クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

読み返す

終日雨がパラついてたせいか、気温が上がらず寒い一日だった。短い夏が終わり、またもや衣替えの季節。もうサンダルも履けない。季節の移り変わり、早過ぎる。
遠出する予定をキャンセルして、家で本を読んでた。暇つぶしにKindleにダウンロードしたコミックを読んだり。
 
 
文字を読みながら、暇つぶしに文字を読む。どんだけ文字を読んだら気がすむのか。苦にはならないから続けられる。
 
 
萩尾望都の『スター・レッド』がKindle化されてたので、買ってみた。
中学生か高校生か。とにかく10代だった頃に読んで、雰囲気は好きだったけど、いまいち理解できなかったSF作品。
 
 
大人になった今読み返してみて、「喪失」の哀しさ、やるせなさに貫かれたこの作品を、平和な日本で暮らす10代の感性ではわかるわけないよね、と思った。「少女コミック」に連載されてたんだけど。
 
 
幸せになった登場人物が、誰もいないんだよね。主要登場人物のほとんどが、家族・友人・恋人・故郷の喪失を経験してる。
 
 
主人公にいたっては、途中から精神体になって、物も言わないホログラムとしての登場しかないから。主人公の恋人の末路はさらに悲劇的。主人公がこんなにも報われない読み物って、少女マンガだとかなり珍しい。
 
 
終わりの始まりが、たくさんのモノや人生を壊し、大きな痛みを伴いながらもまた新しい始まりがある。そんな神話的世界を描いてもいて、つまり、少女マンガの枠にはとどまらない、大きなテーマを描いてもいた。
 
 
Wikiさんによると、急に連載が決まり、先を考えずに描き続け、最終回でようやく纏めることができたとか。そんな先入観もあるせいか、作品から漂ってくる切迫感が半端ない。
 
 
70年代~90年代の少女マンガには、萩尾望都竹宮恵子だけでなく、SFを描いたものも意外とあった。
 
 
佐々木淳子の『ダーク・グリーン』や『那由他』、水樹和佳の『イティ・ハーサ』に『樹魔』。『沈黙は星々の渇き』の篠原烏童がいつから描いてたのか知らないけど、彼女もいれとこ。大変キュートな絵柄ながらも、萩岩睦美の『小麦畑の三等星』もSFだった。とりあえず古いところから。
 
 
恋愛要素がないと対象読者にそっぽ向かれるから、とりあえず恋愛は絡めてた。だけど、恋愛が一番の関心事じゃない層向けの読み物が大変充実してた。
 
 
恋愛が大問題になる時期なんて、人生のうちでほんのわずかの間。何かや誰かを大切にすることを学ぶのに、恋愛は有効だけど、色恋抜きでも学べるんだよね。
 
 
主人公二人が全く幸せにはなれない少女マンガだけど、ハッピーエンドで終わらない、収まりが悪い物語だから、ずっと引っ掛かってた。時間がたって、もう一度読み返すことができてラッキー。
 
 
子どもの数がとても多かったから、70年代~90年代のコミックには、対象年齢や対象読者をはるかに凌駕したような、今読み返しても面白い作品がたくさんあるんだよね。
 
お休みなさーい。
 
スター・レッド (小学館文庫)

スター・レッド (小学館文庫)

 

 

スター・レッド (小学館文庫)

スター・レッド (小学館文庫)