クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

ティム・バートンとデ・クーニングとホドラーとキリコと。

先週久しぶりに東京に行ってきた。一番のお目当てはティム・バートン展。

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羽田から六本木直通のバスも出ているけど、モノレールから見える景色が好きなので、浜松町までモノレールに乗り、その後大江戸線大門駅から六本木へ。

 

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浜松町から大門駅まで徒歩9分と、やや離れてるようでたどり着けるか不安だったけど、人の波についていったら迷いもせずにちゃんと着いた。
 
 
六本木の森アーツセンターギャラリーで開催中の『ティム・バートンの世界』展は、平日にもかかわらず相当混んでいた。

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行列がなかなか進まないので、音声ガイドがあって助かった。混んでる美術展では音声ガイドを借りるべし。待ち時間が有効になる。
 
 
ディズニーが創設したカリフォルニア芸術大学で学び、卒業後はディズニーでアニメーターとして働いていたティム・バートン
 
 
『シザー・ハンズ』や『ビッグ・フィッシュ』、『チャーリーとチョコレート工場』などの映画監督としても知られている彼の、700点にも及ぶ作品が3つのセクションにわけて展示されていた。

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 セクション1では、とにかく何かに絵を描かかずにはおれなかったティム・バートンの気質を表すような、大量のイラストの洗礼をあびる。中にはコースターにまで書かれたものも。本人が大事に持ってたものなのかどうか。なかなか気になるところ。ユーモラスでお茶目なキャラクターが並ぶけど、ほんのちょっぴり毒もある。
 
 
頭部が大きく手足が細いフォルムは、「頭でっかち」を象徴してるよう。あら気を付けなくっちゃと思いましたです、はい。
 
 
郊外の平凡な住宅地で育った彼は、クリスマスなどの「祝祭」に特別な関心を寄せていたとか。そういえば『ナイト・メアー・ビフォア・クリスマス』なんて作品もあったね。
 
 
お祭り楽しい!待ち遠しいね!という気持ちもありつつも、そこから疎外されてるネガティブな感情をモロだしにしたイラストがあったり。「若き日の青春の悩み」が赤裸々に展示されておりました。

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セクション2では、フィギュアや映像の展示もあり。
フィギュアやイラストのフォルムが、「頭でっかち」から、安定の三角形フォルムへと変化してた。
 
 
技術が身について、テクニックで書けるようになった象徴かと思った。下半身は安定しているけど、その分頭部は小さくなっていて。
 
 
もともと自分や同僚の暇つぶしに書かれたような、いわば当時は「落書き」でしかなかったものから、日の目を見ようとがんばって書いたけれど、かなわなかったものまで。とにかく大量のイラストが展示されている。
 
 
大量のボツ作品からは、クリエイティブな方面で成功することの厳しさが溢れておりました。
 
 
皮肉や風刺をユーモアに包み、素晴らしいんだけどディズニーのテイストではないよね、コレ。という映像作品や、お遊びで撮りためたというポラロイドの作品がセクション3では並んでた。
 
 
ティム・バートンがディズニーに執着せず、早めにテイストの合わないところから独立できたおかげで、数々の名作を世に送り出すことができた。しかしその成功の裏には「認められずに悶々とした時代」もあった。ということがよくわかる構成でした。
 
 
ティム・バートンの若かりし頃に、今みたいにイラストでも文章でも映像でも好きなように発表できる場が用意されていたら。それなりに小さな承認欲求が満たされていたら、後年の彼の作品はもしかしたら生まれなかったかも。
 
 
毛利庭園でちょっと寛いだ後は、ブラタモリ気分で麻布十番をぶらつきながら駅へ。

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六本木は今をときめく雰囲気に満ちた場所だけど、この辺りは一気に生活の匂いに満ちた街になる。ここも東京、しかも六本木のすぐそば。坂道を見つけると、ついカメラを向けてしまうけど、傾斜はあんまり反映されてないね。
 
 
チロリアンテープの専門店。チロリアンテープそのものが懐かしい。

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 麻布十番から、溜池山王で銀座線に乗り換え京橋へ。銀座線の車両が真っ黄色に生まれ変わっていて驚いた。
 
 
15時からのギャラリートークに間に合うよう、ブリヂストン美術館へ。
喉がかかわいていたので、プラチナの「PEN STATION Museum & Café」のテラスで一服。京橋はあちこちで工事中だった。時間があれば2階の万年筆ギャラリーも見たかった。

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ブリヂストン美術館で開催中の『ウィリアム・デ・クーニング展』は、日本初公開の27作品を含んでた。

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 オランダ生まれだけどアメリカで活躍した、ジャクソン・ポロックなどと同時代の、抽象表現主義の作家だそうです。初見の画家さん。
 
 
学芸員さんによるギャラリートークは密度の濃い内容で、たいへんためになった。一人で鑑賞していれば見過ごしたようなポイントや、印刷だときっとわからない細かな差異がクリアーになって得した。
 
 
1950年代と1960年代に描かれた「女」シリーズが展示の核。個人のコレクターによる収蔵作品が主でした。ジョン・アンド・キミコ・パワーズコレクションは、今回の展示会以外でも日本の美術館に多大な貢献をされているそう。かっこいいぞ、個人コレクター。
 
