クローズドなつもりのオープン・ノート

~生きるヨロコビ、地味に地道に綴ってます~

うたかたエマノン読んだ

長い髪で粗編みのざっくりセーターを着たジーンズが似合う喫煙女性。これらの単語を並べただけで、ピンとくる人にはピンとくる。梶尾真治による、エマノン・シリーズの最新作、『うたかたエマノン』読んだ-。
 
SFだと思ってたんだけど、本の帯では傑作ファンタジーってなってた。SFだけど、サイエンスやテクロノジーとは無縁なので、「すこしふしぎ」な方のSFと思えばいいかも。
 
趣味に走ってるので、興味の無い人は読まない方がいいです。

 

エ マノン・シリーズ、いつもは連作短編集だけど、今回は長編。これだけ長く続いてるシリーズなのに、初の長編っていうのがちょっと意外。これまでも、短編 だったとはいえエマノンの長い長い旅の一場面を切り取って読み進めてきたよーなものだから、今回はたまたまロングショット続いたと思えば、長さもそんなに 気にならなかった。
 
エキゾチックな島を舞台に、実在の人物もからめてのエマノンの今回の旅、感想なんて書けないのよね。(といいつつ書いてる。)エマノンが好き過ぎて、エマノンが出てくるお話し読んでるだけで満足しちゃってるから。読んでる最中が、ただただたまらなく楽しい。そーいうシリーズなんだよね。
地球に生命が誕生して以来の、三十億年の記憶を持つ女性、エマノン。様々な土地を旅する彼女は、めぐり合う人々にも記憶を残していく。
 
エ マノンってあんまり自分が何考えたか語らない人なんだよね。彼女と出逢った人から見たエマノン、あるいはエマノンがいる景色、そんな「記録」を追いかけて いくうちに、それが「記憶」=メモリーとなって積み重なって、いつまでも心に残るような。そんな感じ。
 
 
エマノン、滔々と喋ってたら違和感感じるよーなキャ ラだし、激しい自己主張とも無縁。最初から静か。そのせいか、鮮烈な印象を残して徐々に色褪せるようなこともなく、いつまでも変わらないわねーとか思っちゃう。淡々と、三十億年分の記憶背負うことを受容してる。
 
 
全てを受容するかのようなエマノンの姿に何を見るのか。その辺考えたら結構面白いの。今回は割とわかりやすい形だったけど、過去のシリーズも思い返してみると、「全てを受容するような存在」を前にした人は、見たいものをそこに見るもんなんだなーって思えてくる。
 
 
エマノンは、生命誕生以来の膨大な記録を持ってるわけだけど、それって消えちゃうからだよね。きれいね、いいねと思った場所や景色、大切だった何かも次々と消えて、ずっとは残らないから。
 
 
今回実在する人物が二人登場してて、何でまたこの二人が選ばれたわけ?とか思ってたけど、ちゃんと意味のあることだった。夢か幻かもわからない、現実にあったこととも思えないような出来事を、確かにあったことにするためには、リアル、現実に飛び出すことが最良だった。
 

フィクションあるいはおとぎ話をそのままで終わらせないために、リアル社会に飛び出していった。そーゆーことなのかなーって勝手に思ってる。

うたかたエマノン (文芸書)

お休みなさーい。