とも本人のインスタやtwitterが上位にくる。

 

ビバヒルのケリーことジェニー・ガースのインスタを見ると、現在も幸せそうでひと安心。真実はどうあれ、ジェニー本人が見せたいと思ってる世界観で、ファンは満足さ。シャナンはシャナンで、いいことばかりでもない彼女の世界を率直にリリースしていて、そこがまたシャナンらしくていい。

 

大昔の邦画ならいざ知らず、今も昔も映画やドラマは海外志向。日本の芸能界にはびたいち興味ナシで、名前と顔が一致しないケースも多し。テレビ、特にCMになると、「この人誰?」を連発してる。ハリウッドやその他、海外進出した時にだけオッと思う程度。それ以外は超超有名人以外知らない。

 

ほぼ自分の興味あるフィールドにしか関心を持たないと、こういう風になる。

 

ニュースアプリのスマートニュースは、サイゾーが最も読まれているサイト。そのせいか、デフォルトの設定では芸能ニュースが多い。だから、芸能ニュースが極力目に入らないよう編集してる。サイゾーが最も読まれてるニュースアプリだからな、ここは。という認識で、他に読むものはないのか物足りないと思った頃に、新しいサイトが逐次投入されるという、ステキ設計。

 

欠乏感と充足感と、その繰り返し。

 

ずいぶん前に観たドキュメンタリー映画、そろそろ動画になってるだろうと思ったら「コンテンツ提供者との契約により、現在提供しておりません」とのつれないアナウンス。

 

例えデジタルデータとなっても需要が少ないものは、儚いものよ。

 

一度観てるからいいんだけどさ。そもそも需要が少ないものは、公開時に観ておくのがもっとも確実。見逃したらもう当分は見られない。

 

もういまさら好みは変えられないし、変わらない。好みのものの供給方法、一見選択肢が広がったようでそうでもないみたいなので、供給に合わせて需要、視聴する方も防衛策を考える。

 

お休みなさーい。