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クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

悪事をそそのかす理由は二通り

日記 読書
判断力の乏しい子供にルールから逸脱した行為をそそのかす場合、その理由には2通りある。悪事をそそのかされた子供で思い出したのが、『小鳥の墓』という中編小説。上田早夕里の『魚舟・獣舟』に収録されている。
魚舟・獣舟

魚舟・獣舟

 

(表題作の『魚舟・獣舟』もとっても面白い)

誰もが居住権を欲しがる、クリーンな理想都市に居住する少年が主人公。そこに住んでいる限り安全で、最高の教育が受けられる、将来が約束された場所。そこに違和感と居心地の悪さを感じてる主人公の少年を、禁じられた「外」へと連れ出すもう一人の少年。

 
 
この、もう一人の少年・勝原はとっても悪い奴。
 
 
理想教育都市の中でも”ワル”と噂される勝原は、監視の目が届かない「外」では暴力をふるいまくり、不法行為に手を染めたりと、やりたい放題。悪事に快感を覚える愉快犯というよりはもう少し複雑な性格で、人を「壊す」ことが愉快な性格破綻者。人と違う生い立ちが、勝原のいびつな人格形成にひと役買っている。
 
 
誘われるままに性格破綻者の勝原と行動をともにする主人公の少年は、禁じられた「外」に出るというタブーは犯すけど、道は踏み外さない。
 
 
タブーを犯す人がみな、悪事に手を染めるとは限らない。
 
 
ある事件をきっかけに、少年たちの冒険にも終りがくる。冒険が終わってからがこの小説のキモで、少年たちの冒険が”なぜ見過ごされていた”のかが、一番の読ませどころ。
 
 
厳しい監視の目を受け入れ、厳格なルールに従順に従うことは、知性の証しなのか。それが、賢い子供のすることなのか。
 
 
将来が約束された場所で、大人たちが言う、成功のためのTIPSを受け入れた時点で、今の大人たち以上の成長はもう無理なんじゃないの。
 
 
知的好奇心が強い人間ほど、箱庭の「外」に興味を示す。
 
 
ここに居れば安全だよ、将来は約束されたものとアナウンスしながら、「外」への脱出ルートはたやすく開かれている。いってみれば、悪事を犯しやすい状況を作って、タブーを敢えて犯す、知的レベルの高い人間をあぶりだすようになっている。
 
 
あとは、タブーを犯した人間を追跡調査して、システムに害をなす人間か、システムの維持・繁栄に役立つ人間かを見極めればいい。
 
 
すべてはお釈迦様の掌の上。追跡調査される被験体のキモチはもっと複雑で、真相を知ったからといって、はいそうですかと素直になれない気持ちまでを描いていたのが『小鳥の墓』。
 
 
悪事をそそのかす理由、悪事をおかしやすいシステム設計になってる場合、そこには二通りの理由がある。
 
 
その1、与えられた状況では満足できない、知的好奇心の強い人間をあぶりだすのが目的。
 
 
その2、今あるシステムの価値をさらに高め、アップデートできる人間なのか。それとも今あるシステムに、ただ害をなすだけの人間なのかを見極める目的。
 
 
わざと厳格なルールで縛られた世界を作って、そこから逸脱する規格外の人間をピックアップし、新世界を創らせようとする物語。現代は物語の外に飛び出してるかも。
 
 
ただ害をなすだけだったら、排除される。厄介なのは、ただ害をなすだけの地頭のいい人間を歓迎する、アンダーグラウンドな世界もあること。システムに使われる側よりも、システムを上手に使う側の方が、はるかに自由。
 
 
アンダーグランドな世界には、目をつけられたくないもの。ひなたぼっこしながら、渋茶(コーヒーでも紅茶でも可)すすってるのが理想の生活。
 
 
好奇心は猫を殺すは言いえて妙だと感心しながら、カフェ・オレすすってる。
 
 
お休みなさーい、よい週末を。