クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

『あるスキャンダルの覚え書き』を見た

最近早起きです。
 
早く目が覚め過ぎた先日は、なぜか突然昔見た映画『あるスキャンダルの覚え書き』がムショーに見たくなって、Amazonインスタント・ビデオを漁ってみた。Amazonインスタント・ビデオの素晴らしいところは、見たい時に見たいものが見れるところ。最近はレンタルで借りるより前に、まずはAmazonインスタント・ビデオをチェックしてる。

 (Amazonインスタント・ビデオをブログに貼り付ける方法がわかりません)

 

それはともかく、『あるスキャンダルの覚え書き』について。ケイト・ブランシェットジュディ・デンチという、イギリスを代表するオスカー女優ふたりが共演してる。
 
 
ケイト・ブランシェット、『エリザベス』での白塗りが強烈過ぎて、キレイな女優さんという印象を持てないでいた。『あるスキャンダルの覚え書き』の彼女は、豊かに育った美術教師という役柄で、愛嬌たっぷり、イノセントな美しさを振りまいてる。しかも相当スリムでスレンダー。きれいな人でした。
エリザベス [Blu-ray]

エリザベス [Blu-ray]

 

 

対するジュディ・デンチ、『あるスキャンダルの覚え書き』では、皮肉な毒舌屋で孤独な老教師を演じている。この映画で彼女を見てからずっと、彼女が怖かった。『マリー・ゴールドホテルで会いましょう』でイメージを覆されるまでずっと。
主人公は生い立ちも社会的階級も生活環境も異なるものの、自身を見失い、孤独から抜け出せないという共通点を持つ女教師バーバラとシーバ。教え子とのスキャンダラスなロマンスに走るシーバと、その関係を利用してシーバとの友情を堅固なものにしようと歪んだ本性を徐々に現わすバーバラ。共依存となった関係がやがて、エゴむき出しの行動を生み出していく……。
 
”彼女の恋の相手は15歳だった”。教師でありながら、教え子と禁じられた恋に落ちる美術教師のシーバ。ケイト・ブランシェット演じるシーバが、ジュ ディ・デンチ演じるバーバラの前に現れたのがすべての始まり。
 
 
映画の中で「週末はコインランドリーに行くぐらいしか予定のない女の孤独など、シーバにわかってたまるか」みたいなセリフがバーバラから飛び出すんだけど、このシーン、この作品中最も度肝を抜かれるシーンのひとつ。
 
 
何てったって御年72歳のジュディ・デンチによる、入浴シーンだから。声にならない声が出たね、思わず。
 
 
このシーンはすごく重要で、このシーンから二つのことが学べる。
・週末を一緒に過ごす友人を持たないバーバラは、孤独な人であること
・バーバラの家には洗濯機がない。彼女は、コインランドリーに行く階級の人なんだとわかる
 
 
洗濯機がないフラットやアパート。欧米だと多分珍しくない。珍しくはないけれど、長年教師、恐らくは公立校の教師を続けていても、”持たざる人”なのがバーバラ。
 
 
対するシーバは”持ってる人”。
 
 
父親に間違われるような年上だけど夫もいて、娘と息子にも恵まれている。家庭に恵まれただけでなく、美貌も芸術の才能もあれば、ついでに亡父からの遺産もあ る。一見すると何不自由のないシーバ。よーく見ると欠落もあって、その欠落が彼女を暴走させた遠因にもなってる。豊かに育った人らしく、奔放過ぎるのが欠点で、その奔放さ、言ってみれば無邪気さが破滅を招き寄せる。
 
 
教え子との情事に溺れるとか、非常識にもほどがある。非常識でも、そんな恋とも言えない情事に溺れるのがシーバという人で、そんなシーバを支配したいという 暗い欲望に取りつかれたのがバーバラ。皮肉な毒舌屋ではあるけれど、一見すると教養豊かな常識人でもあるバーバラの内面には、とても非常識な欲望が眠って いる。その非常識な暗い欲望に火が付いた時から、スキャンダルが始まる。
 
 
非常識という面ではある意味二人とも同じだけど、その魂の在り方は全然違う。決して同じ色に染まることはないものに惹かれるのが、バーバラの不幸なのかも。
 
 
この映画では、もうひとつ忘れられないシーンがある。それは、シーバと恋に落ちた(というより情事に溺れるの方が正しい、お年頃だもの。)15歳の少年の母 親が、シーバを滅多打ちにするシーン。文字通り滅多打ちでボッコボコ。
 
 
自分の息子をこんな目に遭わせやがってという怒りをストレートにぶつけてる。その怒りは、常識というラインを決して踏み越えることのない人の怒りを表してるようだった。豊かに育った人は、時としてルール破りにも寛容で鷹揚だから。常識を破る俺たち私たちってカッコいい!みたいな価値観。
 
 
ルール破りにも寛容で鷹揚な”持てる人”たちと、常識というラインを決して踏み越えることのない”持たざる人”との対比が鮮やかなシーン。『あるスキャンダルの覚え書き』が突然見たくなったのも、このシーンが見たかったから。
 
 
見た人がみな、気持ち良さを感じられる映画では絶対にないと言い切れる。見る人によって評価が分かれる映画。だからこそ、自分が許容できるラインを知るためにも、たまにはこういうのもいいんじゃないかと思う。果てを見てみないと、果てがどこにあるのかもわかんないでしょ。道徳や倫理観に欠けたノン・フィク ションを持てはやすくらいなら、フィクションの方がずっとマシ。
 
あるスキャンダルについての覚え書き

あるスキャンダルについての覚え書き

 

 原作もあるらしい。

 

※不正確な記述があったので、訂正しました。

 

お休みなさーい。