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クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

女と子供の目を通して見る戦争映画その1

映画 レビュー
ワンテンポずれてると、余計な政治性も勘繰られずに済むから書きやすい。
 
 
桜が咲いたら卒業を描いた映画を思い出すレベルで、8月になれば思い出す。ドンパチシーンは皆無な戦争映画、『マレーナ』と『名もなきアフリカの地で』。どちらも女と子供の目を通して描かれる戦争映画。戦争によって翻弄される人や家族を描いていて、どちらも忘れ難い。
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 リアルな戦闘シーン多目でドンパチやってる戦争映画は、いかにも「オトコノコ」が好きそうねと、あんまり記憶に残らない。感動するに決まってる『シンドラー のリスト』のような映画も、文科省推薦みたいで何度も見る気が起こらない。戦場で銃をとって闘う姿より、戦場から遠く離れた場所で、非日常の中の日常を生 きる姿に最もシンパシーを感じる。

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 (戦闘シーン以外のエピソードが良かったけど、やっぱりドンパチ過ぎる。。)

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『マ レーナ』は、イタリアのしなびた海辺の町が舞台。小さな町には不釣り合いな、”鄙にはまれな美人”が物語の主役。イタリアのゴージャス美人女優モニカ・ベ ルッチが、主役のマレーナを演じていてたいへん目の保養になる。モニカ・ベルッチ大好き。(ラテン系のグラマラス女優が好物で、ペネロペ・クルスも贔屓に してる。)既婚で後に戦争未亡人となるマレーナに憧れる、レナート少年の目を通して、戦争に翻弄される女性と、歪む世の中を描いてる。

 

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 町を歩けば誰もが振り返る、超絶ゴージャス美人であるゆえに、マレーナは常にあらぬ中傷にさらされている。夫が出征中で留守なことも災いして、女性陣からは 反感と顰蹙を買い、男性陣からは好色な視線に晒される。どんな美人であっても”人のもの”であれば、良からぬ噂の的になることもなかったけれど、折悪しく戦時中で夫は不在。後には戦死してしまうから、マレーナはますます窮地に立たされる。

 
 
飛 び抜けて美しい容姿を持つ以外は平凡で、主婦としてもフツーでしかないマレーナは、非実用的な人。特技はラテン語。第二次大戦中では全く役に立たず。もし も舞台がローマやあるいはパリであったなら、マレーナにも違う生き方があったかもしれないけど、生憎そこは海辺のしなびた町。戦争という非常時にあっては 実用性や有用性が尊ばれ、非実用的な人の生きる道は険しい。
 
 
困窮したマレーナに目を付けるのは、時の権力者。町の有力者から愛人になれと迫られた挙句、最終的にはナチス御用達の娼婦になってしまう。結果、町の人の憎悪も一身に集めてしまう。戦時にあっては、非実用的だけど飾って眺めておきたいほど美しい装飾品を、最も高く評価して高値を付けるのは時の権力者で、多分彼らにはコレ クター気質も入ってる。
 
 
レナート少年の目を通しての映画だから、マレーナの心情が、彼女本人の口から語られることはない。ただ嫌がってる、それも泣くほど嫌がってることだけが伝 わってくる。ついでに彼女が髪を切り、いかにも娼婦な出で立ちで町の人の前に現れた時には、死んだ魚のような目をしてる。
 
 
享楽的に振舞ってはいても、心は既に死んでしまっているマレーナなのに、終戦はさらに容赦なく彼女を打ちのめす。非実用的なものを最も憎悪するのは、実用的な人なのよね。
 
 
戦争の暗い一面、タガが外れた人間が、おぞましいことをする姿を見たくないから、戦争キライ。特に深い理由もなく嫌っている人間を「あいつ気に喰わないよね」で滅多打ちにできる。それが戦争の狂気。
 
 
レナート少年の淡い性愛込みで描かれる映画だけど、お色気シーンはほとんどない。モニカ・ベルッチの美しい肢体が滅多打ちにされる時にだけ、ようやく目にするくらい。きれいなものは、きれいなものとセットで見たいんだけどさ。
 
 
そしてひどい目に遭ったマレーナは、いずことも知れず消えてしまいました。
 
 
と いうエンディングを用意しなかったところが、この映画の素晴らしいところ。冷静に考えれば、他にどうしようもなかった無力な人を、「あいつ気に喰わないよ ね」でぶん殴った。小さな町では、獣に帰って暴力を振るった忌まわしい記憶を抱えたまま日々を過ごしていくしかなく、恥や罪を感じてる人はきっと無口になる。饒舌になる人は、積極的に罪をチャラにしようと目論む。無口でも饒舌でも、日常の中に時折訪れる、非日常とともに生きていく。
 
 
マレーナは終始無口で、彼女の世界に生きることが許されてるのは、彼女の夫だけ。マレーナに、彼女の望む世界を取り戻してくれたのは、彼女をずっと見ていたレナート少年。その頃にはもう、少年からも卒業してた。
 
 
 無駄に長くなってしまったけど、削るのに疲れたのでこのままで。『名もなきアフリカの地で』はまた別の機会に。
 
 
お休みなさーい。