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クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

低―い位置から見たウェブメディア興亡史『ウェブでメシを食うということ』読んだ

読書 レビュー

低―い位置から見たウェブメディア興亡史『ウェブでメシを食うということ』読んだ。

ウェブでメシを食うということ

ウェブでメシを食うということ

 

 角川書店から刊行された全15巻の角川インターネット講座が、ネット社会の上層、エスタブリッシュメントによる総括だとすれば、こちらはもっと低―い位置から見たネット社会が描かれる。

 

著者は、『ウェブはバカと暇人のもの』を書いたネット編集者でライターの中川淳一郎氏。ネット社会を牽引してきた人たちが作った入れ物に、中身、コンテンツを提供し続けてきた人、自称“IT小作農”。

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)

 

 各層から、ネット黎明期を振り返る本やコンテンツが出回るようになった。ネットも幼年期の終わりを迎えつつあると感じる、今日この頃。『ウェブでメシを食うということ』にも、ノスタルジーがいっぱい。

 

テレビブロス編集者を経てネットニュース編集者として、長くネットニュースの最前線に居る人。痩身でインテリっぽい風貌に博報堂出身ながら、エンタメ路線、ぶっちゃけ下世話な路線が主戦場っぽい。最近ではLIGのサイトで、真っ裸になってた記憶も鮮明。

 

著者が嫌いなネットサービスと名指しするはてなユーザーで、はてな経由でネット情報に触れてきた。なので描かれるネット社会のあれこれも、知ってるようで知らないこと、あるいは受け止め方が180度異なっていたりすることもあり。ネット社会は広大だ。。

 

はてなのコミュニティは独特だから、同時期のメインストリームはこうなっていたのかΣ(・□・;)と今さらながら驚ける。

 

ネットファーストが当たり前となる少し前、テレビや新聞・雑誌にラジオといった主要メディアに追いつけ追い越せと互いに助け合ってきた名残か、ネットメディア同志の横のつながりが濃厚だった時代。アルファブロガーやアルファツイッタラー、あるいはネット有名人の名前がてんこもり。

 

編集長・編集者としてたくさんのウェブライターの面倒を見てきた人。すでにご意見番となっている人だけでなく、これからの活躍が期待できそうな若手の名前もあり、こいつらをご贔屓にね!という著者の面倒見のよさもうかがえる。

 

きっとabemaTVでは、ここで紹介されていた人の幾人かはコメンテーターとして活躍するんじゃないかと、勝手に想像。ウェブの人は、ウェブ出身の人を贔屓にするから。

 

けっこう無茶ぶりもやらかしながら、企業と組んでお仕事をされてきて、ウェブニュースといえど、信頼性には相当気を配ってきたことも明らかにされる。

 

はてなブックマークというソーシャルブックマークサービスはその辺無頓着で、著作権無視サイトや数日したら消されてるような怪しいニュースでも、面白さファーストでホッテントリ入りしてしまう。最近は対策がなされたのか、別の事情でもあるのか様子が違うけど。

 

著者の「はてな嫌い」には、かつては日本のグーグルになるかと期待を寄せたのに、結局はそうならなかった落胆がある気がしてしょうがない。

 

そして真偽不明な情報や、時には「ネットがあったから人生がよい方向に変わった」というネット美談風の逸話も政治的に極端に偏った意見も、ブックマークを使えば拡散させやすい。プロパガンダに利用されやすいから、消耗しつつも精度の高い情報を送り出してきた人からすれば、きっと腹立たしい。

 

そんなことなーんにも考えずに使ってたけどさ。一見賢しげだったりすると、つい騙されやすくなるんだな。語り得ないことには言及しない、おバカな態度の方が実は賢明なのだと悟るには、ある種の通過儀礼も必要だから。

 

ところが今のネット社会は通過儀礼には手厳しくて、一発レッドカードが待ってたりする。

 

・普通とは異なる行為を公共の場でやったことを報告してはいけない

・自由な場であるのは、カネ稼いでいない人だけ

・ネットでスキャンダルはウケない、やってはいけない

 

あたりは、これ以上失敗する人が出ないよう、オジサンからの親切なアドバイス、いわば遺言になっている。

 

同時に、だからはてな嫌いなんだね。。とよく理解できる。愚行権の行使に大甘な人が、ごく一部ながら強力に存在するのがかつてのはてなでもあったから。

 

愚行権の行使には大甘で、高尚な話題が好きで、でも意識の高さに財布が伴うことは少なくて。

 

長らくはてなユーザーだけど、コミュニティに深くコミットする気になれなかったのはそのせい。東日本大震災の後、運営が設けた寄付サイトには思ったほど寄付が集まらず、日頃思う存分政治談議をしてるわりには何だかな。。と思って以来そうなった。

 

怪しい人が多数存在していたネット社会も上場企業主導に変わり、愚行権の行使にも厳しくなった。もうウケないし、誰も喜ばない。バカやってるように見える人も、いくつものハードルをクリアしてやってるんだ、きっと。一般人が真似したら、大火傷する。

 

ネットが当たり前になってabemaTVや、Kindle unlimitedにポケモンGOに。可処分時間の奪い合いもますます熾烈になった。各人が「好きなもの」にますます没頭しやすくなったなかネットで生き残ろうと思ったとき、フロントランナーとして立ち塞がるのが、『ウェブでメシを食うということ』に出てきた人たち。

 

海のものとも山のものともわからない黎明期を、共に切り開いてきたのがこの人たち。そこで培われた信頼やつながりは強固なものだから、ニューカマーにはますます厳しい。はてなユーザーには、とりわけ厳しそう。

 

かつては新天地だったネット社会にも、すでに重鎮がどっかり腰を下ろして、マナー違反をする人間に目を光らしている。相当な数の後進を育ててきた彼らの、“大人しくしとかんかい”を跳ね返すには、相当なはねっかえりじゃないと難しい。

 

自称IT小作農とはいえ、それなりにネットの目立つ場所で生き残り続けてきた人が振り返る、ネットクロニクル。

 

歴史は、生き残った人によって紡がれるを実感した。かつてはネット論壇をにぎわした人の名前、故意なのかすっ飛ばしてる気がしてしょうがない。匿名の哀しさやね。

 

お休みなさーい。