クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

使い勝手が信頼につながる

来月から給料は仮想通貨払いな。と、言われたら暴れる。安全資産と言われる金(きん)で支払うと言われてもイヤだ。

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本日のおやつ。

例えば邦貨にして給料30万円分の仮想通貨を給与支払い日に受け取ったとして、現実には支払手段として普及していない仮想通貨はそのままでは使えない。そのままでは使えないから、Suicaのような交通系ICカードにチャージしたり、あるいは生活資金用の銀行口座に移しかえる必要がある。

 

すると「為替・exchange」が存在し、移しかえる時点での仮想通貨のレートによって受取額が変動する。ついでに交換時に手数料がかかるとなれば、さらに手取りが目減りする可能性もある。

 

受け取るのが金貨や金塊(になるほどの額ではないかもしれないけれど。。)であっても、国内に居るのに使う時には為替が必要となるものは、決して給与にはして欲しくない。

 

とはいえ海外在住でありながら、給与は現地通貨ではなく日本円で支払われている海外駐在員の場合、日本円から現地通貨に交換する際には日常的に経験している理不尽。

 

仮想通貨あるいは金で支払うこととなった場合、給与振込口座代わりの交換所的なものを、まずは個人の側で指定しろと言われたら、困惑する。どの交換所を選ぶべきか。まずはそこからのスタートとなるから、円建てに比べたら著しく使い勝手が悪い。

 

ついでに現金やICカードを使う時には、偽札やデータの改竄を心配することはほとんどない。

 

現金に限れば、もし偽札であれば何らかの違和感を感じるに違いないという、「偽造が難しい」日本円に対する物理的な信頼がある。仮想通貨は「仮想」なだけに真贋も見分けられず、物理的に信頼することがまず難しい。

 

ICカードのデータについて、改竄を心配したこともほぼない。多数の人間が日常的に使っているものだから、その保守にも多大な労力が割かれていることを、体感的に知っている。

 

仮想通貨もデータのカタチをしていて目には見えないけれど、仮想通貨が物理的に紛失するさまを見せつけられた後では、ICカードのデータと同じような信頼を寄せることは難しい。

 

仮想通貨は、知識のない人には真贋の見分けが難しい技術回りの話がてんこ盛りで、真贋の見分けコストが高過ぎる。

 

盗難コストがあるあたりは物理的貨幣っぽいにもかかわらず、物理的な貨幣である紙幣やコインが紛失した時と比べれば、いくら盗まれたかの価値の算定時には物理的貨幣にはない幅、変動が生じるとか。わかりにくすぎる。

 

給与の一部を仮想通貨払いにという取り組みは、自社株買い推奨っぽくもあるけれど、その実体は取引相手から押し付けられた仮想通貨の下げ渡しだったらどうしましょ。力関係がフラットではない交易では、あり得ないことではなし。

 

国家による裏付けが存在しない通貨は、過去の歴史にも登場・流通しているから、国家による裏付けは必ずしも通貨が信用される条件じゃない。金もダイヤモンドも、国家による裏付けはないけれど、信頼度は抜群。

 

結局、容易には偽造されないから受け取り時も支払い時も安心して使える。かつ誰でも容易に発行できるものではないからという、ある種の権威の裏付けが必要で、その双方が揃っていない通貨は、誰が旗を振っても貨幣としては流通しないのかも。

 

権威が“これを通貨として認めよ”と告知したところで、使う側がこれは貨幣だと認めない限り、やっぱり貨幣にはなり得ないから、ユーザビリティこそが鍵なのかも。と、極めてユーザビリティに欠けることをやってるからよくわかります。

 

汎用性に対する転々流通性という語彙を得たことが、いちばんの収穫だったかもしれない、『仮想通貨に「信頼」は成立するのか』という本というより論文は、隙間時間に読むのにピッタリの長さと内容だった。

 

次に読むんだったら、ユーザビリティへの配慮とマネロンの助長防止をどう両立させるか、かな。

 

国内で為替が発生する通貨あるいは貨幣といえば、江戸時代のお米。大名は石高、生産可能なお米の量でランキングされていたけれど、両替商がなければ日常の生活は不便だった。

 

士農工商と身分の上では武士が最上位にあって、商人を最下位にランキングしていた江戸時代の制度は、結局のところ商人に対する名状しがたい憎悪を込めたものかも。お米だけでは生活できなかったのは、結局のところ江戸も現代も変わることはなく、通貨が必要だから。

 

だから権力層から権力を剥ぎ取りたかったら、内国為替、国内で流通する通貨に変動する為替を持ち込めば、商人に頭が上がらなくなる。

 

という立ち位置から仮想通貨回りを眺めると、また違った風景が楽しめる。

 

お休みなさーい。