おしゃれでゴージャスなマダムが放つエレガンスを、心ゆくまで堪能できる映画、『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』を見てきた。
最年長は95歳、いくつになってもおしゃれな女性は美しい
60歳以上のおしゃれ女性だけを特集したファッションブログをきっかけに、ファッション・アイコンとしてアメリカで人気となった7人の女性達を追ったドキュメンタリー映画。いくつになってもおしゃれな女性達が、ほんとにステキだった。
最年長はなんと95歳!ちょっと変わったデザインの布集めが好きで、集めた好きな布を使って自分好みにデザインした服を着ているゼルダ。
7人のうち最年少のジポラ62歳は、自転車にまたがって颯爽とNYの街を行き来している。日本よりも断然カラフルな服に身を包んだニューヨーカーの中でも、ひと際鮮やかでビビッドな色の服を纏って迫力満点。タダモノじゃないオーラが漂いまくり。
Advanced Style--ニューヨークで見つけた上級者のおしゃれスナップ
- 作者: アリ・セス・コーエン,岡野ひろか
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2013/02/23
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (6件) を見る
諦めなくても大丈夫
60歳以上、そしておしゃれ大好きという以外の共通点を持たない7人。それまで歩んできた人生も全く異なれば、年齢にだって開きがある。でも、おしゃれ大好きを諦めないまま年齢を重ねた彼女達は、誰よりもわかりあえる古くからの同志のよう。
世 間一般の女性は、年取った時には”こうあるべし”という周囲の期待に合わせるようになる。合わせるようになると、服装でもライフスタイルでも、とんがった ことは許されなくなって何かを諦める。
好きなことも、いつかは諦めないとダメなのか。そんな漠然とした世間一般からの押しつけ。無視しちゃっても全然楽し そうねというポジティブさがいっぱいだった。彼女たちがファッション・アイコンとして人気になったのも、好きなスタイルを貫けば年齢を重ねても楽しそうで”こう ありたい”と思われるからなのかな、と。
彼女達の人気に火をつけたブログの運営者は”おばあちゃん子”らしく、年齢を重ねた女性へのリスペクトが感じられるところもよし。
い くつになってもおしゃれで残り少なくなった人生を謳歌しているような彼女たちだけど、年齢相応に不調も抱えてる。できないことが増えていくからこそ、できること、めいっぱいのおしゃれを楽しんでいる。年齢は「50歳と死の間」のマダム達。年齢を重ねれば、物わかりが良くてカワイイ方が得かもしれないけど、 カッコいいを目指すのも悪くない。
Madame Chic Paris Snap―大人のシックはパリにある
- 作者: 主婦の友社
- 出版社/メーカー: 主婦の友社
- 発売日: 2015/07/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
ファッションは、ファッションを楽しむ人のもの。
昔、 「美しい50歳が増えると、日本は変ると思う」という資生堂のコピーがあった。いくつになってもファッションで自己表現する美しいマダムが増えれば、 ファッションの主役が流行を作り出すファッション産業から、おしゃれが楽しい、ファッションが好きな人の元にかえってくる。産業ではなく、それが好きな人 の手に戻ってきたとき、世の中の有り様もきっと変わってる。
今 年流行と言われるガウチョパンツ。あれは、スラッと背が高くて足首がキュッと引き締まった、スレンダーな人にしか似合わない、うまく着こなせない。誰もが 着こなせるような服じゃなく、着こなしの難易度が高い服。似合わないけれど、流行の服を身に着ける事はカッコいいことなのか。流行ではないけれど、自分に 似合って好きなものを着ている方こそカッコいいんじゃないのか。
マ イクロミニのトップスが流行りだった時は辛かった。流行が終わった時は、ショップの店員さんと手を取り合わんばかりに喜んだ。アレ、辛かったよね、と。流行だからと、好きでも似合うわけでもないものを身につけるのはやっぱりストレスが溜まる。そして、好きではなかったものはさっさと処分した。
手持ちの服にぴったり合う帽子に何年もかけてめぐり会い、数年がかりでようやくコーディネートを完成させたファッショニスタ。その姿は、まさしく”そのファッションが、人生”。
この映画を見たミニ・シアターは、シリアスな映画を取り上げることもあってか、観客にも真面目そうな人が目立つ。でもこの映画に限っては、アドバンスト・スタイル札幌代表と言いたいような、ゴージャスでエレガントな人もチラホラと。華やかな人は、周囲の空気まで明るくする。「美しい50歳以上が増えると、日本は明るく変ると思う」を予感させる、そんな映画だった。
お休みなさーい。