十勝地方は、札幌という大消費地からすれば豊か。
北海道というより日本の食糧基地だから、その地で大規模農業や酪農を営んでいればそりゃ豊かでしょう。ということで、札幌でも気前よくお金を使っているor使っていた人達の中には十勝関係者は少なくないはず。
池田町のワイン城に、道の駅おとふけに隣接した柳月スイートピアガーデン。どちらもその地で幼少期を過ごしていれば、何かの機会に校外学習などで訪れそうな場所。大人の目線で眺めると、初心者や小さなお客さまとのタッチポイントは逃がさないし維持するくらい先を見ていて、先を見ているから豊かなんだろうとも思った。
六花亭に柳月、そしてクランベリー。JR帯広駅前は狭いエリアなのに、十勝では有名なお菓子店の本店が集まっている。砂糖に小豆、バターや生クリームなどの乳製品、最近では北海道産の小麦。
素材に困らないお土地柄。その土地柄を生かしてのお菓子造りだと思えば不思議はない。
以前行ったのは何年前だっけ?と思う池田町のワイン城。正式名称は池田町ブドウ・ブドウ酒研究所なんだとか。久しぶりに行ってみると、カーヴ(酒蔵)のようだった物販部門がずいぶん明るくなって、観光客を意識したつくりに変身。団体客が増えたか増えるんだろうなーという印象。
(街灯にはぶどう、ぶどうがかつてこの地を照らしたといっても全然言い過ぎじゃないはず)
観光客がうっかり迷い込んだりしないよう、観光の場と生産や製造の場はわりと厳しめに分かれている。という印象は、道を間違えて本来用のない道を走ったから。
十勝地方は、走りやすい自動車専用道路が整備され、トラックの通行量多めであぁやっぱりこの地は物資が行き交う場。
ぶどうジュース美味しゅうございました。ぶどうジュースを使ったアフォガード、美味しゅうございました。
柳月といえば三方六。とはいえ本当にたくさんの和洋菓子を作っているお菓子メーカーで、老若男女が贔屓のお菓子のひとつくらいすぐ見つけられそう。
ケーキ類など生菓子はカワイイを意識したビジュアルで、お値段含めて小さなお客様目線。帯広限定というきんつばの仲間のようなお菓子を自分へのお土産として買ってみたけど、あんこも美味しく和菓子も美味しいのはお年寄り向け目線。
スイートピアガーデンそのものが、値の張らないお菓子のヘビーユーザー向けで、ドライブがてらや何かの時間潰しに訪れるのにちょうどいいつくり。何てったって、隣には道の駅おとふけがあるし。
美味しいお菓子を罪悪感なしに楽しむには運動する場所も必要でしょ?とばかりに、ウォーキングやランニングなどの軽運動を楽しめる場所も揃ってる。
車社会の地方で歩ける場所には、観光客がいる。
(ここはパークゴルフ発祥の地だそうで、橋桁の模様がパークゴルフ)
例えばフライトまでの待ち時間や高速バスでの移動。長時間座りっぱなしから解放されたらまずは体を動かしたい。という長距離移動、近所ではなく遠くから来る人の目線に立つとこういう施設ができるんだろう。道の駅のフードコートには、車を停める場所に困る駅前まで行かなくても、十勝名物が味わえるようになっていた。
久しぶりに行ってきた帯広駅前には、タワマンができていた。
多分タワマンは再開発の象徴のようなもので、駅前は再開発を進めようとする街にありがちな賑わいの偏在があって、食事するにもどの店に入ろうか迷うくらい。
だから道の駅などの団体客を受け入れられるような場で胃袋を満たせるようになっているのは観光客フレンドリーで、胃袋や財布が小さなお客様への選択肢があるのは多様性の現われなんだと思った。
JR帯広駅前から、木陰を作る並木道の下を選んで十勝川、十勝大橋を目指して歩いてみると、賑わいの偏在などなかったであろう少し昔の街の骨格がくっきりはっきり。片道2㎞ほどウォーキングすれば、豊平川河川敷によく似た十勝川の河川敷にたどりつく。
豊平川の河川敷がそうであるように、こちらの河川敷にも先人の遺した”立派な街を作ろう”あるいは”立派な街を作りたい”で遺された痕跡にもめぐりあう。
(星模様が珍しい、河川敷の石段。神は細部に宿って星をたくさん従えていると、細部だけでなく全体も整うのかも。かもかも。)
北海道は、日本のどこよりも新しい都市。
だから、本州のように江戸や鎌倉あるいは平安といった時代を感じさせる歴史がないだけに、比較的新しい時代、近現代の歴史がよく残ってる。
それがソフトでもハードでも。何らかの財を為した人たちが、誰はばかることなく立派なもの、街や何かを築こうとした。地面のお値段や利権や規制、何かと枷の多い本州ではできないスケールで何かを築こうとした。
その種の痕跡(今となっては遺構)を見つけると、わりと単純に感動するし感心する。
立派な橋や道路に公園や運動公園に商業施設。街に賑わいがあると得するのはその街に住む人だけど、賑わいがあり過ぎると生活はし難くなる。
例えば東京、例えば大阪。大都市はいつでも賑わっているけれど、大都市ほど生活はし難くなる。生活はし難いかできないけれど、不動産としては価値があるから生活する人だけが減っていく。
そんな大きな街に住みたかったわけじゃないし、小さな街じゃないとできないことばかり増えていくなら小さな街に帰りたい。
という声が必ず一定数出るから、北海道だけでなく日本各地に、この種のその地で生活する人こそ住みやすい街を築こうとした痕跡が見つかるんだろう。
JR帯広駅前から、夏のきつい日差しを遮る(←農場にはきっとない)並木道を抜けると眺望の開けた十勝川の河川敷。河川敷から眺めるとこんもりと緑が茂った鎮守の森で、”普通に生活しやすそうな街”を新しく作るための費用と労力を知って思ったとき、自然と頭が垂れるようになり、フロンティアは本当に偉大なんだと実感するんだろう。
それが徒歩でもランニングでも。時には車でも。
フロンティアが残した基礎を見つけて残した遺物を辿る。いってみればフロンティア・トレイルは”新しい”場所だからできて意味のあること。
権力構造が変わり、権力者が何度も入れ替わって歴史も文化も何度でも書き換えられる古い場所では味わえない、Primitive(←いい意味で使ってる)としか言いようがない感覚が味わえる。