クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

代理人がすべてを奪う

この季節に風邪引いて熱出すと、インフルかと心配になる。寝込む前にチョコもそれ以外のプレゼントも用意済みなので、安心して寝込んでられたけどさ。

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ショコラショー。ホットチョコレートをカッコよくしたもの。

 お茶もコーヒーもショコラショーも。飲んでる最中より作ってる最中の方が、香り高くて美味しそうで幸せになれる。美味しそうな匂いというのは、差別要因だね。

 

さて、オリンピックフィギュアスケート男子シングルの試合日。

 

日本は羽生選手や宇野選手時々田中選手の活躍に興味津々。ネットで拾える範囲で、(それはつまりとってもお手軽ってことだけど)確認してみると、同じ競技でも各国の興味関心度合いにはお国柄が現れているから、面白い。

 

アメリカでアダム・リッポンの話題が出る時には、ゲイであることをカミングアウトした選手という紹介が、大抵ついている。フランスのペアフィギュアスケータ―は、黒人女性と白人男性という、あまりない組合せ。

 

ペアフィギュアでは、アジア系と欧米系という「人種融合」はもはや珍しくもないけれど、黒人と白人という組合せでオリンピックまで勝ち上がってくるのは珍しい。珍しいだけでなく、氷上ではとっても見栄えがする。最早4回転が飛べるだけでは勝つことも難しい技術の進歩とともに、社会の変化もしっかり反映してる。

 

変化をもっとも感じにくいのは、やっぱりいつでも真ん中なんだよな。。半径5メートルくらいの景色しか見てないから。

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雪玉系イルミネーション、きれいだね。

寝込んでる時に見た『代理人』という1995年の映画は、ハル・ベリージェシカ・ラングという二人の女性が、生みの母と育ての母となって、ハル・ベリーが産んだ黒人の赤ちゃんの親権をめぐって争う内容だった。

 

裁判所でのシーン。元ジャンキーのホームレスから更生した、ハル・ベリーを擁護するために証人となった女性が、“お金持ちの白人家庭が、貧しい黒人家庭から子供を取り上げる政治的正しさにはもううんざり”的なことを発言する。

 

事情はもっと複雑で、最初に赤ん坊を捨てた(しかもゴミ箱に)のは、ハル・ベリーの方。死んだと思っていた赤ん坊が、実は生きていたと知り、更生した後に親権を取り戻そうとする。

 

政治的にまったくもって正しくない行いをした人が後に、黒人の子供は(シングルマザーであっても)黒人の母親の元で育つべしという、政治的正しさを持ち出して争うところがキモでもあった。ちなみに1995年の作品だから、”その当時の常識”で描かれている。

 

でもねぇ。死にそうな黒人の子供を放っておけなかった、ジェシカ・ラング演じる白人の育ての母は、めちゃくちゃ赤ちゃん可愛がってたんだよな。。周囲の反対を押し切って養子に迎え、白人家庭の中の黒人養子という、困難な家庭をそれなりにうまく回してた。

 

将来の選択肢が広がる豊かな家庭で育つことか、同じカルチャーやルーツを持つ家庭で育つことか。どちらの方が政治的に正しいかという点が争点でもあって、裁く方も「難しい」と言いつつ裁いてた。

 

政治的に決着はついても、温かい家庭から無理くり引き剥がされた子供は泣き止まず、新しい環境にも馴染まないから政治的決着のその後、後日譚がある。

 

自分は非道な母親ではなく、母親として適格であると言わばお墨付きをもらったハル・ベリー。だけど子供目線からすれば母親とは受け入れがたい存在を、今後はこの人を親として慕いなさいと子供に命じることは、政治的に正しいことなのか。いつまで経っても子供の涙を止めることのできない母親は、非道ではないのか。

 

人種的に正しくなくても愛情いっぱいに育ててきた子供を突如奪われた、奪われた者の欠落はどうやって埋めるのが「正しい」のか。政治的にセンシティブな問題に、「愛情」から解を見つけようとする視点は、机上の空論からはいつも一番遠いんだよな。

 

センシティブな問題がその辺りに転がっていて心かき乱されるから、解を求めて苦闘してきた歴史があるとないとでは社会や世の中の深みってもんが、全然違うことがよくわかる作品でもあった。

 

ご都合主義から遠くなればなるほど、深みや余韻が生まれるのかも。タイトルで損してる系作品。『代理人がすべてを奪う』とでもしたい感じ。

 

ハビエル・フェルナンデス選手。にこやかに軽やかに、苦労とかタイヘーンという努力を微塵も感じさせずに楽々と難しい技もこなすから、羽生選手の演技より心象がいい。

 

苦労はどうしても語りたくなるものだから、にこやかに軽やかに難しいことをこなす姿には、素直に拍手喝采したくなる。フリーの演技も楽しみ。

 

 お休みなさーい。