クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

サッポロ・フットボール映画祭2015

3月14日のホワイトデーは、狸小路の札幌プラザ2・5で行われた、『サッポロ・フットボール映画祭2015』に行ってきた。

f:id:waltham70:20150318204629j:plain

世界各国のサッカー映画を集めたこの映画祭、横浜・東京周辺ではサッカーファンのハートをつかみ、年々熱く盛り上がってるとのこと。ほんとか???
 
 
サッカーをテーマとした映画が一日中上映され、合間に元日本代表選手や元コンサドーレ札幌の選手によるトークショーを挟んだプログラム。上映された映画は以下の通り。

f:id:waltham70:20150318204625j:plain

f:id:waltham70:20150318204620j:plain

『ネクスト・ゴール』ドキュメンタリー
エリックを探して』コメディ・ドラマ
『メッシ』ドキュメンタリー
『プライドin ブルー』ドキュメンタリー
 
 
一 日通しで見ることもできたけど、時間の都合で見たのは『エリックを探して』のみ。アメリカ領サモアの弱小ナショナルサッカーチームを追ったドキュメンタ リー『ネクスト・ゴール』も見たかった。。いつもは朝イチでくる宅配便が、想定外に遅い時間になったので見逃した。それはさておき『エリックを探して』 は、サッカーを全く知らない人にもおすすめとなっていた通り、最後にはホロリとくるコメディで面白かった。
郵便配達員エリックは、何をやってもうまくいかず不満だらけの毎日。そんな彼の前に、憧れの存在だった同じ名前のエリック・カントナが突然現れる。それ以来、エリックの冴えなかった人生がどんどん変わって輝いていく。(映画祭フライヤーより)
マ ンチェスター・ユナイテッドの元エースストライカー、エリック・カントナ本人が出演。カントナという選手の人となりについて予備知識があれば、きっともっ と楽しめた。ユニフォームの襟を立てたり、インタビューで格言めいたことを言いだしたりと、キャラの立った選手だったらしい。
実在する有名サッカー選手が、冴えない郵便局員エリックの日常に突如出現する、「不思議ちゃん」映画。そこにはカラクリがあるけれど、「不思議ちゃん」映画だから最初は直視するのがやや辛かった。
 
 
バツ2で仕事もイマイチ。毎日のようにパブで飲んだくれ、別れた妻に未練ありあり。そんなエリックの日常は、スクリーンを通して見るとさらにとほほな感じ。とほほな日々がある日急転直下するので、そこからはお楽しみ。
 
 
こ の映画、とほほな毎日にカントナが降臨するところがポイントで、ある種の人にとっての”絶対ヒーロー”を描いてた。夢にまで見るヒーローが現実に浸食する くらいだから、主人公エリックはサッカー大好き。エリックだけでなくその仲間たちも、サッカーが生きる糧になっている。
 
 
やたらとパブで飲んだくれていて、時には贔屓のチームが元で喧嘩もする。喧嘩して勢いよく店を出て行っても、「ゴール!」の声を聴くと「どっちが入れた!?」と戻ってこずにはおられない。愛すべきサッカーバカ達。
 
 
物語、フィクションの主人公が、とてもカッコよく人生の舞台に幕を下ろしてジ・エンドとなるのと違って、現実のヒーローはカッコいいばかりでもない。
 
 
フィールドでは華々しく活躍したカントナも、フィールドから降りた後は自分探しで若干迷走中。それもまた、同時代を生きる生身のヒーローらしさをかき立てて、カントナの絶対ヒーロー感は強まるばかり。
 
 
フィクションのヒーローは物語の中で時間を止めるけど、同時代を生きる生身のヒーローは、崇拝者といっしょに歳を取る。
 
 
冴えない毎日を、そのひと蹴りそのひと言で輝けるものに変えてきたヒーローは、窮地にあってはゆくべき道を示す、絶対ヒーローに変わる。
 
 
この作品の監督ケン・ローチは、一貫して労働者階級に焦点をあてた作品を制作し続けてる人らしい。初見でした。
 
 
ヒーローがいなくても生きていける人もいるけれど、人によってはそうじゃない。結婚した、離婚した、浮気した。事業で成功した失敗した。有名人のゴシップがいつでも娯楽の最上位を占めるのは、手が届きそうにない人の日常を垣間見るのが楽しい人が、それなりにいるから。
 
 
手は届かないけれど、自分達とそう遠くない生活圏で、一緒に歳を取っていく。生身のヒーローが照らす光は実は結構明るくて、その光を消すな絶やすな、絵空事 のフィクションにとらわれるな。物騒になったイギリスの時節柄、社会派の監督らしくそんな社会的メッセージも込めてたように思う。
 
 
その言動に影響を受けずにはいられない。心の中にそんな絶対ヒーローを持つことで、ピンチに陥っても日常に生還できれば、誰かの絶対ヒーローとなることもできる。ヒーローの効用を謳い上げていた。
 
普 段は狸小路に縁のない(飲み屋が多い通りだから。。)、サッカー場にいそうな少年たちも来てた。お目当てはメッシか。映画のフライヤー握りしめて、彼らの フィールドから越境してきてた。ヒーローのためなら越境もする、崇拝者はそんなもの。だったら、ヒーローが示すのは善き道の方がいいよね。
 
 
横浜では過去4回の開催となったらしい。さて、札幌でも根付きますかね、このイベント。お休みなさーい。