クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

タイトルでとっても損してる『ウエイトレス~おいしい人生のつくりかた』見た

昨夜は大統領就任式を見るために夜更かししたあと、見事にソファで寝落ち。おかげで、朝起きたら喉と頭が痛くて風邪っぽい。

 

歴代大統領が集結しての、4年に一度のポリティカル・エンターテイメントショーかつ政治版スーパーボウルっぽい。やっぱりあの国はショー・ビズが国技なんだねと思わせる。ピンで見ることの多い政治家の皆様が、一堂に会すると“体格の良さ”も丸わかりで、ノッポさん揃いのトランプファミリーは、まるで巨人族のようさ。

 

トランプ大統領いうところの、「忘れられた人たち」ってこんな感じ?と思う人物を主人公にした映画、『ウエイトレス~おいしい人生のつくりかた』を見た。

 邦題でめっちゃ損してるけど、そもそも原題も『Waitress』なんだよな。。直球勝負すぎる。キャッチ―なタイトル大事、めっちゃ大事。

 

主人公のジェナは、車がないと生活できない田舎のカフェで働くウェイトレス。パイ作りが得意で、愛想よし。同僚とも仲が良く、気難しいオーナーや店長のあしらいも上手。なのに、粗暴な夫アールの扱いだけは上手くない。

 

夫婦仲は円満とは言えず、アールから逃げ出したいと思いつつも、失敗続きのジェナ。おまけに妊娠も発覚し、ますます人生八方塞がりなところで、担当の産婦人科医ポマター先生と恋に落ちる。ふたりの仲を取り持ったのは、マシュマロパイ。相手も既婚者なんだけどさ。さて、ジェナの運命はいかに?

 

というあらすじは、多分ストーリー的にはさして目新しいものでもない。でもさ、夫からも退屈な環境からも逃げられない人は、目新しいものもない、退屈な日常を生きているもんなんだよ。

 

パイが得意な女性は、生粋のアメリカンガール(あるいはウーマン)という偏見持ち。

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(これはシロノワール

ジェナが作るパイはどれも大変美味しそうで、目の保養になりまくり。辛いことがあると、“パイの新作レシピ“に逃避するジェナのことだもの。そりゃ美味しいにきまってる。たかがパイとはいえ、ある意味人生を賭けてる作品だから。

 

乱暴な夫アールは、「俺のためにだけパイを焼いてりゃいい」と、ジェナを家庭に閉じ込めようとする暴君。車がないと生活できないエリアなのに、逃げられることを恐れ、ジェナには車さえ与えようとしない。その代わり子供扱いで送迎には熱心で、そのアンバランスさに、自信のなさが丸わかり。

 

自信のない男性は、えてして女性に対して暴力的かつ束縛的になって、結婚後に豹変して釣った魚に餌はやらないとこも、だいたい万国共通。

 

この映画、ライトなコメディタッチで進行するけど、描き方を間違えたらズドーンと重たいものになる。重いのは現実だけでもう十分だと知ってる人は、ユーモアのスパイスをまぶして、面白おかしく仕立てあげる。テーマとして選んだ対象に、優しいんだ。

 

さして面白いことが転がってるわけでもないのに、笑顔を強いられる人たちに対しての優しさがいっぱいで、そこがこの作品のいいところ。とびきり後味がいい。

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望まない妊娠だとはっきりと口にするジェナが、豹変するところが見もの。人生を分かち合いたい相手は誰なのかがはっきりした時が、ターニングポイントで、人生が好転する瞬間なのさ。

 

気難しくて、他の人には嫌われていたカフェのオーナー、オールド・ジョーの、年寄りならではの粋な計らいもいい。

 

年寄りには年寄りにしかできないことがあって、粋なプレゼントを贈る相手を間違えないあたりにも、きっちり年の功が現れている。

 

ジェナにとってのオールド・ジョーが、全米に増えたらそりゃ彼の国の復活も間違いなしで、「忘れられた人たち」が望むものをきっちり描いてた。

 

とはいえ、忘れられた人たちの半分でもある、夫アールや、あるいはジェナ達が働いていたお店はどうなるのさ???という疑問は置いてけぼり。だってこの映画のタイトルは『Waitress』で、語り得ぬもの、処方箋を持たないものについては、大胆にカットしているので、万人向けではきっとない。

 

小難しいことはなーんにも考えたくない時に最適な、コージーな作品。何よりどのパイも美味しそうだったところがいい。緑にブルーにどピンクと、日本人的にはあり得ないカラーリングであっても不思議と美味しそうだった。

 

お休みなさーい。