果たして札幌で上映されるかどうかはわからないけど、NYのおしゃれ大好きばーちゃん達を描いた『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』を楽しみにしてる。その前に、ファッション映画といえばコレでしょ、と予習するつもりで『プラダを着た悪魔』を見た。
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (FOXDP)
- 発売日: 2012/07/18
- メディア: DVD
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (21件) を見る
過去にも2、3回見てるけど、お仕事映画としてもたいへんよく出来てることに改めて気づいた。
ファッション誌の最高峰、『ヴォーグ』伝説の編集長アナ・ウィ ンターをモデルにしたとも言われる人物も登場するこの映画、ワナビーがはびこる業界、上司に顎でこき使われるハードワークと、ブラックな労働環境とキャリ アについての問題提起映画でもありました。断るまでもなく、これ私見です。
名門大学を卒業し、ジャーナリスト志望の主人公アンドレアが働くことになったのは、なぜかファッション誌。いち雑誌にとどまらず、ファッション業界に女帝として君臨する鬼編集長ミランダの第二アシスタントとして働き始める。”プラダを着た悪魔”はミランダのこと。
ア ンドレア本人は、まったくファッションにはキョーミないから、他の女性にとって憧れの職場で働いてる自覚が皆無。他の女性達が、これでもかときらびやかに着飾ってる中、ダサダサの服にボサボサの頭でもヘーキ。周りがみんなハイヒール履いてる中で、ひとりもっさりした靴を履いててもヘーキ。
アンドレアにとっては通過点でしかない職場だから。
まっ たく希望とは違う職場ではあっても1年頑張れば、「ミランダの元アシスタント」というゴールデンチケットが手に入ると、たかをくくってる。グラビア撮影で、アンドレアにとっては”どれも一緒”に見える小物選びに真剣になるミランダ達を嗤ったアンドレアは、ミランダからきつーい反撃をくらう。
流行を作っているのはミランダ達で、その流行が、最後はアンドレアの着ているGAPのようなファストファッションにまで波及してるのよと論破される。アンドレア、ぐうの音も出ない。
これ、無知な新人がとってもやらかしそうなミス。1匹の蝶を中国ではばたかせ、カリブでハリケーンを起こすようなことをミランダ達はやっている。アンドレアには、その源にいるコトの重大さがわかってない。
わかってないアンドレアだからこそ採用された一面はあるけれど、わからないままだったら、単なる場違いな人。アンドレの負けん気に火がつき、まずは形からミランダ帝国の一員となり、アンドレアもファッションに目覚める。アンドレの変身ぶりが楽しい。オシャレは楽しいのよ。
目覚めたあとは一直線。無理難題をふっかけるミランダの鼻を明かしてやろうと、持ち前の賢さを発揮して食らいついていく。食らいついて、ワーカホリックになるにつれて深まる旧友や恋人との溝。
あの子どうしちゃったの?という旧友の視線には気付けず、取り残される恋人の不機嫌さにも鈍感になる。
あぁワークライフバランスはどこへ。24時間鬼上司に顎で使われてたら、プライベートなんておあずけになる。ところがプライベートを犠牲にするほどに、仕事での成果も評価も上がっていく。おまけに仕事を通じて”新しい出会い”も待っている。
も しもアンドレアが、家族や友人、恋人にも恵まれた、そこそこ豊かな中産階級出身者じゃなかったら。簡単に「ミランダのお嬢さん」化して、喜んでミランダに顎で使われるまま、ミランダ帝国のメンバーとして順調に出世していったかもしれない。でも、アンドレアにはアンドレアの世界がすでにあった。
めちゃくちゃよく働く上司が、お金スキーで名誉や名声のために働く人なら軽蔑もできるけど、ただ仕事への愛情にあふれた人だったらどうしましょ。もう頭を垂れるしかなさそう。
この映画、「何のために働くのか」を突きつけられる映画。
アンドレアは、本意ではない職場で有能さを発揮し、居場所を見つけてしまう。そこにいれば成功間違いなし。でも本意ではないから、同僚のようにこの仕事を取り上げられたら死にそう!なんてことにはならない。
娘の家賃補助を申し出たりする、そこそこ裕福な親がいるせいもあって、生活のためと必死になることもない。
そこにいれば確実に成長させてくれる。学ぶことも多い。好感さえ抱いてる上司のもとを、それでも去る時もある。自分の進みたい道が、突然くっきりはっきりした時が、人生の別れ道。
新しい職場で働き始めたアンドレアは、街中でミランダと行き会う。その時のミランダの、「なによ」という表情がすごくいい。クソババアっぽさ満点で、メリル・ストリープがいい味出してる。そのミランダを見送るアンドレア、アン・ハサウェイの笑顔もいい。
自分は選ばない、違う道を極めた人への敬意にあふれていて、敬愛っていうのはああいう表情を言うのかと思う。
ファッション業界の頂点とも言える場所から、世界のすみずみまで流行を広めていくお仕事に背を向ける。ハイファッションの代名詞プラダと決別するアンドレアの決断も、2006年の映画公開当時には何かの含意があったのかも。
ハイファッションが、あんまりイケてるものには感じられなくなって、リアルクローズがすっかりお馴染みになった。セレブの普段着もカジュアル。ファッション グラビア誌で見るようなモードなハイファッション、実際に着てる人を見るのは久しぶりだから、『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』も楽しみにしてる。
巣鴨に居るようなおばあちゃんもカワイイんだけど、鬼編集長ミランダみたいなおばあさんも、カッコよくて割と好き。
札幌で上映するかどうかだけが心配。お休みなさーい。