クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

『ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える』を読んだ

テレビファーストからスマホファーストへ。暇な時間の潰し方が変わるなか、テレビ放送にかわる存在感を放つ、動画配信サービス。ネットフリックスにHuluにアマゾンプライムに。今までになかった選択肢が生まれると、世の中はどう変わるのか。ネットフリックスが壊すものと、新しくもたらすもの。わかりやすくまとまってた。

放送・通信の黒船がやってきた! 2015年9月に上陸したネット配信の覇者ネットフリックスと、それを迎え撃つHulu、dTV 、アマゾンなどの巨人たち。動画配信された作品を「イッキ見」するという新しい波は、テレビのビジネスモデルを、私たちの生活をいかに変えるか、最前線からの報告。(アマゾン商品紹介より引用)

 海外ドラマファンなので、ネットフリックス発のドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』が大人気になったこと。人気があっただけでなく、エミー賞も受賞する質の高いドラマだったこと、製作費が高額だったこと(つまりそれだけネットフリックスに資金があること)は知っていた。

 ネットフリックスに対して、月額固定料金の動画見放題サービス、SVOD(Subscription Video on Demand)で先行者利益をめいっぱいぶんどったソフト産業、先見の明で大きくなれて良かったねという先入観、勝手にもってた。本書でその印象は覆り、コンテンツ配信ときどき制作というソフト産業ながら、その内実はがっつり理系、技術系の会社だった。

 

アメリカではすでに、プライムタイムに流れるネットトラフィックのうち30%以上、3分の1をネットフリックスが占めているという。常時視聴率30%超えの番組、あるいはテレビ局を、寡聞にして思いつかない。日本のお寒いテレビ放送事情を勘案しながら読むと、実に味わい深い。

 

ネットフリックスが日本でも本格的に受け入れられるようになると、地方のテレビ局全滅しちゃうね、このままだと。地方テレビ局の収入を支える、地方の広告会社もろとも。義理人情にしばられた俗人的どんぶり勘定という、前近代的制作環境が変わらないと、ネットフリックスのような巨人に太刀打ちできるわけがない。

 

ネットフリックスのすごいorこわいところは、積極的に日本のテレビ放送に食い込もうとしているところ。テレビのリモコンにネットフリックス用のチャンネルボタンを搭載してくるので、技術に弱い人でもネットフリックスの視聴が容易になる。暇な時間は持て余すほどあるけど新しい技術に弱い層を狙いうち薄く広く集金するシステムだから、敷居の低さは大事

 

テレビ番組表にしばられず、いつでも好きな番組が見れるようになれば、視聴率に代わるモノサシも必要になる。

 

ネットフリックスのビジネスモデルは、視聴率をもとにした広告収入モデルを採用した、既存のテレビとはちと違う。視聴率にしばられない手法を確立しているから、ネットフリックス方式が広まるとともに、視聴率モデルも時代遅れになる。

 

動画でのSVODサービスが新しいものだから、本書で展開される知見も新しいものばかり。

 

社員の半数が技術系というネットフリックスは、世界最大のデータ解析企業でもあって、膨大なデータをもとに精度の高いレコメンド機能の実装に成功してる。ビックデータ時代ならではの話、レコメンド機能の充実がコアなファンの取り込みにもひと役買ってるとか、脳内へぇボタンが連打されるエピソードが次々に披露される。

 

動画配信サービスに特に興味はなくても、新しい技術の話、新しいテクノロジーが、まわりまわって個人の嗜好や行動にどう影響を及ぼすのか。そのあたりに興味がある人も楽しめる。何らかの形でコンテンツ配信や制作に携わってたら、ショック受けるのか猛烈に反発するのか。本書に真っ向から対立する、違うミライノカタチを提示している何かがあれば、読んでみたいと思った。

 

実はネットフリックスにはまだ手を出していない。暇な時間がたっぷりある地方住みなので、ハマれば廃人一直線だから、自重してる

 

そもそもニュースやドキュメンタリーに海外ドラマくらいしかテレビも見ない。映画館やレンタルビデオで間に合ってる。ついでに、画像よりもテキストが好きなせいもある。でも、ドキュメンタリー好きだから、動画配信サービス発のドキュメンタリーには興味アリ。

 

潜在的ネットフリックス予備軍が、ネットフリックスや類似のサービスに手を出すのは、明らかに在庫やレコマンド機能が優れてると判断したとき。

 

新旧とりまぜて良質なコンテンツに触れられるネットフリックスは、コンテンツ全体の質を底上げする。良質なものが安価で見られるのなら、拒む理由がない

 

ついでに、今は著名人や評論家のおススメにしたがって「新しいもの」に触れているけど、その共感型レコマンドに共感できなくなったら、きっと機械型レコマンドに移行する。

 

本書の中で、レコマンドについて割かれたパートが個人的にはいちばん面白かった。見て見て!と言われるコンテンツよりも、あなたのお好みはこちらではないですか?とおススメされるコンテンツの方が、アタリが多そう。食べ放題であっても、きめ細かく顧客のオーダーに応えてくれるの、わりと当たり前になりつつあるから。

 

テレビやレコーダーの技術の進歩も著しい。次の課題図書は、これに決まり。

すごい家電 いちばん身近な最先端技術 (ブルーバックス)

すごい家電 いちばん身近な最先端技術 (ブルーバックス)

 

あぁこうして積読本が増えていく。暇だけど暇じゃないのよ。

 

単にこれも好きなら、こちらもお好みではありませんか?とおススメされるより、これを好んだあなたはこちらを見ると腹立ちまくり、あるいは山盛りツッコメますとか。自分の嗜好とは異なる嗜好との出会い、そういうレコメンドの仕方も、ビッグデータの力を借りれば可能になるのかも。あらそれちょっと面白そう。

 

お休みなさーい。