1時間くらいのドキュメンタリーを探していて見つけた、『デュカリの夢』。
ハリウッドスターがエチオピアの貧しい村を訪れ、コーヒー栽培農家の生活を体験。その体験をもとに、ハリウッドスターだからできる貧困支援プランがカタチになるまでを追ったもの。ハリウッドスターという、発信力のある個人メディアの理想形かも。
貧しい生活を追体験することそのものには、今や希少性なし
アメコミ原作の映画『X-メン』でウルヴァリンを演じたヒュー・ジャックマンが、エチオピア辺境の村でコーヒー栽培を営む青年デュカリのもとを訪れる。
エチオピア入りする前には、ジェフリー・サックスという経済学者からレクチャーを受けるヒュー・ジャックマン。ジェフリー・サックスという名前でピン!と来る人には、ある種予想通りな持続可能な社会に向けての取り組みが紹介されていく。
貧しい村で、電気やガスなどのインフラも未整備。干ばつや気候変動の影響か、近年収量は半減し、どこから手を付ければいいのか状態な場所。
作業はほぼ手作業で、機械化しようにもそもそも電気がない。これが農地なのか?と思ってしまう、雑木林と見紛うばかりのコーヒー農園は、大規模プランテーション農場とはえらい違い。
一見すると、何もかもがないないづくしで前近代的な場所だけど、ないなりにエコロジーシステムが発達していて、そこには素直に感心した。
ないないづくしで前近代的な場所に、最先端な技術を持ってきても使いどころなく故障したまま放置される未来しか見えない。ということを、現地の青年デュカリとともに働くことで、体感するヒュー・ジャックマン。
そこで終わったら、よくあるハリウッドスターのエスニック体験記。その続きは、NYに帰ってから。
ヒュー・ジャックマン、フェアトレードコーヒーの伝道者となる。
まずは発電所作らなきゃという、条件の悪い土地。そこで生きるしかない生産者が、生活できないと生産も続かない。そうだフェアトレードだとヒュー・ジャックマンは、エチオピアコーヒー、ひいてはデュカリ農園の付加価値を高めようと、フェアトレードの宣伝役をかってでる。今風に言うと、アンバサダーやね。
どこから手を付ければいいのか状態な場所に、大金つぎ込んでもブラックホールのように吸い込まれていくだけ。成果を実感することがなければ、支援者の支援しようというモチベーションもだだ下がり。
だったら、お金払うかわりにお金をもらわずに宣伝をかってでて、付加価値を高める方がずっといい。と思ったのかどうかは知らないけれど、ヒュー・ジャックマンのフェアトレードコーヒー愛は、最終的にはひとつのカタチになる。
先進国にしかできないお仕事
ヒュー・ジャックマンが、エチオピア入りする前にレクチャーを受けたジェフリー・サックス氏について、まったく無知だったので、見終わったあとでググってみた。
サックス氏の失敗は、市場を開発できなかったこととする記事を見つけたけれど、『デュカリの夢』は、そのアンサーで新しい挑戦になっていた。
先進国のお仕事は、付加価値の高い商品に高値がつく市場を開拓することで、ハリウッドスターという資本主義のてっぺんに居るような人が、資本主義ピラミッドの最底辺に居るような極度の貧困状態な人を支援するから、その波及効果も大きくなる。
モノはいいんだけどね。。という商品に付加価値をつけるのは、まずは名声ある人のお仕事で、名声ある人が現地まで出向いて現地の推薦を受けた人間を審査してから推挙してる、その一連の過程もすべてオープンにすることで、より商品の付加価値を高めてると言えるかも。
ハリウッドスターという個人の財布がいつまで持つのかという問題は、未来につきまとうけど、ヒュー・ジャックマンにはフェアトレード・コーヒーのアンバサダー的お仕事もあるわけで。
企業や組織が手を出せない分野で、資金力のある個人が動いて、先進国に市場をつくるお仕事は、夢を売って生きてきた人のセカンドキャリアとしても、相応なんじゃないすかね。
経済学者とSDGsとハリウッドスターとフェアトレードと。一見結びつきそうにない者同士のコラボが、予想外に面白かったけど個人差はきっとアリ。コーヒーの消費量は日本でも増えているそうで、選択肢にフェアトレードコーヒーが当たり前に加わると、生産国の風景も大きく変わるのかも。
お休みなさーい。