クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

『ヒップな生活革命』読んだ。

『ヒップな生活革命』読んだ。
アメリカから変革の波が広がる。

 アメリカ人の意識が大きく変わり始めた。抜群に美味しくなったコーヒー、「買うな」とうたう企業広告、地元生産を貫くブランド、再燃するレコード熱・・・・・・サブプライム金融危機を受け、新たなる「ヒップスター」たちが衣食住の各所で変革の波となり、大企業主導の社会の中で独立した場所を広げている。

 
ニューヨーク在住の著者が、見て感じた。アメリカで進みつつあるライフスタイルの変化を丹念に追った本だった。似たような変化、こうでありたいと思うような動きを身近に感じることもあって、とても面白く読んだ。長いです(2187文字)。
 
 
アメリカといってもニューヨーク市の一部であるブルックリン、人口60万ほどのオレゴン州ポートランド、それに北カルフォルニアといった、リベラルな一部の都市でのことなんだけど。
 
 
序章で、出版・音楽・食・アートと、アメリカ文化もまたサブプライム危機で壊滅の危機に陥ったことが語られる。危機に瀕したからこそ芽吹いた、主流(メインストリーム)とは別の場所で生きていこうとする、雇われないインディペンデントな生き方をめざした人達が、たくさん登場してた。
 
 
日本のメインストリーム・東京から遠く離れて生活してる上に、消費して支える相手はできるだけ近い方がいいとも考えてるので、共感するところ大だった。大してクリエイティブなことしてないけど。
 
 
新しいライフスタイルを引っ張ってるのは、「ヒップ」な人たち。
・個人経営な地元の店を好む
・添加物の多い、化学製品的食料がキライ
・ファーマーズマーケット好き
・自転車好き
・アウトドアやガーデニング好き、でもテクノロジーも好き
・ハリウッドよりもインディーズ映画好き
 
そんな感じの人たちで、”植物男子ベランダー”かよと思っちゃった。
 
 
ついでに、「クリエイティブな職につきながらもメインストリームが商売相手」だったりするらしいので、若干語感悪いけど”意識高い系”かもしれない。
 
 
あればあっただけお金を使うような、バブリーな価値観からは遠い”ヒップスター”達が好むのは、ストーリーのある消費。
 
 
少量生産でこだわりのある商品を好むので、アメリカの食が美味しくなり、ファッションや音楽といった分野でも、クラフトマンシップが復活してたりする。
 
 
野外フードマーケット『スモーガスバーグ』で売られてる食べ物はどれもこれも美味しそう。食の盛り上がりと共に、農業に興味を抱く若い人も増えてるとか。『銀の匙』みたいだね。
 
 
J・クルーやオールデンといった往年のブランドが復活し、アナログな限定生産のレコード盤が飛ぶように売れたりする。
 
 
これって一見、復古趣味で愛国主義的な動きにも見えるんだよね。
 
 
でも、チープな輸入品に溢れた大型SCで、セール品に殺到するような過剰消費が良かったのかと言えばそれも違う。
 
 
作り手が納得できる品質のものを、規模の拡大を追わず、コントロールできる範囲にとどめようとした姿と、その姿勢を応援する買い手の姿、なんだよね。
 
 
作り手と買い手の距離が近い。距離が近いから、メインストリームでありがちな、コスト最小利潤最大の過程で生まれる搾取がない。搾取がないから、クリーンで心地良い。そんな循環が生まれてるようだった。
 
 
作り手と買い手をマッチングさせるサービスを始めとして、小規模生産によるインディペンデントな働き方を可能にしてる、テクロノジーの進化も見逃せない。
・オンラインクラフトマーケットの『エッツィ』
・工場と作り手のマッチングサービス『メーカーズ・ロウ』
『ファーミゴ』、『Vimeo』、『ネットフリックス』と、まさに百花繚乱。
 
 
生活に近い所で、「心地いい」や「快適」あるいは「より良く」を可能にするレベルまで、テクロノジーが身近になったんだねと実感する。
 
 
メインストリーム、主流の場所で働くのが無理な人って、一定数居ると思うんだよね。
 
 
この本の中でも、何か新しいことを始めた人が、「他人に人生を左右されるのがイヤになった」、「自分の仕事を信じられなくなった」と、後ろ向きな理由から新しいこと始めた人も紹介されてる。
 
 
もっといいものをという前向きな理由で、新しいことを始めた人ばかりじゃなかった。
 
 
メインストリームで働くのが無理でも、自らが作り手になるハードルは限りなく低くなってる。それが農業やアート的方面、あるいはテクノロジー方面でも、大量生産がそっぽを向かれる・好まれないエリアは、これからも無くならない。
 
 
むしろ、ローカルがグローバルを締め出す。ローカライズに走る地域が増えていくんじゃないかとさえ思ってる。グローバルに飲み込まれたら生きていけない。そう悟ったエリアでインディペンデントな生き方探るのも、人によっては有りだと思う。
 
 
ポートランドのように、高速道路建設を拒むことで都市中心部の空洞化を防ぎ、インディペンデントな人達のゆりかごになってる都市がある。
 
 
そこに集った人たちが始めた新しいことは、今はまだ始めの一歩だけど、そのうち大きな動きを生むのかも。
 
 
大量消費の申し子みたいなウォールマートも、今後はアメリカ産商品の買い付け増やすらしいし。ローカルはグローバルにやられっぱなしじゃない。そう感じられたことが、一番の収穫だった。
 
お休みなさーい。
 
ヒップな生活革命 (ideaink 〈アイデアインク〉)

ヒップな生活革命 (ideaink 〈アイデアインク〉)