クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

イギリスの不況とLGBTとエイズと

炭鉱労働者とLGBTとエイズが出てくる映画『パレードへようこそ』を見て、思い出した映画4つ。
 
 
フル・モンティ』は、かつては鉄鋼業で栄えた街を舞台にしたイギリス映画。不況下の失業者を描いたコメディで、コメディだから好き。

 鉄工所をクビになった男達が、生活費稼ぎにストリッパーとなる。まさに体を張った映画なんだけど、君たち体張らんでもええで。。と思う、それはそれはだらし ない、目を覆いたくなる中年男性の裸体をたくさん目にする。一度見たら時間を置かないと、続けて見るのはちょっとツライシロモノ。

 
それでいて、目を背けたくなる裸体をそれでもさらす彼ら鉄鋼ストリッパーから、元気がもらえる映画。
 
 
白血病治療の寄付金集めに、老婦人たちがヌードカレンダーを作ってしまう『カレンダーガールズ』といい、いざとなったら脱ぐのはイギリスの伝統でお家芸なのか。謎。『カレンダーガールズ』は実話が基になってるから、ますます謎。
カレンダー・ガールズ 特別版 [DVD]

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1970年代にゲイをカミングアウトしながらも、アメリカ初の公職についたハーヴィー・ミルク。『ミルク』は、暗殺されるまでの彼の生涯を描いてる。この映画を見ると、今までにない新しい価値観を広めたいという大志を抱く人を、激しく憎むのはどんな人かがよくわかる。取り残される人の憎悪を、侮っちゃいけないのよ。
ミルク [DVD]

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 ついでに、1970年代~80年代の少女マンガという、当時新しかったジャンルで同性愛がひんぱんに登場したのもうなずける。その時代に限らないけどさ。

 
 
まずは、目新しさから(温故知新という気もするが。。)。ついで、新しい考えが社会に根付いた時、疑問を持たずに新しさを受け入れる世代が、後世にはきっと生まれてくるから。
 
 
少女マンガの読者は、基本的にはやがて母となる。
 
 
『パレードへようこそ』でも、同性愛者の息子を受け入れられない母親が出てきてたけど、自分とは違う価値観だからと子供を愛せないのは悲劇。
 
 
新しい価値観だという疑問も偏見も持たずに新しさを受け入れる、やがて生まれてくる次の世代のための種まきだった。少女マンガに氾濫してた同性愛を、そんな風に受け止めてる人もいるんです。
ファミリー! (1) (小学館文庫)

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『運命の瞬間~そしてエイズは蔓延した~』

 プロテスト・エンターテイメントという言葉を、今日初めて知った。

 何らかの抗議の意味を込めながらも、エンターテイメントとして作品に昇華した。その種の映画として初めて見たのはコレだったかも。惜しいことにDVD化されてない。相当面白かったのに、残念でならない。

 
 
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)を中心に、エイズとの闘いを描いてた。リチャード・ギアアンジェリカ・ヒューストン、あるいは名前は思い出せないけど、あーこの人知ってると思う有名俳優・女優が驚くほどのチョイ役で多数出てくる。
 
 
・感染ルートを特定するために、ゼロと呼ばれる(うろ覚え)ウィルス感染者を追うストーリー
・感染ルートのひとつに汚染された血液製剤があり、汚染された血液製剤を市場から追放するためのストーリー
・世界初のエイズウィルス発見者となるための、アメリカとフランスの競争を描いたストーリー
 
 
と、一本の映画の中にいくつものエピソードを詰め込んだ、盛りだくさんの映画だった。
当時は主役のドン・フランシスを演じるマシュー・モディーンも若かった。。
 
どのエピソードもスリリングで見応えがあったけど、一番印象に残っているのは、汚染された血液製剤ルートをつぶすエピソード。
 
 
汚染された血液製剤を社会問題化するために、エイズ感染者の中から社会的地位の高い人物を選びだし、彼らに真実を告げることで事態を動かそうとするCDCの メンバー。ロビー活動しようにも資金がない、公的機関の限界と、限界を突破する知恵に目から鱗が落ちた。正面突破が無理ならば、搦め手で。正攻法だけが攻略法じゃないんだと知った。
 
 
盛りだくさんのエピソードを詰め込みながら、通底していたのは「怒り」。どうにかしようもあったものを、どうにもできなかったことに対する怒りにあふれてた。
 
 
今見ると、感動より古臭さが勝りそうではあるけれど、もういちど見たいと思ってる。詰め込み過ぎで、最後は無理やりエンディングに持っていったような記憶もあり。不完全さも込みで、もう一度見たい。できれば高画質で。

 

そしてエイズは蔓延した〈上〉

そしてエイズは蔓延した〈上〉

 
そしてエイズは蔓延した〈下〉

そしてエイズは蔓延した〈下〉

 

 お休みなさーい。