日本で最大規模のグルメサイトによると、昨年札幌でオープンした飲食店は600店なかば。口コミのなかには大規模チェーン店の新規出店も含まれるので、純粋に新しくお店を出した例となると、きっともっと少ない。
最近は、新しくお店がオープンしても口コミサイトには載らない(お店が掲載を望まない)ケースもあるから、実際にオープンしたお店の実数は、グルメサイト単体では掴みにくい。とはいえある時点までは確かに、新規オープンする飲食店の情報を、グルメサイトがほぼ網羅してる時があったと思ってる。
だから、新規オープンしたお店とその後の情報までぎっしり詰まったグルメサイトは、今ではグルメサイトというよりデータベース。
どこにどのような業態でオープンしたお店が、どのようにどれくらいの期間で人気店になったのか。あるいは人気店とはいえないけれど、新陳代謝の激しい飲食店業界で、とにもかくにも営業を継続しているお店のリストが詰まったデータの山。
中の人なら、もっといろんな角度からの分析もできるはず。すでに分析したデータを持っているから、「何かお手伝いできることはありませんか?」ではなく、「そちらに足りないのは、○○と△△。○○と△△を足したいという意欲はありませんか?」という提案もできる。
データがあれば、もう御用聞きはいらない。
「何かお手伝いできることはありませんか?」と戸別訪問しての御用聞きは、楽しいお仕事じゃない。データさえ揃っていれば、もう楽しくないお仕事からは解放され、その代わり、他のことに集中できる。
勝者が総どりできるのは、コツコツ自力で蓄えたデータがあってのこと。自力で蓄えたデータはないけれど、代わりにお金出して買うことができたら、大量のデータも自分たちのもの。
お金さえ出したらなんでも手に入るというのは、とってもフェアな状態で、札束をいくら積んでも買えないものがあるのは、アンフェア。
とはいえコツコツ自力で蓄えたデータを、一体誰に渡すのか。そこにあるデータは、そもそもお金に代えることなんて夢にも思わずただ楽しみのために集めたものだったら、お金に変える気満々の錬金術師には渡したくないと思うのは自然。
そもそもお金に変える気満々で、いつか買い手が現れるのを待ち望んでいたら、お金に変えましょうという提案は地獄に仏で渡りに船。
そもそもお金に変える気なんてまったくない、ただ楽しみのためにコツコツ自力でデータを蓄えられる人が誰かも、データを見れば一目瞭然。ただ楽しみのためにやっている人は、そのデータが市場利用されることを知ったら、データを提供することを辞めてしまい、また別の、ただ楽しみのためだけにデータを蓄えられる場所に移動するもの。
その心理を利用すれば、すでに貯まり切ったデータを商業利用し始める場から、これから生データの宝庫としたい場所へと移動させるのも簡単。
市場と相性が悪い人は、市場とは極限まで距離を置き、市場ファーストで脳内が染め上げられた人は、どこであろうと市場ファーストを持ち込んで、“ただ楽しみのためだけ”勢を駆逐する。
余裕がないのはどちらかなんて、一色、独占をめざす人に決まってる。
脳内が市場ファーストで染め上げられた人は、世の中にお金で買えないものがあることが許せないタイプかもしれず、それは「お前には売ってやらん」と言われ続けた経験から来るものかもしれないから。
プライスレスなものは、最初から最後まで市場には馴染まない。
大事にしていたプライスレスな何かをすっかり破壊された人が、本来値段のつけようもないプライスレスなものに逆に値段をつけ始める光景は、どこかゴジラ大暴れっぽい。