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『女神は二度微笑む』見てきた

インド発の本格派サスペンス映画、『女神は二度微笑む』を見てきた。
女神は二度微笑む [DVD]

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 イ ンド映画といえば、めったやたらとポジティブで、歌ったり踊ったりしてるアレでしょという固定観念。私の中ではここ1年くらいの間に完全に過去のものとな りました。ボリウッド映画はますますハリウッドに接近して、この映画もすでにハリウッドでのリメイクが決定してるとか。それも納得。

コルコタ(カルカッタ)の地下鉄で起きた毒ガスによる無差別テロ事件から2年。失踪した夫のアルナブを探すため、身重のヴィディヤはロンドンからひとりコルコタを訪れるが、宿泊先にも勤務先にも夫がいたことを証明する記録は一切なく、途方に暮れてしまう。(フライヤーより)
 
インド映画を見る楽しみのひとつが、ゴージャス美人なヒロイン。この映画のヒロイン・ヴィディヤを演じるヴィディヤー・バーランも、大きな瞳がエキゾチック で大変な美人。目の保養になった。タレントならその辺のねーちゃんでもいいけど、大きなスクリーンで見たいのはゴージャス美人。さすが世界第二の人口を誇るだけあって、女優も選び抜かれてる。
 
 
スクリーンに大写しになってもお肌はツヤツヤぴかぴか。インド料理のスパイス効果なんですかね。1978年生まれで御年37歳とは思えないほど、若々しい。
 
 
さて、この誰もが振り返らずにはいられない美貌をもつこのヒロイン、なんと妊婦さんでもある。先進国の経産婦を知っていると、目や耳を覆いたくなるような環境の中で、失踪した夫をたくましく探し始める。
 
 
このたくましさは、ロンドンからきたIT技術者という設定からくるものか、母は強しと見るべきか。それとも気の強さは生来のものか。相手はなにしろ身重ではるばるロンドンからやってきた、突如連絡が取れなくなった夫を探す、可憐な人妻。
 
 
邪険に扱えるわけないじゃん。
 
 
邪険に扱われないことも計算づくで、夫探しに奔走する。地元警察官を足に使いながら。この、ヒロインは妊婦という設定がスバラシイ。
 
サスペンスで、美しいヒ ロインといきがかりじょう彼女を手助けする羽目になる男がいれば、そこはほれ恋愛のひとつやふたつ、あるいは色っぽいシーンのふたつやみっつくらいないと、お約束違反。ところがヒロインは妊婦なもので、色っぽいシーンはなくても無問題。
 
 
性に寛容な先進国とはまた違った、もしかしてあるかもしれないインド映倫事情も、これなら難なくクリアーできるね!よく知らないけど。
 
 
「失われた夫を探す」ことがヒロインの使命。ところがこの夫がなんだかキナ臭くて、探せば探すほど、その正体は不明になっていく。単なる夫探しのはずなのに、国家的陰謀の臭いまでしてきてヒロインピーンチ。
 
 
お腹の赤ちゃんの父親は、本当はどこの誰だったのか。愛妻家は偽りの姿だったのか。ヒロインが夫探しに懸命になる理由も、生まれてくる子供のためと思えば、誰もが納得する。
 
 
インド発の本格サスペンスということで、大変期待していたサスペンスシーン、意外とちゃっちかった。息をのむほどの驚きには全然あふれてない。エキゾチックなコルコタの街並みを背景にしてるところが、目新しいくらい。
 
 
でもこの、息をのむほどの驚きには全然あふれてないところがミソ。全貌が明らかになるにつれて、どんどん面白くなった。終盤の巻き返しがお見事で、そうだったのか!と池上さんになった気分で楽しめた。ネタバレしてもなお、もう一度最初から見たくなった。
 
 
それぞれのキャラも立っていて、いかにもな人がいかにもなキャラを演じてるとこも良かった。下世話なんだけど根は善良な、いきがかりじょうヒーロー・ラナの上司役の人、すごく好き。『踊る大捜査線』のスリーアミーゴスに加わっててもきっと違和感がない。
 
 
見事などんでん返しは見てのお楽しみ。
 
 
全ての謎は明らかになったようで、実は明かされないままのこともある。100名超の死者を出した地下鉄テロ事件の目的は、結局は謎のまま。
 
 
この映画、妊婦、母なる人がヒロインなところがとっても重要だと思った。女の最大の武器は、色気より母性。色気は男にも出せるけど、母性は女性だけのもの。
 
 
目的も明らかにされず、その真相も、結局はパワーバランスで決まる男社会の掟にのっとって処理されるに違いない。愛する人、夫や子供、かけがいのない友人を理不尽に奪うのは、いつだって政治的解決をはかろうとする男社会。理不尽に奪うものに対峙するのは、産みの苦しみと育てる喜びを知る母性。
 
 
イ ンド、レイプ事件も多発して、持参金殺人が今でも行われ、離婚も難しい。先進国にくらべると、国内の男尊女卑は今でも厳しそう。男社会への華麗なしっぺ返 しには、例えフィクションといえど、インド女性もスカッとしたんじゃないかな。『マダム・イン・ニューヨーク』より興行収入も良かったとか。
 
 
愛する人と結婚して、愛する人の子供を授かり、愛にあふれた家庭を築く。
 
 
母性が暴徒化するのは、平凡な願いを踏みにじられ、理不尽な怒りと悲しみに囚われた時。失うはずのないものを失った母性に力を貸すのは、戦いの女神ドゥルガードゥルガーから殺戮と破壊の女神カーリーが生まれるんだね、知らんかった。
神話によると、女神ドゥルガーシュムバニシュムバという兄弟のアスラの軍と戦ったとき、怒りによって黒く染まった女神の額から出現し、アスラを殺戮したとされる。(wikiより)
 
この映画、ハリウッドでのリメイクもすでに決定してる。その時は、一体どこを舞台に描くのか、とっても興味がある。コルコタあるいはカーリガートという街あってこその映画でもあったから。
 
 
キリスト教聖母マリアはどこまでも慈しみの象徴で、殺戮と破壊の女神とは相容れない。でも、カーリーあるいはドゥルガー的なものがないと、『女神は二度微笑む』にはなりえない。そこをどう独自解釈するのか。リメイク版も今から楽しみ。
 
 
ついでに、この映画の監督スジョイ・ゴーシュは『容疑者Xの献身』のインド版リメイクの監督だとか。数学の国インドを舞台に天才数学者の悲劇をインド風スパイスで描く。ナニソレすごく面白そうで、そっちも強烈に見たい。
 

お休みなさーい。

 

過去に見たインド映画についてはこちらもどうぞ。

waltham7002.hatenadiary.jp

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5月10日、過去記事etc.追記しました。

2018/10/13 リンク先訂正。