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クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

タワーレコード繁栄の記録『オール・シングス・マスト・パス』見た

映画 レビュー

NO MUSIC NO LIFEが世界にあまねく行き渡ることで、幕を閉じることになった、大手レコードチェーン店タワーレコードを描いたドキュメンタリー、『オール・シングス・マスト・パス』を見た。Amazonプライムで。

タワーレコードの商標そのものは今でも健在だけど、アメリカでは2006年に全店舗閉鎖となり、創業者も創業メンバーもすでに会社を去っている。

 

創業者と創業メンバーが多数登場し、NO MUSIC NO LIFEというタワーレコードを体現するカルチャーを、いかに作り上げたかを彼ら自身の言葉で語ってる。

 

“音楽があることで気持ちや生活が豊かになる”精神は、このドキュメンタリーにも引き継がれ、創業当時の高揚感や多幸感に溢れたお話多目。幸せな過去を語る姿はとても楽しそうで、ハッピーになれる。

 

“音楽がタダ”になることと引き換えに、カルチャーを牽引してきたタワーレコードは斜陽を迎えたけれど、恨み節は引きずらず。

 

サラリと憎い相手の名前を出してはいるけれど、それでもNO MUSIC NO LIFEのカルチャーを作り上げた人たちらしく、何があっても彼らから奪えないものは、ちゃんと最後まで彼らとともにあった。

 

目に見えないもの、形がないものを世の中に残した人たちが、最後に手にしたのも、やっぱり形がなく目に見えないもの。何が残ったのかは、その目で見て確かめましょう。

 

思想のためになんかに人は集わない、思想を体現した人のもとに人は集うが実感できる。

 

タワーレコードを大きくした人たちは、そのほとんどが、お店で店員から始めた人たち。1960年代あるいはそれ以降、ロックスターに憧れた若者は自由を求め、服装・髪型自由なタワーレコードに吸い寄せられた。

 

お店と従業員はとても近しくて、従業員というより仲間や家族のよう。音楽が3度の食事より好きな人にとっては、天国に一番近い職場だったに違いない証言も多数飛び出していた。

 

業界黎明期に、寝食を忘れるほど打ち込めるものがある人は、迷わずその道に飛び込んでおけば、晩年も幸せな思い出で美味しいご飯が食べられることを証明してる。

 

アメリカの音楽シーンの盛衰を、小売業の王者という立場から振り返ってもいて、門外漢にもわかりやすい。日本市場への進出の経緯もトリビアに満ちていて、脳内へぇボタンが連打された。

 

アメリカのタワーレコードには、トップミュージシャンも気軽に来店し、ポップや看板にも工夫を凝らして“フィジカリーエキサイティング“、楽しさが体感できる場であったことが証言される。

 

未成熟な市場を大きくし、カルチャーを作り上げてきたタワーレコードの各種ノウハウは、業界や商材を変えて、今でも通用しそう。

 

と、同時に斜陽を迎えた要因を“変化に対応できなかった”と冷静に振り返ってもいる。

 

NO MUSIC NO LIFEの精神とともに、日本をはじめ、世界中に店舗拡大できた秘密も明らかにされると同時に、NO MUSIC NO LIFEの精神がストップした時、本格的な斜陽を迎えたことも明らかになる。

 

財布を外部任せ、コンサルや銀行任せにすると、決定的に文化が損なわれるんだな。形のないものを売りたい場合、これは大事な教訓さ。

 

音楽の小売りという、新しい市場に果敢に飛び込んでガリバーとなったタワーレコードは、デジタル配信という新しい市場に敗北する。音楽がタダになることで破壊されたのは、先人が作り上げた文化なんだな、哀しいことに。

 

音楽の小売りという業態は失速するけれど、NO MUSIC NO LIFEという生き方が、今度は浮上する番かも。万物は流転して、ALL THINGS MUST PASSなんだから。会社は手放しても生き方は手放さない、センス抜群の創業者と創業メンバーの物語は、見終わった後にも優しい気持ちと多幸感を与えてくれる。わりと好き。

 

お休みなさーい。