クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

『インターネット的』を読んで。

コピーライターというより、今ではすっかり『ほぼ日刊イトイ新聞』の人で知られる糸井重里氏による、『インターネット的』を読んだ。

 

インターネット的 PHP文庫

インターネット的 PHP文庫

 
2001年7月に刊行された書籍に、『続・インターネット的』が加筆されたもの。刊行から10年以上経っての振り返りである『続・インターネット的』が載っているからこそ、今読みたいと思った。
 
 
イ ンターネットに触れてはいても、ギークではない人間にとって『ほぼ日刊イトイ新聞』は、安心して見られるサイトのひとつ。インターネットの中のNHK的位置づけで、コンテンツには”ほっこり”や”ほのぼの”するものが多くて、対象年齢も幅広い。教養もカバーしていて料理番組もある。
 
 
NHK的だから倫理的な偏向も少なく、それでいて運営者の主観が垣間見える。ほぼ日というフィルターを通して世界を見てる。
 
 
今も昔も、インターネットの中で大きな存在感を放つサイト運営者が、インターネットの来し方10年+αを綴った本、当たり前すぎることしか書いてなくて、拍子抜けするほどだった。
 
 
今読むから当たり前であって、現在はスタンダードとなってびっくりしないことを、10年以上前から看破して準備されてたのはやっぱり非凡。
 
 
そのおかげで、十年以上たった今でもサイトは生き残ってるどころか、TOBICHI(トビチ)というリアルショップまで実現させている。”ソフトがイニシアティブをとって、何かが生まれていく”場所を用意するところまで、ちゃんとこぎつけている。
 
 
インターネット大勝利。
 
 
大勝利とは書いたけど、インターネットを道具として使って何がやりたいかが明確だったからこそ、こぎつけた大勝利。
 
 
金銭的な価値で測ったら、上場にこぎつけた。あるいは瞬間風速的に大金を稼いだ、一般の人には知られてない会社や経営者ももっと他にありそう。
 
 
でも、瞬間風速的に大金を稼いだ、あるいは上場にこぎつけ上場益を手にした富裕層は、普通の人とは交わらない。普通の人の生活をそう変えることもない。
 
 
知らぬ間に、彼らが運営するお店や何かにお金を落としているのかもしれないけれど、そこに少しでも反社会的なものを感じ取ったら、お金落としたくない。
 
 
道徳や倫理に問題がある企業を避けて投資する、エシカル投資やBコーポレーション的なものの出現を、10年以上前から予見されていた。予見された上で、準備をされている。
 
 
ほぼ日手帳にハラマキにマフラーetc.ほぼ日発となった商品は、たくさんある。手帳もハラマキも、以前は積極的に選ぶ商品じゃなかった。手帳売場がにぎわうのに、ほぼ日手帳はきっとひと役買っている。
 
 
きっかけは手帳という安価なものだけど、買う楽しみができた。”無駄と思われるようなものを買って、それを楽しむ”消費のクリエイティブティのきっかけを作ってる。
 
 
TOBICHI(トビチ)が近くにあれば、きっと買いに行く。心地良いと思う世界観を提供したサイトが売るもの。それが欲しくなる世界が、『インターネット的』から10年以上たって出現してる。
 
 
富裕層ではない普通の人の生活を豊かにする。豊かにしてくれるものに敬意を払う。
 
 
ほぼ日がインターネットを使ってこの10年やってきたことは、それに尽きると思う。「豊かに」という、どうとでもとれる漠然とした概念を目に見える化した。敬意を払うための入れ物も作った。
 
 
豊かになるのに足りないものを見つけてきて、こんなのどうぞと差し出している。昔はネット越しに、今はネットを飛び出したリアルショップも使って。
 
 
インターネットがあれば、未来はバラ色に変わる。そんな熱量を、ほんのちょっと感じた頃がある。その熱量は、幻想ではなかったけど、今はもうそんなにピュアな目では見てないし、見れない。
 
 
インターネットを使えば、こんな悪さもできる。
 
 
汚れた目線で眺めていると、こういう悪さもできるんだ、ああなるほどと思う「風」が吹いてるのがうっすらわかるようになった。門外漢が見てもそうなんだから、この世界に長い人から見たら、アンフェアな「風」は、もっとたくさん見つけられるんだろう。
 

10年しか続かなかったものは、100年続いたものには勝てない。100年続いたものでも、1000年続いたものには勝てない。
 
 
著者がクリエイティブ業界の人だけに、クリエイティブ、大きく出れば文化の行方みたいなものにも、思考が飛んだ。
 
 
継続は力なりという当たり前の結論を、本当に実践できたらインターネット的なものも続く。インターネット的なものの中で、最も好きなものが「情報の非対称性を無くす」こと。
 
 
インターネット的なものの最たるもの、「送り手と受け手が同じになる」を実現したかったら、送り手は送り出し続ける。与え続けることでしか実現できない。そう思った。
 

 

ほぼ日手帳公式ガイドブック2015 LIFEのBOOK

ほぼ日手帳公式ガイドブック2015 LIFEのBOOK

 

 

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