クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

自分の価値は自分で見つける

先進国に生まれた美人でお金持ち。他人から羨ましがられる職業につき、世界に通用する名門校で学び、母親は著名な起業家。彼女以上のゴールデンカードを持った人は滅多にいるものでもなければ、どんなコンプレックスからも自由なように見える。
 
 
そんなスーパーモデルのひとり、キャメロン・ラッセルが登場したTEDが面白かった。
 
 
白人で容姿に優れた若い女性。人種や性別を通じ、世界で最も「得をする」立場にある彼女でさえコンプレックスに苛まれると、率直に語っていた。
 
 
10年のキャリアをもち、ヴィクトリア・シークレットを始めラグジュアリーブランドの広告に多数起用されてきた、スーパーモデル。
 
 
ナイスバディを強調するような、マイクロミニのワンピース姿で登壇したキャメロンは、その場で生着替えを実行。といってもロングの巻きスカートを巻き付け、体のラインを隠すトップスを身につけ、ハイヒールをぺったんこ靴に履きかえただけ。
 
 
”イメージはパワフルだけど、同時に表面的なもの。”
モデルからどこにでもいそうな学生風にチェンジする、たった10秒の生着替えで、そのことを証明していた。
 
 
キャメロンがモデルになれたのは、遺伝子の「宝くじ」に当たったことと、数百年来続く美の伝統を受け継いだ、白人女性だからとも語る。
 
 
また、モデルは努力してなれるようなまともな職業じゃないから、モデル、中でもスーパーモデルに憧れることは、とても無謀なことなのだと仄めかしてもいた。
 
 
財布を忘れてブティックに行ったらタダになった。
信号無視をしても警官は許してくれた。
意外としょぼい、容姿で得をした経験を赤裸々に明かす一方で、NYで職務質問を受ける8割が、黒人やラテン系の少年とのデータも紹介する。見た目で損する人と得する人がいる現状を、充分自覚してもいた。
 
 
そんな現状の中で、最も「得をする」立場にいる・羨望を集める彼女でさえ、毎日が楽しくてしょうがないわけではないこと。完璧に見える外見についてでさえ、コンプレックスを感じていると明かす。
 
 
世界で最も見た目で得をする立場にいるキャメロンは今、やせた白人が美しいとされる風潮に異議を唱え、ファッション業界が作り出してきた、偏った美しさの基準を是正しようと動き出している。
 
 
このTEDを見ていて思い出したのが、やっぱりNHKでやっていた、『世界一服にお金をかける男たち』、サプール。
 
 
サプールは、アフリカはコンゴに住む、時には若くもないお洒落大好きな黒人男性たち。普段は電気工などで地味に働く彼らは、サプールとして活動する時だけ飛びきりエレガントに輝く。
 
 
ファッショングラビア誌を基準にすれば、彼らサプールの容姿は決してカッコ良くはない。カッコ良くはないけど、ファッションが大好きで、サプールであることに誇りを持って活動する彼らのライフスタイルは、誰もが真似できるものでもないからカッコいい。
 
 
容姿が全てじゃない。心からお洒落を楽しむサプールを見ていると、キャメロンの言うことはまったくもって正しく聞こえる。キャメロンの言う、偏った美の基準 はここでは通用してない。サプールのファンは、彼らが「得をしている」から群がってくるわけじゃない。彼らの存在が、彼らの人生も豊かにしてくれるか ら、サプールが好き。
 
 
社会が決めた価値観にとらわれず、自分の価値は自分で見つけてほしい。そう訴えることで、自らのコンプレックスからもようやく自由になれたかのようなキャメロンと、ファッションを通じて自己実現を果たし、コンプレックスを克服するサプールと。
 
 
自分を肯定できた人が、輝いている。
 
 
今日は大晦日。読みに来ていただいた方々に、お礼申し上げます。どうぞ良いお年をお迎えください。