クローズドなつもりのオープン・ノート

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『なぜ時代劇は滅びるのか』読んだ

久しぶりに紙の本で読書。『なぜ時代劇は滅びるのか』を読んだ。

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みっともない姿をさらし続けるのなら、いっそこの手で葬り去りたい、でもできない。この本は、愛憎半ばする時代劇へのそんな思いが交錯する書。
 
 
1977年生まれと時代劇の黄金期を知らない、若い著者が書いた本だから読みたいと思った。過去はすべて美しく見えるノスタルジーを離れ、客観性があるに違いないと期待したから。
 
 
読んだ感想としては、客観的な分析も多目ながら主観も多目で、主観>客観。時にさく裂する直言(苦言?)は、かなり毒が多目。冷静であろうとしながらも迸る熱情は若さゆえの過ちか。かなり面白かった。あらあらそんなこと言っちゃってと、ページめくりながらニヤニヤしてた。
 
 
そんな事まで言えちゃうのは、金輪際時代劇に関わるつもりがないからなのか。それとも今後もがっつり関わっていくつもりだからなのか。時代劇の企画にも関わってきたという著者の今後が一番気になった。その時岸谷五朗と顔を合わせたら、どうするんだろう。。
 
 
功労者も戦犯も、時には実名をばっちり出しながら、「50年かけてダメになってきた時代劇」の歴史をひもといてゆく。その過程で、映画からテレビへと主戦場が移り、時代劇の制作方法が変わるとともに、人材育成システムが機能しなくなった背景が浮かび上がる。
 
 
私自身は海外ドラマファンで、2014年に見た時代劇といえば『幕末太陽傳』の1本だけ。大河ドラマで思い浮かぶのは、福山雅治龍馬だけ。それさえも、正式なタイトルさえ思い出せない斜め見っぷり。テレビ時代劇が隆盛だった90年代前半には結構時代劇も見ていた。別に嫌いなわけでも食わず嫌いなわけでもない。
 
 
そんな趣味嗜好の人間からすれば、今の時代劇のダメなところ、こうすればもっと面白くなるのにをひっくり返すと、そのまんま海外ドラマが面白い、好きな理由になってた。
 
 
時代小説も、チャンバラやってる『バガボンド』や『無限の住人』みたいな人気コミックもたくさんある。お城や武将好きな人もたくさんいる。「時代もの」愛好者のすそ野は広いのに、テレビや映画に結びついていないだけなのか。
 
 
去年見た時代劇映画は『幕末太陽傳』の1本だけだけど、すごーく面白かった。時代劇ってこんなもんでしょという先入観が、ことごとく覆される感じで。今の「ダメな時代劇の型」を壊す、「型やぶり」なものが出てきたら、時代劇も蘇るんじゃないかな。そう思えてならない。
 
 
いろんな方面を慮ると、八方丸くおさまるようなことしか言えない。愛すべき対象が滅びるかもしれない今という時期と、意気軒昂なワカモノと。今書くしかなかったし、今しか書けなかっただろう。そんな「時代劇の今」が詰まっていた。
なぜ時代劇は滅びるのか (新潮新書)

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『幕末太陽傳』見た - クローズドなつもりのオープン・ノート