クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

ラフィットやムートン以前

出自は非主流どころか、はっきりいって傍流。

 

傍流で非主流だから名誉からは遠く、稼ぐしかなかったから財を築いた。今となっては名家で名門の仲間入りを果たした一族が、どのようにして築いた財を子孫に繋いでいったのか。

 

今となっては、「成り上がり」なんて到底思えない。祖業である金融業よりも、ワインの銘柄としてより著名かもしれない一族の歴史は、金融技術の進歩と進歩した金融技術の有効活用、そして築いた財の使い方指南でもあって、ケーススタディ歴史上のセレブ版。

 

著名だから、とおってもお高そうなラフィットにムートン。

 

グラスを傾ける人が、とおってもお高そうな赤ワインの作り手についても詳しくて、富豪へと駒を進めた時代背景とともに軽―く持てる知識をチラッとひけらかしていると、グラスを傾けるその人の株も上がりそう。

 

複雑な国際関係も複雑な人間関係も、一点突破で何者かにフォーカスするとよりわかりやすい。

 

ツケ払いは、ツケを受け取ってくれる人がいるからツケ払いにできる。先日付で振り出される小切手も手形も、いってみればツケ払いの亜種。ニコニコ現金払いだけで回る世界は小さくて、そもそも小さな世界でツケ払いが横行するとロシアンルーレットになって、ただでさえ小さな世界がもっと小さくなる。

 

金融技術の進歩は、シュリンクしがちな小さな世界を大きくする。

 

ロスチャイルド家の始祖マイヤー・アムシェルは、フランクフルトのユダヤ人街からそのキャリアをスタートさせる。イギリスで振り出された小切手の割引という、国際金融というにはあまりにも地味~なお仕事からのスタート。

 

地味~なお仕事ながら、なぜ振り出しがイギリスなのかにビジネスを飛躍させるヒントがあり、チャンスを逃さず金融業者として発展していく。

 

時代は、フランス革命が起こり(ということは、アメリカ独立戦争も影響する)ヴィクトリア女王やナポレオンが登場し、ビスマルクドイツ帝国まで登場する、どこを切り取っても絵になりそうな、役者の揃った動乱期。

 

動乱期だから秩序が崩れて新旧が入り乱れ、傍流から成り上がったロスチャイルド家が、国家の危急を救ったりする。

 

国を救うということは、国家の上に乗っかっている、有象無象の人を救うこと。

 

かつては金融の名門として国際的に活躍した名家が、今では高級ワインとなって有象無象の人の喉を潤している。その関係性は、救われた有象無象の人たちからかつての名門への恩返し。と、思えなくもない。

 

よきイメージは、よき関係性から生まれてくる。だから、ロスチャイルドで喚起されるかつての悪いイメージは、よき関係ではないところから生まれてきたのかも。

 

中世ヨーロッパでは、ローマ教皇位さえお金で買えたかのイメージを抱きがちで、前近代は総じてそう思われがち。

 

聖と俗がどれほどズブズブでなぁなぁになって、財力があれば高位高官の地位が買えたとしても、彼らが高位聖職者の地位に就くことはありえないことだった。

 

という現実からスタートした彼ら(の一族のうちのひとり)がやがて男爵に叙勲され、ついには皇帝の宮廷にも出入りするようになるほど、時代は変わる。階段でも山でも、上るばっかりではなくやがて下る時が来るのは間違いないんだけど。

 

動乱期は、見通しがきかない。明日にでも終わりそうにみえるから、つい利益確定を急ぎたくなって、慌てがち。慌てて利益確定に走らなくても、現実は途切れることなく続く。

 

そういう一族が、そういえば居たよね?ではなくて。今でも続いていて、壮健。始まりはどうであれ今となっては大樹で、見通しがきかない時はみな大樹に寄っていく。ブランドの価値がますます上がるのは、そういうことなんだと素直に実感できた。

 

下戸でもその名を知っている、ジャンル外にもその名が届いているから、ブランドになれる。情報量が多いと、お高くても高さが気にならない。惜しみなく情報を大盤振る舞いできるのは、すでにブランドだから。

 

学ぶことが多いと、脳内へぇボタンも活性化。チラッとひけらかされた知識のお値段、kindle版だとたったの770円で、気前がいいからきっと景気もいいに違いない。