まだまだ緑が目立った大通公園や中島公園の紅葉も、ここ数日でちょっとは進んだんじゃないかと思う、神無月ももう下旬。
これは先週の中島公園。イチョウはまだ青々。
八百万の神様が出雲に集うから、出雲では神在月。出雲以外では神無月で、出雲に行くなら十月と思う人が多かったなら千客万来で、客=人を連れてくるから神様なんだ。という理解はある意味では正しいはず。
ケーキにすることが多いりんごで蒸しケーキ。
蒸したてはりんごの甘酸っぱい香りが拡がって、蒸しパンのようなものだから胃にも優しい。大きめのりんごだったら半分でできる。
りんご半分、薄力粉85gとベーキングパウダー小さじ1(ともに事前にふるっておく)、砂糖は55g、卵は1個に牛乳25cc(大さじ1と2/3)。卵、砂糖、粉類、りんご、牛乳の順に混ぜ合わせ、蒸し器で蒸すこと強火で20分~30分。
りんごの皮を残した蒸しあがりはさつまいもの蒸しパンみたいで、さつまいもでもきっと作れる。レシピの量が半端なのは、本来は倍量で作るものを1/2量にしたから。もともとは『1つのボウルでできるお菓子』という本に載っていたもの。
木(おそらくはりんごの木)に登った少年が、窓の向こうにいる少女と見つめ合っている。20世紀の空想科学小説少年少女向け、最初期のライトノベル群のひとつともいえる『アップフェルラント物語』の表紙イラストには、快活そうな少年と利発そうな少女が描かれている。
少年が囚われの身の少女と出逢う、あるいは見つけるところから『アップフェルラント物語』はスタートする。
この物語にはふた組の男女が登場し、ひと組目は少年と少女。もうひと組は、少年の保護者と言っていい年齢の男性と、男性よりは若い女性。
舞台は中央ヨーロッパの小国アップフェルラント。時代は1900年代に入ったばかりの頃で第一次大戦前、日本では日露戦争の頃で、この頃地図にはポーランドという独立国はない。という時代を存分に生かしている。
昔々のジュブナイル、少年少女向けの空想科学小説の内容を今でもよく覚えているのは、時代設定・構成・ストーリーテリング、そのすべてが巧みだと今でも感心するから。
編み物が好きな女王が統治する小国が、圧倒的な兵力と軍事力を誇る大国に攻め込まれる、つまり帝国主義。攻め込まれるけれど、ふた組の男女の活躍もあって最後には小国が大国を撃退し、小国の独立と平和は守られる。つまり民族主義。
というストーリー展開が心地いいのは、日本生まれだから。
オーストリア、ロシア、ドイツそしてフランス。大国がひしめく当時のヨーロッパ大陸で、ポーランドは大国の思惑で地図から消滅してしまった。ポーランドという小国出身でポーランド再興のために動く人物、それも魅力的な女性が第二ヒロインのような立場で登場し、大国に翻弄された小国から大国を翻弄する人物が生まれるという設定が、まず感心ポイントその1。
大国に翻弄されるけれど結果的には生き残った小国アップフェルラントには、小国ならではの生き残りの知恵があった。小国が生き残るための戦略は女王が紡ぐ編み物のように気が長くて息が長く、短日月では到底真似できないものだというところが感心ポイントその2。
物語に引き込まれるというよりも、小国が生き残るための戦略というパーツがより印象に残っている。
第一ヒロインである利発な少女は、小国の未来がかかった大きな秘密を受け継いでいる。だから悪漢に狙われ、狙われた少女を少年が見つけ、少年の保護者である紳士的な男性が少女をめぐる陰謀に巻き込まれ、ポーランド再興という大望を抱いた危険人物でもある女性(容姿を裏切るじゃじゃ馬)と出逢う。という趣向。
少年少女向けだから、語り口は優しく平易。それでいて端正で、『名探偵コナン』がそうであるように、子供向けだけど子供向けに高い知性と教養を誇る人物が書いてるとしか思えない内容になっている。
作者の田中芳樹もふた組の主人公、少年ヴェルと少女フリーダ、フライシャー警部と女傑アリアーナが活躍する『アップフェルラント物語』を気に入っていたようで、書かれざる彼らが活躍する続編についてあとがきで語ってる。
快活な少年と利発な少女、良識を備えた大人の男性と大人の魅力たっぷりな非常識で行動力ある女性。というキャラ設定は、日本のサブカルチャーでは定番かつ伝統でもあるだろう。
”世界大戦”を人類が初めて体験する。その少し前に、軍事力と兵力に勝る大国に小国が翻弄あるいは蹂躙される。という設定は、世界大戦を経たあとに獲得する視点で視線。
新興国はえてして軍事大国になりがちだけど、軍事大国よりも文化大国をめざした方が、国としてあるいは民族としての生存率は高くなる。という刷り込みは、きっとこの頃、ライトノベルが誕生した頃から始まっているんだろう。
単に生き残りをかけただけなら滅茶苦茶やればいいけれど、滅茶苦茶にしたあとも国としての体裁を保てるかどうかはまた別。
快活な男の子に利発な女の子、その逆でももちろん可。そんな未来は、滅茶苦茶やったあとには生まれにくい。あるいは生まれてこないから。
(別名勝ち虫とも呼ばれるトンボが止まるバラの名前は、スーパースター。)
空想=ブラジル猫という実在しない生き物や、ほんとかな?というより本当のことなんか他には教えられない有用な科学的知識がもっともらしく語られる。空想科学小説のもっとも大事、かつ後世に伝えたいことは結局はそこなんだと思う。空想科学小説特に少年少女物そのものが細っても、その系譜に連なるものにはきっとそれが伝わっている。