クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

藤原とうふ店

駐車場に車を停めたら隣にハチロクがいた。ボディには「藤原とうふ店」のロゴ入り。きれいに磨き上げられていたけど車内には生活感もあって、宣伝用とも違うようだった。思わずじっくり眺めてしまった。

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(本文と全く関係のないイメージ画像)

 
カ クカクとしたボディは、流線形により近づいた、今どきの丸まっちいデザインとはまったく違う。走行距離は何万キロを走ったのか、初度登録から一体何年経ったのか。ガワだけが当時のままで、中身はすっかりやりかえ、レストアしてるのかもしれないけど。そうだとしても丁寧に扱えば、走ってなんぼの道具でも、耐用年数を超えて生き残るものなんだ。そう思って感心した。
 
 
つ いに販売終了となるランサーエボルーション。フェアレディZ、ユーノスロードスターにNSX、シルビア。名車と呼ばれる車は他にもたくさんあるけど、「ハ チロク」なんて愛称までついて、車名プラス型式でビンゴで記憶されてる車なんてそうはない。初度登録から10年走行距離10万キロが、リリースの目安。か つてはそうだった。20万キロ走って乗り潰す人もいるし、初度登録から10年越えても車検が1年になることもない。車の性能も上がれば、車まわりのメンテ ナンス技術も上がった。寿命が長くなってる。
 
 
「若者の車離れ」なんて言われて、車が売れてないのかと思ってた。実は減ったのは新車登録台数で、中古車の登録台数を足せば、車の登録台数は今でも増え続けてる。そんな記事を最近どこかで見た。(車が何台売れたのかは、陸運局の登録ベースで考える。)
 
 
車の寿命が延びたから、実用目的で購入する人は、ピカピカの新車じゃなくても一向に気にしない。うちの車も中古で買ってる。雪国での運転には不慣れなので、 いつぶつけてもいいように中古にした。さらに言えば車検に合わせて買い替えたので、色さえ選べず在庫の中からテキトーに選んだ。
 
 
「走る」という基本性能さえ満たしてくれれば、新車でも中古でも一向に構わない。実用志向におサイフの事情が加わって、中古で間に合わす。そして、新車が売れない。あらこれって、ブックオフのおかげで新刊本が売れなくなった出版界みたい。
 
 
中古市場もあれば電子書籍もある。さらにいえばレンタルや同人誌もある。販売チャネルが多様になって、本そのものは出版点数が増えている。にも限らず、新刊本を出す大手出版社にも著者にも利益になってない。新車メーカーの場合は世界市場が控えてるから、国内で売れなくなった分を海外で稼ぐことができてる。その流れが止まった時が怖いね。海外で稼ぐこともできなくなって、新車も売れなければ、国内で生まれた新しい技術が先細る。
 
 
いいモノ作りすぎ。いいモノあふれすぎ。
 
 
今 年の本屋大賞の候補作も、どれもこれも大作ぞろいでほとんど読めてない。本当にいい本、いい小説には魂をもってかれてしまうので、日常生活に支障をきたす。読了するたびに魂持ってかれたら、たまらない。出版界隈の場合は、日本を飛び出して海外市場に売れれば前途も明るい。海外がいいモノの受け皿となる可能性大。
 
 
ついでにもっと軽く、サクッと読めるものプリーズとほざいた時用のオプションも、ちゃんと用意されている。スマホでサクサク毎日キュレーションメディアのお世話になっている。テキトーなオプションがちゃんと用意されている。
 
 
と ころが新車メーカーは、テキトーに車作るわけにはいかない。新車登録台数ランキングを眺めていると、軽自動車ランキングかと思うくらい、軽自動車が増えた。スポーツカーなんて、かすりもしない。利幅は薄いけど売れる車にフォーカスしたら、軽自動車が「いいモノ」になり過ぎて、軽ばっかり売れるようになったとも考えられる。
 
 
軽自動車は、排気量の制限がある。決まった枠の中で、より良くを目指して改良を重ねてるうちに、大変いいモノができました。それが今のランキングにも表れてる。その一方で、最高に贅沢な日本車ってナニ?と考えた時、レクサスしか思いつけない。ステイタスで乗るような高級車、あとは外車しか思いつかない。
 
 
高級車イコール無制限に最高の技術を搭載ってわけでもないけれど、安全面での新技術はふんだんに使われている。制限をなくしてエンジン回りのより良くを目指すんだったらF1を、スポーツカーを目指すしかない。ところが先進国では化石燃料の無駄使いだと言われ、F1はいまいち不人気。新車メーカーは、より一般 受けするEVやPHVの技術を競ってる。
 
 
ランサーエボルーションにフェアレディZ、ユーノスロードスターに、シルビア。かつての名車群は、制限があるものと制限のないものの開発を同時並行できる環境で生まれてる。ステイタスで乗る高級車とは別の、「走り」というベクトルがあったから生まれた車たち。
 
 
テスラはかつてのスーパーカーみたいで、カッコいい。ところがランボルギーニフェラーリと、よりどりみどりだったスーパーカーと違い、テスラに匹敵するスーパーカー級の、EVなんだけど無駄にあふれた車が他にはない。
 
 
EV はそもそもエコが出発点。エネルギー効率も、ガソリンより高くないといけない。そんな制約を受けながら、四輪という制約さえ受けないロボットあるいはド ローンやセグウェイ、そして今はまだ見ぬ「未来の乗り物」のような、制限のないものとも競争してる。そう書けばカッコ良く聞こえるかと思ったけど、いまい ちカッコいい、EVやPHVがどうしても欲しいという気持ちは沸いてこない。
 
 
自動運転にIoT。EVやPHVの先に、新しい市場を夢見てる人たちほどには夢中になれない。乗り物けっこう好きなはずなんだけど。
 
 
トヨタAE86ハチロクになるには、藤原とうふ店というストーリーがあった。藤原とうふ店を愛したのは、お給料のほとんどを、車とそのチューンナップにつぎ込むことに、疑問も持たなかった人たち。走る道具以上のものだったから、お給料つぎ込んでも疑問を持たなかった。
 
 
EVやPHVには、お給料のほとんどをつぎ込んでも惜しくないと考えるような、非合理的にのめりこむファン像が思い浮かばない。そんなファンを作るのに必要な、次世代向けストーリーは何だろう。節約とか家計の見直し?一定の効果はありそうだけど、全然魅力的じゃないし、インパクトにも欠ける。
 
 
お給料の全てをつぎ込んでも、古いライフスタイルと決別したい人のハートをつかむならどうだ。イッツアニューワールドを夢見る人のため。そんなストーリーとセットなら、非合理的な行動に出る人も案外いるかも。
 
 
お給料あるいは持てる何かをすべて投げ出したから、道具としての耐用年数を超えても愛される。EVやPHVに限らず、そんなものがあったら見てみたいし愛でるのにやぶさかじゃない。