クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

高学歴でアート志向で複雑な性格を持つ女性が主人公の映画2つ。

話題の『ゴーン・ガール』見てきた。
エイミーというキャラクターを生み出せたことが成功の全て。この映画の感想を、ひと言でまとめたらそうなる。
 
 
『ゴーン・ガール』を見終って、先日見た『フランシス・ハ』のことを考えた。『フランシス・ハ』の主人公フランシスと『ゴーン・ガール』のエイミー。全く異なるタイプではあるけれど、都会ではよく見掛けるタイプの女性。
 
 
エイミーには好感を抱けないけれど、フランシスには共感する。
 
 
その差はどこから来るのか。
 
 
エイミーは、ハーバード大学卒の美人。経済的危機にも見舞われたけど、基本お金の苦労なく育ってきた財産持ち。
 
 
ライターとしてどのくらい稼いでいるのか不明だけど、財産があるから食べるには困らない。そんなタイプ。
 
 
一方のフランシス。
 
 
作中では明言されてないけど、ロケ地と、監督の出身校でもあることから、ヴァッサー大学の出身と考えられそう。ヴァッサーはアメリカでセブンシスターズと呼ばれる有力女子大のひとつ(現在は共学化されている)。日本で言えば、日本女子大やフェリスとかそんな感じかな。
 
 
フランシスが高学歴と考えた根拠は
・故郷を遠く離れているからには、進学するメリットのある大学に行ったと思われる
・フランシスは芽の出ないモダンダンサーだけど、同じ学校で学んだ親友のソフィーは、入社するのが難しそうな出版社勤務。つまりそれなりに学歴があると思われる
・小難しい本を読んでいて、単に読んでるだけでなく、自分の言葉で内容を語ることができる
 
 
大学は出たものの、芽の出ないモダンダンサーで、金欠。家族とは愛情で結ばれているけれど、経済的には頼れない。誰もが認めるような美人ではないけれど、感じがいい。感じはいいけど、生活面ではだらしない。27歳になるのに部屋は散らかりまくりで、学生気分が抜けてない。
 
 
一方のエイミー。
夫と暮らす家の中は、インテリア雑誌から抜け出てきたように美しく整えられてる。冷蔵庫の中には作り置きの食材が準備され、食事面でも手を抜いてないことがよくわかった。
 
 
職業柄もあって、読書家。ニューヨーク時代はともかく、結婚してミズーリに引っ込んでからは親しく付き合う友人もいない。作為的に「友人」として選んだ人の前では感じよく振る舞っているけれど、心は許さない。夫のニックいわく「複雑な性格で友人が作りにくい」。
 
 
一方のフランシス。
人当たりは悪くないけれどあけっぴろ過ぎて、年齢相応もしくは職業相応に世慣れた人からは、時にドン引きされている。ドリーマーな人達とは相性がいいけれど、フランシスの周囲のドリーマー達は、いつまでも夢を追いかけられるお金持ちが多い。
 
 
エイミーとフランシス。
 
 
アートな世界のてっぺん近くにいる人と。そうありたいと下の方でもがく人。そんな風にも見えた。
 
 
エイミーは、彼女個人の才能はともかく、彼女の親が産み出した『アメージング・エイミー』の完璧な入れ物。完璧な入れ物と引き換えに手に入れたその地位に、疑いはもたない。
 
 
フランシスは、いくつもの妥協案を目の前に出されても、それを良しとはしない。諦めない。往生際が悪い。往生際が悪いから、どんどん追い詰められていく。
 
 
追い詰められた時にすがる、あるいは共依存に陥る相手もエイミーとフランシスは対照的。
 
 
エイミーは結局ニックを選ぶ。自分を必要としない人をそばに置いて、何が楽しいんだろう。そう思うけど、それがエイミーの生き方。相手の思惑よりも、自分が選んだ相手をそばに置く。きっとそっちの方が大事なんだろう。
 
 
フランシスは結局ソフィーを選ぶ。ソフィーもフランシスを選び、高級取りな金融業の妻として、海外(行先はなんと東京だ)に暮らす未来をキャンセルする。いつかそれぞれにパートナーが現われたとしても、自分を必要とする人と一緒に年を取っていくんだろう。
 
 
フランシスとソフィーに、この先金銭的に明るい未来が待ってるのかどうかはわからない。わからないけれど、それなりに満ち足りた人生を送りそうな、明るい予感で締めくくられていた。
 
 
エイミーとニックは、きっと将来に渡ってお金に困ることはなさそう。困ったらプライベートを売ればいいから。そんな人生が幸せかどうかはわからないけれど、少なくともニックはお先真っ暗な予感で締めくくられていた。
 
 
プライベートは売るものではなく、充実させるもの。2つの映画から感じたのは、そんなこと。
 
 
『フランシス・ハ』、モノクロの画面もカッコいい。ちょっと変わったタイトルの意味がわかった時には、心からすっきり。新しい人生のスタートにエールを送りたくなった。