外国人観光客に不法就労させた疑いで宿泊施設が摘発され、転売ヤーで荒稼ぎした女は逮捕され、サイバーエージェントからステマ企業と名指しされた企業も札幌にありと、試される北の大地は、人試し過ぎ。イヤねー。
レビューを読むと、なかなかの高評価。主演がアン・ハサウェイってとこもよし。『プラダを着た悪魔』は、何回見ても面白くて好きさ。
飛行機事故で生き残った人たちのもとに、セラピーとして派遣されるのがアン・ハサウェイ演じる主人公のクレア。“心的外傷“を癒すためにサヴァイヴァーのもとに派遣されたクレアだけど、5人のサヴァイヴァー達やクレアの周囲に、不穏な人物がうろつくようになる。彼らはなぜ、何のために姿を現すのか。
その一方で、躁状態のサヴァイヴァー・エリックは、クレアとの個別面談を望みクレアに急速に接近しようとする。
金融ブローカーだったというエリックは、見た目も生活ぶりも悪くない。修士号を二つ持つ高学歴なクレアとも、同じレベルで物が言い合える人ではあるけれど、時おり希死念慮ともいえる奇矯な振舞いを見せて、クレアを困惑させる。
サヴァイヴァー達とのセラピーを重ねるにしたがって、航空機事故は人為的ミスではなかったのではないかと、疑いを深めていくクレア。
困惑しながらもエリックに惹かれていき、同時に事件の真相に囚われていくクレア、その結末やいかに??? と、最後まで目が離せない。
サスペンス風映画が、最後の最後で、サスペンスとはまったく違う姿を見せる。
アメリカとはいえば、合理主義や効率が幅を効かせる世界ではあるけれど、その一方で、どこまでも非合理的なものも受け止める、限りなくフトコロの深いところもある。
この映画はその、「どこまでも非合理的で不条理なもの」に、言ってみれば許しを与えるようなもの。最初から最後まで、非合理的で不条理なものにとことん寄り添ってくれる。とことん寄り添ってくれるから、非合理的で不条理なものも、溶けてなくなってゆく。
最後の最後でまったく違う姿を見せる、この映画。ラストにたどり着くと、押しが強くて気持ち悪くも見えるエリックの行動も、まったく違うものに見える。
不条理により強く囚われている、心残りたっぷりで恐れの強いクレアを、守っていたのがエリック。
ともに非合理的で不条理なものに直面したとはいえ、エリックには若干の余力があるから、クレアの恐れを取り除こうとする。クレアが若くて美人だからというよりは、より弱きものに単純に優しいんだ。
競争だけ激しい国なら、中国や韓国、あるいはシンガポールといったアジア諸国も当てはまる。でも競争が激しい反面、どこまでも非合理的なものや非効率なものさえ許容する、フトコロの深さでは、まだまだアメリカには敵いそうもない。
非合理的なものや非効率なものさえ許容する、フトコロの深さが国の強さにもつながって、優秀な移民を惹きつけるから、ノーベル賞受賞者だって続々と輩出してる。
巻き込んではいけない人は、巻き込まない。
不条理に巻き込まれた人には、どこまでも寄り添うフトコロの深さがあるから、総力戦にもならずにすんでいる。
上位5%に属する人と同じ振舞いを要求しながら、その見返りは上位層に比べれば雀の涙。そんな状態は総力戦で、その集団や組織やあるいは国の、余裕の無さに直結してる。
余裕があるから、巻き込まれるはずではなかった人の不条理に、どこまでも優しく寄り添い、安らぎに至るまで見届けてくれる。
あなたの魂が平穏であれ。
不条理に巻き込まれた人に送る、これ以上のメッセージはなし。「一生懸命」が似合うアン・ハサウェイがヒロインを演じるから、とっても魅力的。クール・ビューティでスカした女優が演じていたら、きっと台無しだった。
すこし不思議で、よかった。
お休みなさーい。