 
彼の作風は、抽象と具象の間と言われてるそう。明るい色彩で、鋭角的ではない丸みのある曲線が多用された、一見すると何を描いているのかわかりにくい絵。
 
 
女性を描いているのは何となくすぐわかる。ただし、外見からその中身についてはわかりようもないことを表すかのように、わかりにくく、ぐちゃぐちゃに描いている。内面を捉えない限り、表層に表れてくるものもグチャグチャ。
 
 
抽象と具象の間を自分流に解釈したらそんな感じ。
 

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このブリヂストン美術館は、観客の入り具合といい規模といい、こじんまりと静かでとても居心地がいい。
 
 
再訪が許される距離に住んでいたら、再訪して、あーでもないこーでもないと、首をひねりたいところ。

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(夜の浅草。そういや酉の市ももうすぐだね)
 
翌日は上野の西洋美術館へ足を運び、『ホドラー展』へ。

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日本・スイス国交樹立150周年記念だそうで、館内ではスイス菓子も売られてた。商魂たくましいな。

 

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平日でも人の流れが絶えない上野公園。東京文化会館は工事中だった。東京、あちこちで工事中だね。

 
 
当初は観る予定ではなかったけど、『デ・クーニング展』を見て、明るい色を使った絵をもっとたくさん見ておきたいと思ったので、急遽見に来た。

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 最初にホドラーの絵を見掛けた時には、きれいな景色をきれいな色使いで描いていて、つまんない絵だな。不遜にもそんなことを思った。
 
 
画家の人となりは、作品と切り離して考えたい。でもその人となりを知ってしまったら、虚心には見られない。
 
 
ホドラーさん、割と厳しい人生送ってきた人。そうした人生の試練が、ごく薄ーく、言われなければわからない程度にしか作品に反映されてないところが良かった。
 
 
試練を経ても、暗い面だけを見ずに明るい方を見て、観る人の気持ちも明るくなるような、色彩あふれた気持ちのよい絵を描いた。光を追いかけた。
 
 
そう思うと、きれいな景色をきれいな色使いで描いた絵が、たまらなく魅力的に見えてきた。精神力強くないと、そんな絵は描けないから。余計なこと考えなくても、淡い色合いのグラデーションは、観ていて大変に心地良かった。
 
 
ホドラー展の後は、浅草に戻って水上バス乗り場へ。

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浅草から浜離宮片道コースで汐留に向かう。
 

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 最後尾でベストショットを狙えるような場所に陣取っていたら、次々にカメラのシャッター押すよう頼まれた。。国際親善の一環と最初は応じてたけど、きりがなかったので、途中で逃げ出した。

 

浜離宮、観光客しかいないような場所。

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(手前が江戸、向こうはTOKYO BIG CITYな景色)

 

猫もそこかしこに。やたらと毛並みがいいのは、餌に恵まれてるからか。築地まで遠征できそうでもあるけど、猫の行動範囲ってどのくらいなんだろう。

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パナソニック汐留ミュージアムで『ジョルジュ・デ・キリコ展』を観賞。

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美術館の規模のわりには観客が多かった。キリコの知名度はやっぱり高い。
 
 
キリコの絵、今まではどこか「怖い」というイメージがあった。けれど今回は、各時代の代表作の展示ということで、怖いイメージを一新するような作品もたくさんあった。イタリアの大富豪宅にありそうな、赤い壁に展示してるところも影響してるかも。
 
 
シュールな絵が多く、何を描いているのか一目瞭然でありながら、何を表現したかったのかはさっぱりわからない。ひとつの作品について、きっと話し出したら止まらない、弾丸トークがさく裂しそうな絵が多かった(注:個人の感想です)。キリコ本人は「謎のほかに何を愛せようか」と好んで言ってたらしい。
 
キリコ、怖い人から、変な人に印象が変わった(注:あくまで個人の感想です)。
 
キリコまで来ると、さすがに4つ目の美術展ということで、こちらの感性も相当鈍ってしまっていた。
 
 
汐留を後にし、昭和感あふれる新橋へ、ひと休みできる場所を求めて移動する。

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 (上のビルの一階に小川軒が入っている)

 

ニュー新橋ビル。初めてきたけど面白いところ。

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館内に入った瞬間から食欲を刺激する、美味しそうな匂いが充満してたけど、その大元はここだった。ロメスパのお店「ムサシヤ」。
 
ジューススタンドやゲームセンターがあったり。もうこんな空間は、日本中探してもここにしか残ってなさそうな、不思議空間だった。
 
 
再開発されるそうで、次に来た時には果たしてどうなっていることやら。

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『喫茶フジ』でひと休みした後、羽田へ。
心から愛する雑誌『ミーツリージョナル』で見て以来一度はと思いつつ、デモデモダッテで来られなかったお店。観光客になって初めて入ることができた。最後はほうじ茶が出てくるサービスも、昭和の香りいっぱい。
 
 
生活する街だったら、行かないし楽しくない場所でも、観光客目線なら楽しめる。観光客だから楽しめること、全国を探せばもっとありそう。
 
 
東京食べ物紀行はこちらのエントリーで。

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