クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

主人公にするなら、もっと他に魅力的な人物が居そうなものを。。

4人分が標準だったレシピの分量が、2人前になったのはさていつだったか。当たり前は、いつの間にかこっそり当たり前じゃなくなってる。これが標準と大きな声で言い触らされている頃がピークで、あとは下り坂。

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桜咲く。

クィスリングといえば売国奴のことで、quislingとして名詞にもなっている。彼が売った国はノルウェー、売った相手はナチスドイツ。名詞にまでなるくらいだから、当時は悪役として相当著名だったことが伺える。

 

悪名は無名に勝るで、国を売った人の名前は後世まで広く国際政治上に知られているけれど、売られた国の王様のことは、あんまり知られてない。本国ノルウェーでは、例えば大石内蔵助並みに著名っぽいけれど。売られそうになる国を最後まで守ろうとした、ノルウェー国王を描いた『ヒトラーに屈しなかった国王』見てきた。

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さくらだ。

ノルウェー国王ホーコン7世、ノルウェー独立時に国王として(多分)デンマークから迎えられ1905年に即位。という事実がまず、全然わからない。

 

お兄さんはデンマーク王クリスチャン10世だから、きっと生まれ育ったのはデンマーク。当時のノルウェーは、スウェーデンとの同君連合だったと言われても、何のことやらサッパリ。

 

歴史的背景については何のことやらサッパリだったので、映画を見た後に『物語 北欧の歴史 モデル国家の生成』で学習して、知ったかぶり。ナポレオン戦争後の近代北欧の歴史なんて詳しく知らないから、群雄割拠して独立を経て、民主主義(あるいは民族主義)が盛り上がって立憲国家となったノルウェーは、所縁ある国から王を迎えて国王即位。という、これは豆知識。

 

このあたりの経緯は、日本のいまはひとつの県だけど昔は複数の藩だったこともあるという経緯や、地理的に近い藩は、文化的にも近いことは多いけれどその一方で諍いと婚姻による融和も繰り返されていたと思えば納得。そう思うと一気に理解も進む。

 

ノルウェー国民投票で選ばれての即位という経緯が、のちのちとっても重要になるポイント。ノルウェー独立後の立憲君主制において、初めて民主的に選ばれた王様。この事実が、後のホーコン7世の行動を縛る。「初めて」という事実は、重いんだ。

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中立国であったノルウェーに、1940年ナチスドイツが侵攻。侵攻からの3日間を、136分という長尺で描く。長ぇよ。。

 

長さを感じさせないわけでは全然なくて、ナチスドイツの侵攻により首都を離れ、逃げ惑い、降伏を受け入れるべきか否か悩む国王と国王一家と数少ない部下の姿が、ただただ不憫。

 

だって中立国だもの。

 

爆撃にあったら慌てて外に飛び出し逃げ惑う姿には、防空壕どうした!?と思うけれど、だって中立国だもの。そんな準備、あるわけない。

 

ナチスドイツを迎え撃つことになったノルウェー兵も、見るからに訓練不足でマジマジここが戦場になるの!?マジ???という戸惑いがリアル。だって中立国だもの。戦力でも場数でもかないっこない相手を前に動揺するのも、中立国だから仕方ない。

 

内閣は早々に総辞職し、立憲君主国で君主だけ取り残されたらどうすんのさ???おまけに次の首班を狙うのは、親ナチスドイツな後の売国奴

 

個人の人生の充実と引き換えに、大多数の国民を混乱と不幸に巻き込む人物に国を託すべきなのか?民主主義が芽生えたばかりのまだ若い国で、民主主義の芽を摘まないためにはどうすればいいのか?というケーススタディとして見ると、とても興味深かった。

 

悪名は無名に勝る人物を主人公にすると、きっともっと面白くなりそうな時代背景で、敢えて逃げ惑い、判断に悩む一見凡庸にも見える人物を主人公に据えるのは、どういう意味があるのか。と、勝手に問いを立てて、脳内シュミレーションがはかどった。

 

そこが故郷ではなくても、国民に選ばれた王だから、そう簡単に国を捨てるわけにはいかない。早々に立憲君主国の国王としての職務を投げ出してしまっては、悪しき先例となって後世と一族への汚点となるかもしれない。

 

という投げ出すに投げ出せない職務の重さに比べれば、総辞職してハイさようなら!と、一民間人に戻れる内閣の職務は気楽な稼業ときたもんだ。なんてことは、言ってはいないけどさ。

 

立憲君主制における、国王って何なのさ。権利放棄が認められるまで義務がつきまとうなら、地主?地主で権利放棄するまで未来永劫その土地について責任を持つから、クリーンな土地のままで次世代に渡すことにこだわるのかとか。ケーススタディとして、ほんといい教材。

 

でも、最後の方で出てくるナレーションは、あまりにも簡単に結論出し過ぎでいただけない。センスない。この教材にしてそのナレーションかよと、がっくりきた。立憲君主国の君主のいっちゃん大事なお仕事は、一体なんなんすかね。不遜ながら、現代においては広告塔であることはまず間違いないけれど、「何」を広告するのかは、きっともっと大事。

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気温、上昇中。

お休みなさーい。