その辺に居そうな人、普通の人が、いざという時に発揮する善性に泣きそうになる。つか泣いた。
1980年代のイギリスはサッチャー政権下で、炭鉱閉鎖に揺れる田舎町が舞台のこの映画、とっーてもハートウォーミングないい映画だった。観て大満足。政治色は薄く、万人が楽しめるコメディです。
生活の糧を奪われてなるものかと、ストでサッチャー政権に対抗する炭鉱労働者たちと、ロンドンのゲイ&レズビアンコミュニティの若者たちと。LGSMとは、Lesbian&Gay Support Miners、炭鉱労働者支援レズビアン&ゲイ会のこと。
都会と田舎。保守と革新と。一見すると、何から何まで水と油に見える両者。
ロ ンドンのゲイ&レズビアンコミュニティの若者たちは、保守的な政権から目の敵にされていた。ある日、同じように政府に迫害される炭鉱労働者の姿を見て、 「彼らを助けよう!」と立ちあがる。まずは寄付を集めて、次は実際に現地へ出向き、ストを支援する労働組合を手伝おうとする。
でも彼らは何しろ水と油で、鰻と梅干で、スイカに天ぷらなものだから、なかなかひとつにはなれない。支援する側も支援を受ける側も、それぞれの内部に「あいつらなんて知るもんか」な輩を抱えていて、一枚岩にはなれない。
立ちあがったゲイ&レズビアンコミュニティのリーダーが、大変カワイイ顔したベビーフェイスのハンサム(ビバリーヒルズ高校&青春白書の、ジェイソン・プ リーストリーにもちょっと似てる)であっても、一致団結して「強きをたすけ、弱きをくじく奴ら」をぶちのめそう!とはなれない。
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炭鉱労働者は、『glee/グリー』で言えばアメフト部のような存在。学校で唯一ゲイであることをカミングアウトしている、gleeのメンバー・カートを執拗にいじめる、マッチョな奴らと思えばだいたい合ってる。彼らから暴力をふるわれた人もいて、敵の敵は味方だからでゲイ&レズビアンコミュニティが一致団結できるものでもない。
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そして、「あいつらのことなんか知るもんか」と思うのは、受け入れる炭鉱労働者側もいっしょ。
風景画家が絵に描きそうな、美しい田園地帯に住む彼ら炭鉱労働者とその家族たち。偏見なく積極的に受け入れる人は少数で、本物のゲイ&レズビアンな人々に接するのは初めての人も多くて、トラブル必至。
ロンドンでは、ボーイ・ジョージが能天気にかまかまかまかまかまかみーりおん♪と唄っていても、それはテレビの向こうの出来事。今ではLGBT先進国となった現在のイギリスとは、別世界。知らないものは、理解しようもない。
この映画、「あいつらのことなんか知るもんか」が、「あいつらのために何かしてやりたい」に変るところが大感動ポイント。
人は、思想のためになんか集わない。闘わない。闘う人は、給料あるいは生活の糧という鎖で繋がれた人だけ。
知るもんかが、あいつらのために何かしてやりたいに変るまでを、悲喜こもごも、ハッピー全開ではなく、1980年代に実際にあった悲しい出来事も織り込み済みで描いてた。悲劇も織り込みながら最後に待っているのは、「人は、思想を体現した人のために集う」姿で、感動ポイント押しまくって、泣けよとばかりに涙腺刺激する。
日本国内だけでなく、あちこちからLGBTの新しい動きが聞こえてくる今日この頃。
たいへんタイムリーな時期にこの映画を見たとは思うけれど、新しい動きを強力に後押しする、センセーショナルな力強さとはあんまり関係ない。
それよりも。
春が来た、暖かい風が吹いた。ぶ厚いコートもちょっと脱いでしまおうかしらと、「よく知りもしない人たちのことを、レッテル貼ってむげに嫌うものじゃないわよね」という気持ちが、タケノコのように顔を出す。
連帯なんて言われたら、政治色あり過ぎでドン引き。
明日に向かって歌え!のキャッチコピー通り、叫んじゃダメなのよ、歌わなきゃ。それも楽しそうじゃないとね。
「あいつら」に何が入るかは人それぞれ。人それぞれの「あいつらのことなんか知るもんか」が、「あいつらのために何かしてやりたい」に変る時が、それまでとは違う、新しい何かが始まる時。「人は、思想を体現した人のために集う」姿が見られた時が、新しい何かが始まった時。検証できるのは、ずっと先でもね。
歴史に埋もれるところだった実話を掘り起こしてきた人が、オスカー級のいちばんの功労者かも。
お休みなさーい。
※5月25日、写真etc.追加してます。