いくらワンピース歌舞伎が面白いと評判でも、地方都市カンケーないし┐(´ー`)┌
どうせ東京だけのお楽しみでしょと思ってたら、そのうち地方都市でも見られるようになるらしい。シネマ歌舞伎に姿を変えて。
月イチ歌舞伎の第一弾、『歌舞伎NEXT阿弖流為<アテルイ>』見てきた。
アニメからエンターテイメントに入った人にも、優しい作品
ワンピース歌舞伎と同じく、オリジナル脚本による新作。はっきりいって、ものすごーく面白かった\(^o^)/ 月イチ歌舞伎の第一弾だけあって、気合入りまくり。
市川染五郎×中村勘九郎×中村七之助と、これからの歌舞伎界をしょって立つ、スーパースターのそろい踏み。エンターテイメントとしての歌舞伎の面白さを、これでもかと詰め込んでた。
あらこれ市川猿之助のスーパー歌舞伎みたい。京都の南座で『三人吉三』や『藤娘』くらいは見たことがあり、歌舞伎ってこんなもんでしょという知識があってもびっくり。思い込みを、きれいに裏切ってくれる。
めいっぱいエンターテイメントに振り切った作品。退屈する間もなし。主役を演じるのは若手の3人だから、伝統芸能とは思えない元気のよさで、舞台の上を動き回って、走り回る。
1回の舞台3時間で、何キロ体重落ちるのか聞いてみたい。若さっていいな、体力あるな。アクションシーン満載で、チャンチャンバラバラやってる。
阿弖流為といえば、大河ドラマや小説にもなっている、実在の人物。北の蛮族の国、蝦夷の軍事的指導者。大和の敵。『歌舞伎NEXT阿弖流為<アテルイ>』では、北のオオカミ・阿弖流為を染五郎が、都のトラ・坂上田村麻呂を勘九郎が、二人の英雄と因縁を持つ謎の女・立烏帽子を七之助が演じてる。
蝦夷に立烏帽子だから、遠くかすかにジブリの影も見え隠れする。神様なんて、まさにジブリっぽい。だから、歌舞伎が初めてでもきっととっつきやすい。アニメからエンターテイメントに入った人にも、優しいんだ。
連続ドラマ6回分を1回の舞台に詰め込んだかのような、超濃厚なストーリー
朝廷に抗い続ける蝦夷の長・阿弖流為は悪か、それとも民を守る正義か
古き時代。北の民 蝦夷は国家統一を目論む大和朝廷に攻め込まれていた。そこに、かつて一族の神に背き追放された阿弖流為が、運命の再開を果たした恋人 立烏帽子と共に戻り、蝦夷を率いて立ち上がる。
一方、朝廷は征夷大将軍に、若くとも人望の厚い坂上田村麻呂を据え、戦禍は更に劇化していく。戦いの中で、民を想うお互いの義を認め合いながらも、ついに2人が決着をつける時が迫り来ようとしていた。
3時間によくおさめたな!と感心するほど、濃いストーリー。北のオオカミと都のトラ。ヒーロー二人が最強の座をめぐって戦うだけでなく、それぞれ裏切りや罠にはまって窮地に陥ってくれるからハラハラ。
二人ともいい人でイケメン設定なんだけど、イケメンだからといって、運命の女神はたやすく微笑まないところがいい。そこに謎の女・立烏帽子も絡んでくるから、ますますややこしくなって、ワクワクできる。
ややこしいけれど、そこはやっぱり舞台で歌舞伎だから、映画とはまた違ったストーリー運びで、時にはバッサリ枝葉をとっ払って単純化。早戻しできないからな。。
誰にでもわかりやすくに徹しているから、時には舞台上のキャラが観客に変わってツッコミも入れる。「なんでそこに熊がいるのよ!」と。歌舞伎なんだけど、熊Σ(・□・;)(←ほんとに熊、まごうかたなき熊だった)も出てきてびっくりさ。
バイプレーヤーもいい味出しまくり。脇を名優が固める豪華な布陣
キャストが花道を駆けまわり、時に奈落が落ちるのは、舞台ならではのお楽しみ。ライブで見れた人が、やっぱりうらやましい。
うらやましいけれど、シネマ歌舞伎ならではのお楽しみは、なんといってもセリフの聞き取りやすさ。歌舞伎と普通の現代劇と。見比べた時に気になるのは、セリフが聞き取りやすいかどうか。舞台で鍛えた人は、発声と滑舌がいい。
歌舞伎役者のみなさんは、それぞれ子供の頃から鍛えてる人ばかりなので、なにしろ基礎がしっかりしてるんだ(偉そうでスイマセン。。)。アクション多めでも、セリフが乱れない。音声を拾ってクローズアップしてくれるシネマ歌舞伎になると、ますますセリフが聞き取りやすくなってるから、ストーリーも追いやすい。
ついでに、ここぞと見得を切る場面でもクローズアップ。よい隈取が取れそう。。と、うっとりできた。
坂上田村麻呂の姉にして、都の女狐と呼びたい煮ても焼いても食えそうにない女、御霊御前を演じた市村萬次郎の声のよさにもうっとり。歌舞伎では、声がいいかどうかがとっても重要。
そして、とことん「生き意地の悪い男」蛮甲を演じた片岡亀蔵!!!熊を嫁にもつだけあって、最初から最後まで予測のつかない行動で、舞台をひっかきまわしてくれる。こういうトリックスター的キャラが、生き生きと活躍するストーリーだから、ややこしくて面白いんだ。
チャンチャンバラバラやってても、すごーく嘘っぽい戦闘シーンだから、単なるフィクションとして楽しめる。
ストーリー上必要とはいえ、リアリティあふれる映画の戦闘シーンは、現実のテロや戦争をオーバーラップさせるから、お腹いっぱい。嘘くさいぐらいじゃないと、もうフィクションとして消費できないくらい、テロも戦争も身近になり過ぎた。
どこをとってもリアリティのないストーリーを、肉体を駆使してリアルな役者さんが演じるからいい。オペラグラスなしでも、飛び散る汗までしっかり確認できる。
不満といえば、3時間の上映で、休憩時間が10分しかなかったことくらい。劇場のように、優雅にお弁当タイムとはいかないところが残念だけど、その分チケットが安いからしょうがない。3回以上観ると決めてる人は、3枚セットにするとさらにお得。
月イチ歌舞伎は、伝統的な演目と新作を織り交ぜながら、今後も続く。7月は、野田秀樹が脚本・演出の『野田版 研辰の討たれ』。今度は上映時間も1時間半ほどと、とっつきやすそう。
お休みなさーい。