ラッセル・クロウがナレーションをつとめるドキュメンタリー映画、『世界一美しいボルドーの秘密』見てきた。
由緒あるシャトーの驚くべきワインビジネスとワインに魅せられた人々に迫るドキュメンタリー (パンフレットより)
のどかで美しく、それでいて偉容を誇るボルドーの田園風景から始まったこの映画。白熱するワインビジネスを描いていて、最後まで退屈しない、目が離せない映画だった。
馬は使うわ、手摘みだわ。昔ながらの製法を守ることによって高品質をキープするボルドーワインは、高級ワインの代名詞。
見に行く前は、そんなにワインに詳しくないからついていけるか心配した。ところが出てくるワインは、ラフィット・ロートシルト、ムートン・ロートシルト、オー・ブリオン、ラトゥール、マルゴーと、ワイン音痴でも知ってる超がつく有名シャトー(醸造所)のものばかり。
誰でも知ってる高級品、量産できない、それでも欲しい人は後をたたない。そうなると、はいバブルの出来上がり。
ということで、ワインバブルを過熱させようとする買い手・中国と、その手に乗るまいとする売り手、ボルドーとの攻防が、とても面白かった。
ボルドーと中国と。ワインビジネスに携わる人達に、インタビューを重ねることで出来あがってるこの映画。バブルってこんな風に発生して過熱していくんだねという、良い教材になりそう。
数が少ないから珍重され、値が釣り上る。
100年で5回ほどしか、ヴィンテージは生まれない。じゃあヴィンテージではないものをどう売るかの秘策には、笑ってしまった。
日本人だから笑ってしまうけど、中華文化圏の人ならきっと嬉しい。パリの有名ショコラティエが、抹茶入りチョコを売り出したら嬉しいのと一緒。
同じ文化や歴史を共有するわけでもない相手の”熱狂”に、蹂躙される方はたまったもんじゃない。
過去最大級ともいえる、中国によるボルドー侵略を、シャトーはどう迎え撃つのか。果実をもぎとりつつ、その熱狂をどう扱うかが見ものだった。
そして熱狂は、悪い事だけを運んでくるわけでもない。
ひと足先にワイン・バブルの洗礼を受けた国からすると、ワインによってもたらされた、新しいライフスタイルは決して悪い物じゃない。ウチ飯ワインなんて言葉もあるしね。
日本は今こそ中国で大々的に『神の雫』を売るべきだよ。『ソムリエ』でもいいんだけど。とにかく、巨大な市場がそこに待っている。
売り手と買い手の攻防を描いていてドキドキするけど、奪いつくしてしまったら、ビジネスそのものがおしまいになってしまう。
数で圧倒するバイヤーが蹂躙しつくしてるようで、そこにはちゃんと、次へと続くものも芽生えていた。
気候変動もあるから、今後のワインビジネスも思いがけない展開を迎えそう。
飲み物としてのワインにそう興味はなくても、ワインビジネスへの興味はますます募った。
原題は、「レッド・オブセッション」。「レッド」に赤ワインと自由化が加速される「共産主義国」を重ねているとのこと。映画のドキドキ感にあってて、そっちの方がぴったりくる。
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