クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

キングスマンとスパイとプライベート探偵

現代のスパイは労働者階級出身

昨年見逃して残念に思っていた映画『キングスマン』を、動画にて視聴。今さら遅いけど、映画館の大きなスクリーンでこそ見たかった。大迫力のアクションシーンの数々は、その方がもっと楽しめたに違いない。


『キングスマン』予告編

『キングスマン』は、イギリスを舞台にしたアクションシーンいっぱいのスパイ養成物語。スパイ養成係、教育係となるのは、昼間は高級テーラー(紳士服店)を営む紳士ハリー。スパイ候補生は、労働者階級のオニーチャン、エグジー。実はエグジーの父親がスパイで、コリン・ファース演じるスパイ紳士ハリーの盟友だった。

 

エグジーが絶体絶命のピンチに陥った時、助けにかけつけたハリーにスカウトされ、そのままエグジーもスパイの世界へ。果たしてエグジーは立派なスパイになれるのか!?という感じでストーリーは進む。

 

エルガーの『威風堂々』のメロディーに載せて、映画史上もっとも愉快に違いない大量虐殺シーンが繰り広げられるなど、面白ポイントもいっぱい。現代のスパイが戦う相手は“ならず者“ってあたり、時代はもはやジェームスボンドからジャック・バウアーなのさって感じでいい。と、語りたいことが温泉のように次から次へと湧き出てくるけど、語りたいのはそこじゃない。

キングスマン(字幕版)
 

大沢在昌のアルバイト探偵シリーズを思い出した

大沢在昌には、新宿鮫シリーズより先に生まれた人気シリーズ“アルバイト探偵”があった。アルバイト探偵と書いて、「アルバイト・アイ」と読ませてた。1980年代後半から1990年代前半とずいぶん前に読んだものだから、記憶だよりで書いてる。新宿で探偵を営む男性の息子、高校生の隆(りゅう)が主人公。ちなみに父親の探偵は冴木涼介という名前で、シティハンターとよく似た名前。

 

スケ番が登場したり、今読むときっとツラい部分が多過ぎだけど、基本は明るい不良青少年によるハードボイルドちっくコメディ。父親がだらしないから高校生の隆が探偵業に狩り出されるので、アルバイト探偵。

 (角川文庫版では、かつてのタイトルが改題されているので、何がどれやらさっぱりさ)

実は隆とその父親は本物の親子じゃなくて、隆の父親か両親双方と冴木が友人だったはず。隆の親が命を落としたのは、国際謀略に巻き込まれてのこと(記憶だよりなので不確実)。ソ連が解体されて間もなく、鉄のカーテンも開き始めたばかりの当時では、そこそこ説得力のある設定だった。

探偵が解決するには手に余るような案件も飛び込む、隆と冴木の日常には、国際謀略めいた事件も持ち込まれ、隆、大活躍。大活躍する隆に目をつけるのは、国際謀略の筋の人。「君、スパイにならないか?」と隆に持ち掛ける。

 

という話が収録されていたのは、シリーズのうちどれだったのか。まったくタイトルが思い出せません。

 

日本のスパイ候補生は、留年がイヤでスパイを辞退する

・国際謀略の裏側楽しいよ?

・スパイってかっこいいぜ

・女にも不自由しないぜ

確か口説き文句はそんな感じ。それに対する隆の答えはNO! ぶら下げられたニンジンには目もくれず、「留年したくないから学業、平凡な学生生活に戻る」でスカウトしたスパイはボーゼン。

 

東西冷戦で体を張って暗躍したスパイはスリリングな毎日が忘れられず、平凡な日常がおキライ。隆の選択にも散々文句言ってたけど、東西冷戦が終わってバブルの残り火も燻っていた当時の若者としては、隆の選択は至極まっとう。命を危険に晒さなくたって、お金にも異性にも苦労しなかったら、安全で平和を選ぶのは腑抜けではなく現実路線。だったのよね、1990年代初頭の当時は。

 

キングスマンの若者は、スパイを選ぶ

一方キングスマンでは、労働者階級出身の気のいいオニーチャン、エグジーはスパイになることを選ぶ。途中脱落しかかるけど、最終的には自分の意志で“ならず者”との闘いを選ぶ。エグジーもその母親も、ならず者には散々悩まされてきたから。階級からの脱出を果たさない限り、ならず者には悩まされ続けるから。

 

そしてスパイのような体力勝負の過酷な任務にも、ハングリー精神旺盛だからついていける。ついでに教科書的知識よりも実践的な知恵が豊富だから、知的な上流階級出身者にも負けない。階級からの脱出を図り、お金にも異性にも不自由しないためには命がけ、スパイになる方が手っ取り早い。

 

それが、2010年代の気分なのね。。時代が巻き戻ったようでイヤねーということが言いたかっただけの文章です。

 

国際謀略や政治的理由で親と生き別れる子供、フィクションの中ではやたらと見掛ける。もしかして、みんなで同じ設定使ってクルクル回してるんじゃね?という一抹の疑惑も抱きつつ。

 

お休みなさーい。