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クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

『商店街はいま必要なのか「日本型流通」の近現代史』読んだ

商店街をタイトルに持ってきた本、たくさん並んでる。それだけ商店街に対する関心が高いと見るべきなのか。欧米とはまた違う、独自進化をとげた日本型流通の近現代を振り返りながら、小売業や流通の今を考える、『商店街はいま必要なのか「日本型流通」の近現代史』を読んだ。

 中小小売商や商店街を、日本型流通の主役と位置づけ、その来し方行く末について考えるヒントがいっぱい。「イトーヨーカ堂」や「ジャスコ」を百貨店だと思っていた著者のエピソードが衝撃的なら、百貨店を知らない大学生も衝撃的。そういやそもそも百貨店、デパートと、イオンモールのようなショッピングモールとの違いって何なんでしょうね。レストランもあれば、遊園地っぽい遊び場もあって複数店舗が連なっていれば、両者に違いはあんまり無いように思える。

 

 

この本では、百貨店・通信販売・商店街・スーパー・コンビニと5つのパートに分かれ、それぞれの業態の歴史と特徴について述べているのでお勉強になる。漠然とその違いについて知ってはいても、決定的な違いはどこにあるのかは案外知らないものだから。

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 おやつとかアイスとかお菓子とか。限定品や流行の発信地は今コンビニになってる。コンビニにまで「降りて」くると、おっ流行ってるんだな。あるいは、流行らそうとしてるんだなと判断する。かつてその役目は百貨店が担ってた。

 

 

流行の発信地だったから、昔からあるような百貨店はゴージャス空間だった。ヴォーリーズが設計した大丸心斎橋店や、日本橋高島屋三越も、たいそうフォトジェ二ック。

 参考:☆大丸心斎橋店/大阪の近代建築・洋風建築/ヴォーリズの建築☆

 

流行の発信地で人から羨ましがられる職場だったから、そこで働く女性も「デパート・ガール」として人気だった。未婚女性という、安価で良質な労働力の大量確保にも成功する。結婚までの腰掛けとして、華やかな職場に勤めた女性は、やがて優良顧客となってやっぱり百貨店を支えるようになる。

 

 

百貨店から通信販売へと。一見飛躍しているようでいて、両者にはその実深―いつながりがあった。キーワードは「大衆化」と「労働力」

 

新しい業態の進出は、いつの時代でも既存勢力の反発を招く。反発をやり過ごす最も賢明な方法は、労働力にしてしまうこと。安価で良質な労働力は、やがて熱心なファンとなって、新興勢力が世の中に馴染むための土台となる。

 

 

スーパーは、デパート・ガールよりももっと身近な職場。憧れの職場ではないけれど、家事や育児の合間に既婚女性がパートで働くのに都合のいい職場。初期の頃は新規出店が続くから、未熟練労働者、例えば高校を出たばかりの若者の受け皿としてももってこいだった。

 

 

労働力として「誰が」働いていたのかもあわせて考えると、新興勢力と既存勢力の対立の構図もまた、興味深いものになる。

 

 

コンビニの始まりは、スーパーに存続を脅かされる独立小売商や問屋だった。そこで働く人たちは、職人かたぎの熟練労働者。

 

 

アメリカで始まったコンビニも、日本に入ってくるとなぜか独自進化をとげ、コンビニオーナーには家族経営が求められる不思議。パパママストア、商店街にあったら少なくとも夜間は店を開けなくてもいい。24時間営業で年中無休なら営利も追求しやすく、営利を追求するには家族で一心同体だったら文句も出にくい。あこぎや。小売業や流通の最終形態がブラック企業なら、それ進化じゃなくて退化にしか見えない。

 

 

百貨店・通信販売・商店街・スーパー・コンビニと、小売業や流通の進化や隆盛を支えてきたのは大量生産・大量消費社会。でももう、無理でしょ。日本では、子供の数も移民も急には増えない。大量生産・大量消費で疲弊するよりは、縮小めざして昔に学ぶのも、ひとつの解決策。

 

 

著者の意外な出自も明かしながら、この本では商店街が必要か否かは明らかにしていない。ただ商店街が活性化する条件を、クリアーにしているだけ。

 

 

今後も膨張する都市と、そうでない街と。商店街が必要か否かの最適解は、場所によってもライフスタイルによっても違う。

 

 

個人的には商店街どころか個人商店でも買物するし、マルシェっぽいところも大好き。ショッピングカートにガンガン商品放り込んでいく買い方よりも、その日その時必要なものを、少しづつ対面販売で買う方が好き。買い物に出かけるのは散歩も兼ねてる暇人だから。

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 ところでこれからは、定年を迎えて暇な人が増えるでしょ。特に地方都市で。平日の真昼間でも、手頃な価格でコーヒーが飲める喫茶店やカフェは大盛況。暇な人は、他愛のないやり取りでも、コミュニケーションが取れる方を好むんじゃないかな。

 

 

札幌駅と大通を結ぶ地下歩行空間や、道庁前。産地直送で手頃な価格の野菜、鮮度が重要な商品を売りに来る人はいっぱいいる。彼らはコンビニ店員よりも愛想がいいし、親切。

 

 

今はまだ便利が魅力となっていても、やがて便利も当たり前となって魅力が薄れてきたら、今度は別の“ウリ”が魅力となる。

 

 

愛想がよくて親切なお店の人から、「今度ここにお店出しますのでよろしく!」と言われたら、リピーターになる確率は結構高いと思うな。

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 そもそも見知らぬ他人と話すより、見知った商店街の人と話す方が、ストレスも少ないし変な勘繰りもしなくていいのよね。スマイル0円の方がずっと恐ろしい。ノスタルジーや、情緒だけでは財布の紐は開かない。財布の紐が開くのは、実利を伴った時だけ。鮮度抜群で愛想良しに対しては、財布の紐もたやく開きそう。

 

商店街というある種のホットワードを含みながらも、その中身は旬を過ぎても日本の近現代流通史として頼りになりそうな、真面目な本でした。

 

 

ちなみに、商店街はいま必要派。

waltham7002.hatenadiary.jp

 お休みなさーい。