クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

高齢化しつつも人口増な、市電が走る街

*無駄に長いので、お時間のある人だけどうぞ
 
京都で30年近く暮らしたけど、京阪電車の特急車両がまるまる一両舞妓さんで埋まるなんてありえない。そもそも舞妓さんがそんなにたくさん居るとも思えない。

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 これもJARO案件か!?キラリーンと目が光りそうになるけれど、実はこれ、札幌に建設予定のマンションの広告。
 
 
地下鉄大通駅から徒歩5分、南1条西7丁目に、総戸数116戸31階建てタワーマンションができるらしい。間取りは1DKから4LDK。大通という立地から考えても、都市型マンションとなりそう。

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(ファインシティ札幌 ザ・タワー大通公園 建設予定地)

事業主は京阪電車と、京阪電鉄不動産。鴨川と並行するように走る(そこだけじゃないけど)、関西では著名な私鉄。香里園や樟葉、あるいはびわこローズタウンといった、戸建のニュータウン開発を得意にしてると思ってたけど、今は分譲マンションにも積極的に進出してた。
 
 
しかし良く考えれば藤の森ローズセンターの例もあるから、戸建ばかりが得意なわけでもないかな。樟葉は戸建とマンションのハイブリッドな街の例でもあるから。
 
 
阪急・近鉄・京阪と、関西の主要私鉄は当たり前だけど古くから不動産開発もやっていて、それぞれオリジナルのマンションブランドも持っている。阪急沿線の高級イメージが生きてか、阪急不動産のマンションブランド「ジオ」は特に人気が高い。マンションデベロッパー大手7社によるメジャー7と同じくらい、関西圏ではワーキングクラスを中心に高い信頼を得ている。通勤に使う電車を走らせている会社が作るマンションだから、信頼感が生まれるんだと推測してる。
 
 
京阪電鉄不動産は、昨年の秋から札幌に営業所を起ち上げ、大通以外にもマンション建設を予定している。地価高騰で関西では用地取得に苦労するようになったから、比較的地価が安い札幌に進出してきたのかも。
 

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 価格設定は未定だけどきっと札幌では高額物件になるに違いない。市電の駅「西8丁目」が真ん前で、NTT東日本札幌病院や札幌医科大付属病院といった大規模 な病院が揃った西15丁目まで、市電で10分かかるかどうか。気候がよければ徒歩でもじゅうぶん歩ける距離。近隣は生活に便利な商業エリアだから、日常生 活に困ることもない。
 

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(物件から徒歩10分圏内の2015年2月某日の景色)

 この物件、道外あるいは札幌以外からの移住者、それも特に高齢者に向いてる。病院へのアクセス良好なのは、高齢者にとっての訴求ポイントだから。
 
 
札幌は、移住者にとってとにかく住みやすい。食べ物も美味しいし、適度に都会で適度に田舎。大抵のものやサービスも揃えば、観光地でもあるから娯楽にも困らない。半径5キロ以内の日々の生活に過不足を感じなければ、たいてい暮らしやすい。おまけに、東京などの大都会に比べれば、人との距離もずっと近い。
 
 
ついでにお年寄りがいるのも当たり前の環境で、お年寄りの扱いに慣れた人も多い。スパや日帰り温泉みたいなところで介助が必要そうな人が居たら、十人くらい が同時に「私に出来ることないかしら?」と、待ち構えてたりする。日用品を買うような店では、ショッピングカートに拡大鏡がついていたり、来店頻度の高い お年寄りの利便性には気を使ってるところも多い。
 
 
ネッ クは雪。ただし、街中に住めば雪国の不便を極力感じることなく暮らすことも可能。新しい建物の周囲の道路はロードヒーティングされるので、真冬でも想像以 上に歩きやすい。大通なら、地下街もアーケードつきの商店街・狸小路も近い。真冬でも買い物にも運動する場所にも困らない。

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ロードヒーティングされた道路)

雪が降るせいで、早くから配送サービスも発達してる。セイコーマートだけじゃなく、コンビニでも生鮮食品を扱っていれば、コンビニに負けじと近頃はまいばすけっとの進出がさかん。
 
 
少子高齢化最先端都市だから、高齢化に対する備えは十分。行政の敷居も低ければ、長年働いてきた実務家の高齢者も多く揃っているので心強い。ホワイトカラー のワーキングクラス、働きづくめでゆっくりする暇がなかった。そんな人が余生を過ごすのに特に向いてる。東京のように富裕層が多く住む都市と違って、人口 に占めるワーキングクラスの比率が高いから。
 
 
富 裕層が当たり前に存在する都市だと、サービス提供者側にも「特別扱い」はお金で解決という空気が生まれる。実務家として長く働いてきた人は、善意で社会は 回らないし、快適さの実装には資金力が欠かせないことも知ってる。文化的資本は、そうしたことを心得た人達によって守られてきたことも。ここちょっと脱 線。
 
 
億の財産があって語学にも堪能であれば、定年後は海外へ移住も夢ではないけれど、ワーキングクラスにとっては非現実的。子供に高等教育受けさせたらそんな余力は残らない。
 
 
サラリーマンあるいはサラリーウーマンとして、日本全国時には海外にも行く機会があった人は、都市の魅力についても相対的に考えることができる。
 
 
定 年ををきっかけに、給与受け取り都市であった住み慣れた場所を離れ、各種生活費が低く抑えられてQOLが上がる別の場所への移住が合理的であれば、そっち を選ぶはず。善意に任せれば好意の人の負担になることを知ってる実務家は、フトコロ具合に応じて住みやすい都市を選ぶ。
 
 
高齢化に直面してるから、街中の介護施設、小規模な介護施設から高齢者専用マンションまで各種揃ってる。介護や医療職でないと地元に残れなかったから、地方中核都市にある介護や医療職の方が、むしろスタッフの質は上かもしれない。
 
 
「高齢化」から「人口減少」に向かってもおかしくないところを、周辺自治体から吸い上げて、札幌に限っては人口流入による人口増が続いてる。インバウンド観光も順調で、景気いい所は景気いい。


札幌への人口集中が顕著 転入超過、全国2位 :日本経済新聞

市税収入が少ないから、財政力指数は0.692。政令市20都市平均0.844より低い19位。経常収支比率は92.3%で政令市20都市平均94.6%より低いけど7位。
 
 
財政力指数、関東圏だと上位に1以上の都市が並んでる。高所得層が”ニューリッチにふさわしい別の街”に住み替え、医療コストがかかる高齢層が取り残されたら、この数字はどうなるんだろうと想像する。高所得層がすでに別の街、例えば東京などに出て行って、高齢化が進む札幌での財政力指数は0.692だからね。固定資産税が増えたら、この数値には上乗せの可能性が大いにある。
 
 
北海道ローカルな人は、開拓スピリットもあってか、たくましいお年寄りも多い。真冬でも、スキーストックを手にどこへでも出掛けて行く。自力で何とかしようと思う人が多い街、暮らしやすい街を考えた時には、数値だけでなく、そうした”気風”も考慮に入れると失敗が少ないかも。
 
こちらのエントリーにインスパイアされて、長々と書いてみた。人口増の背景には、合理的、理性に照らして行動した人が一定数いたからではないかなと。


高齢者を東京から地方へ追い出す!? - 未発育都市

 

お休みなさーい。